シネマの万華鏡

ちょっぴり腐女子な映画評。
「ほどよいお下品」「ほどよい悪ノリ」を探し求めて
彷徨っております。
基本的にネタバレしていますのでご注意ください。
なおブログヘッダー作成にあたり「マジョリ画」を利用しています。

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◆'40~’50年代、ハリウッドを吹き荒れた赤狩りの猛威と戦った脚本家の物語◆

 

現在日本で公開中のアメリカ映画・「トランボ」(2015)。

監督はジェイ・ローチ。ブルース・クック著の伝記小説 を映画化した作品なんだそうですね。

 

 

本作の主人公は、ハリウッドの映画脚本家ダルトン・トランボ(1905-1976 ブライアン・クランストン演)。
初期の作品がアカデミー賞脚色賞にノミネートされるなど、その才能は業界でも知られ、一時は「ハリウッドで最もギャラの高い脚本家」とまで言われた人気作家です。
誰よりも順風満帆に見えた脚本家としてのキャリア―――ところが、共産主義に傾倒していたトランボは、東西冷戦下ハリウッドを吹き荒れた赤狩りの猛威の中で、突如業界から締め出される羽目に。
業界の頂点から、一転して廃業の危機に追い込まれます。
しかし、同じ目に遭った人々が廃業して破産や自殺に追い込まれる中で、トランボは挫けることなく、偽名を使って脚本を書き続けます。
それまでとは比べ物にならない安いギャラで休む暇もなく書き続けるうちに、次第に彼の脚本が脚光を浴び始め―――
不屈の反骨精神と映画愛で窮地を乗り越えたトランボと、その家族の物語。
トランボの妻クレオにダイアン・レイン。
 
◆東西冷戦や赤狩りの知識は不要◆
 
これはもう、実在のトランボの人生そのもののドラマ性だけで十分面白い!
逆に、その他の要素はあまり印象に残らない気が・・・それもこれも、「事実は小説より奇なり」という諺を地で行くようなトランボの波乱万丈な人生が強烈すぎるせいでしょうか。
少しとぼけたトランボの人柄も魅力的です。
 
あのレーガン元大統領の話題が出てくるのも興味深いですね。
たまたま録画していた番組「NHKスペシャル新映像の世紀第4集「世界は秘密と嘘に覆われた」」(こちらはNHKオンデマンドで視聴できるようです)にも、ほんのわずかですが当時のハリウッドでの赤狩りの模様や、「驚くほど赤狩りに協力的」な「売れない俳優」レーガンが登場します。
このドキュメンタリー番組によれば、当時レーガンはFBIのスパイだったとのこと。
レーガンに関しては、大統領時代に米ソ冷戦に終止符を打った功績が大きく評価されていますが、世間に注目されるきっかけになったのも、冷戦絡みだったんですね。
 
ちなみに「ヘイル・シーザー!」も「トランボ~」と同じくハリウッドの赤狩りを扱った作品で、この2作の共通点については映画評論家の町山智浩氏がこちら↓で語っておられますので、ご参考までに。
 
ただ―――
いろいろ書いておいて何なんですが、この映画、実は東西冷戦や赤狩りに関する知識が全くなくても、問題なく理解できる内容なんですよね。
さらに言えば、当時のハリウッドに関する予備知識も全然なくてOK。まあ、知識があればその分面白くはなる・・・という程度です。
 
本作では、共産主義思想そのものやソ連の脅威には殆ど触れていません。
共産主義とは何か、当時の東西冷戦下でアメリカがどれだけソ連の脅威に戦々恐々としていたかはともかくとして、共産主義思想を支持しているという思想的な理由だけでトランボらを業界から放逐する、という行為が不当な人権侵害だということは紛れもない事実
本作はそこに焦点を絞り込み、思想で人を弾圧しようとする体制側と、弾圧に屈しないトランボらの闘いを描いていきます。
つまりこれは、体制VS反体制の物語なんです。
この単純化された構図が、本作の分かりやすさ、面白さの秘密だという気がします。
この構図だけで物語が読め、予備知識は殆どいらないわけです。
 
◆「ヘイル、シーザー!」にもいた「凄い帽子の女」が登場◆
 
(絶大な影響力を持つコラムニストであるヘッダ・ホッパー(ヘレン・ミレン)とトランボ(ブライアン・クランストン 個性的な帽子がヘッダのトレードマーク。)
 
上に挙げた町山氏のコラムにもありますが、「ヘイル・シーザー!」でティルダ・スウィントンが演じた執拗な女記者(※1)のモデルでもあるらしいヘッダ・ホッパー(1890-1966)が本作でも登場。
こちらではヘレン・ミレンが演じています。
 
購読者の多い新聞にハリウッド情報のコラムを持っていたことで映画業界に絶大な影響力を持っていたヘッダ・ホッパーは、共産主義者弾圧の急先鋒。
「ヘイル・シーザー!」のティルダと同じく超個性的なお帽子がまたいかにも高慢そう・・・あのヘンな帽子、実在のヘッダ・ホッパーのトレードマークだったんですね。
全体的にフワフワッとしたコメディタッチで政治には深入りしない「ヘイル・シーザー」と違って、体制VS反体制の一騎打ちものだけに、体制側の太鼓持ちとして描かれたヘッダ・ホッパーはとことん嫌な女! 
女優としては落ち目になっていた彼女がハリウッドの芸能ニュースでのし上がり、かつての同業者にメディアの力を使って嫌がらせ・・・というニュアンスも加えられていて、それがまた彼女の嫌な女ぶりに一層磨きをかけています。
 
とは言え、本作で最もキャラが立っている彼女の登場シーンは、ムカつくけれどどこか滑稽で、クセになる味わい。
好きにはなれないけれど、物語に不可欠な存在な気がするキーパーソンです。
 
◆「本名でもヒット、偽名でもヒット」のトランボの実力◆
 
「ローマの休日」(1953年)の脚本のゴーストライターがトランボだったというのは本作を観て初めて知りました。
あの「スパルタカス」(1960年)もトランボの作品だったとは・・・全く意識していませんでしたね。
 
「スパルタカス」の監督キューブリックも、作中で話題に上ります。
実はキューブリックはこの脚本を気に入ってなかったらしい(※2)・・・という話は当然本作には出てきませんが。
そこはそもそも本作の監督自体が前任者が降りたことによる代役だったという経緯も絡んでるんでしょうかねえ。
 
何にせよ、激しい逆風にめげず脚本を書き続けた結果、偽名で書いた「ローマの休日」・「黒い牡牛」(1956)でアカデミー賞原案賞を受賞したほか、多数の映画賞受賞作を手掛けているんですから、誰もトランボの実力に文句を付けられる人はいないでしょう。
逆風によって図らずも、並はずれた実力を証明したようなものですね。
 
ただ、映画会社にとっては赤狩りのお蔭でトランボのような一流の脚本家に格安で仕事を依頼することができた(偽名なので)わけで、ていよく使われてしまったのは事実。
金にならないから当然長時間労働に・・・そこが観ていて口惜しかった。
トランボ本人の辛さは想像に余りあります。
 
◆典型的ハリウッド映画の構成◆
 
ダルトン・トランボの決してあきらめない不屈の闘志に心を打たれ、家族の絆にもほろりとさせられて、満足なキモチで劇場を出たのはたしか。
でも・・・・・・なんでしょう? 映画としてはちょっと物足りないような後味も、映画が終わった瞬間からつきまとっているんですよね。
上にも書いたとおりこの映画、非常に単純化されていて、不当な体制側VS正論の反体制側という二元論で出来あがっていて、時代背景の部分に奥行きが感じられないせいもあるのかもしれません。
メリハリはバッチリ、そして逆転のハッピーエンド・・・ああ、昔ながらの安定のハリウッド映画だなと。
 
名脚本家トランボなら、この物語、どう書いたんでしょうか。
 
 
 
 
※1 「ヘイル・シーザー」でティルダが演じていた記者は双子でしたが、ヘッダ・ホッパーは双子の姉妹ではないようです。当時ハリウッドの業界ニュースに関して絶大な影響力を持つコラムニストがヘッダ・ホッパーともう一人ルエラ・パーソンズの2人いたことが、双子というアイデアにつながったのかもしれません。
※2 wikipedia「スパルタカス」の項
 
(画像はIMDbに掲載されているものです。)
 
 
 
 
 
 

 

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