現在開催中(7月9日~18日)の毎年恒例レズビアン&ゲイ映画祭に今年も行ってきました。
今年はアジア映画4作を含む17作を上映中。
ただ、アカデミー賞で話題になった「キャロル」 や「リリーのすべて」 を始め、日本映画でも「無伴奏」 など、今年はLGBTを扱った一般公開作品が多いですよね。
レズビアン&ゲイ映画祭の存在意義も今後は問い直されるのかなぁ・・・と思いつつ、ラインナップを見て興味を惹かれた本作に絞って行ってみました。
こちらは2016年製作のフランス映画で、原題は"Théo et Hugo dans le même bateau"、監督は、オリヴィエ・デュカステルとジャック・マルティノーです。
L&G映画祭の会場は、青山のスパイラルホールと、シネマート新宿の2カ所あって、スパイラルホールのほうはイベントにちなんだ出店が出ていたりと何となくお祭りムードが盛り上がってるんですが、今年行ったシネマートのほうはわりと普通に映画館で映画を観る感じ。
友人を誘ったものの当然のごとく断られまくりで、おひとり様だったせいもあって、どうも今年はいまひとつ盛り上がらない気分だったんですがーー
映画が始まってみると、これは一人で大正解だったなと。
セクシーなポスターに惹かれて観に行ったのは否定しませんが、目玉が「18分間の衝撃のセックスシーン」だったとは知りませんでした・・・知ってたクセに? いやいや、ホントに知らなかったんですってば(笑)
(テオ役のGeoffrey Couët(左)とユーゴ役のFrançois Nambot(右)UNIFRANCE
webサイトより)
この作品、2人のゲイ(これがまた2人ともイケメンで!)が午前4時にセックス・クラブで出会ってからの約2時間の出来事を「24」式にリアルタイムで描いています。
アイ・コンタクトだけで言葉を交わすこともなくいきなりセックスへ・・・という展開には場所柄驚かないにしても、リアルタイム展開なだけにセックス・シーンがフルコースというのはなかなか強烈。
おいおい、どうなっちゃうの??と思っているうちに、こうなっちゃうんです↓
は?近藤武を付けなかっただと?!ふざけんな!俺はHIV陽性なんだぜ!!
ひいいいいい・・・
セックス・クラブで理想の相手に巡り会い、天国への階段を駆け上がったーーかと思ったら、直後に地獄へダイブ。
20世紀なら文字通り致命的な事態ーーしかし、21世紀は違います。
正しい知識さえあれば、この段階でも十分に間に合うんですね。
そうなんです、この映画実はエイズ予防キャンペーンの啓蒙映画的な内容。
エイズを引き起こすHIVウイルスは、驚くべき速度で変化して治療薬に耐性を持ち、薬が効かなくなることから、かつては死に直結する不治の病として非常に恐れられていました。
しかし、3種類の薬を同時に服用することでウイルスが薬に耐性を作ることを阻害するという治療法の発見によって、今では早期に対処すれば(体内のウイルスを完全に消滅させるのは難しいようですが)治療が可能になっているようです。
医学の進歩って、すごいですね。
不安を感じたら、すぐに病院へGO!
理想の相手ユーゴに出会えた興奮で思わずコンドウタケシを忘れたテオは、一度は奈落へ突き落とされるものの、ユーゴのアドバイスですぐに病院で応急処置を受け、ユーゴと将来を誓い合うという天国にまで2時間のうちに浮上します。
始発電車の中でひたすら見つめ合う2人・・・もうラブラブ、ラブラブもいいとこです。
朝っぱらからこんなのにはできれば出くわしたくないですね。
ただ、将来を誓う合うと言っても、男女の場合とは全く違う会話が交わされるのが印象的。
ユーゴ「ずっと一緒にいよう」
テオ「どのくらい?」
ユーゴ「20年」
テオ「その後は?別れる?」
ユーゴ「うん。他のみんなと同じようにね」
こんなに盛り上がってる瞬間でも、20年。その時2人は40代でしょうか。
性を謳歌する時代を過ぎたら、別れるべきだ・・・本当にそうなのかどうかは分からないけど、体の魅力が衰えたらそこで一旦おしまい、というのは或る意味潔い気もします。
その先どうするかは、その時になったら考えればいいわけですからね。
そう言えばユーゴはテオに、
「君のジョンソン (彼は「ジョンソン」という言葉は使ってませんが当ブログ的には「ジョンソン」w)はすごく綺麗だ」
と何度も褒めるんですよ。
テオもまんざらではない感じ。
これが男女の場合なら、女性に自分の好きなところを聞かれて男性が
「君のヴァギナは世界一キレイだ。もうずっと見ていたいよ」
なんて目を輝かせて言おうものなら、その場で終了決定ですが・・・
男女間の恋愛では肯定しちゃいけないお約束の下半身恋愛が、男同士では(まあ人によるんでしょうけど)大本命に対してさえアリ!
同性愛というのはもともと社会的要請とは無関係なだけに、建て前に縛られないのは自由で良いナと常々思うところです。
その分社会に守られない(時として攻撃さえ受ける)というデメリットは、勿論あるんですけどね。
テオとユーゴが明け方に入ったシシカバブの店の店員はシリア人。
重要なシーンではないものの、今フランスではやっぱりシリアがキーワードなんだなと感じさせる一幕でした。
その他諸々、ちょっとドキュメンタリータッチな部分もあって、パリの今が感じられたのは新鮮でした。