このアルバムを聴くのは、一体何年ぶりだろう。
果たして、まともにレビューが出来るのか?
そんな不安がよぎる中、オープニングSE"WORLD ANTHEM"が始まる。
曲の最後にメンバー紹介のコールがかかる。
YOSHIKIがスティックでXを描き、"Silent Jealousy"のカウントを始める。
そう、1992年1月7日、東京ドーム。TAIJIこと沢田泰司のX最後のステージを収録したライヴアルバムだ。
海外進出前最後のライヴだったのか、「祝 海外へいってらっしゃい」という応援メッセージが書かれた横断幕もかかっていた。
かつてVHSで発売された映像から音源を抜き出して再編集しただけの代物で、音質ははっきり言って悪いが、Xにとって初のライヴアルバムである。
かつてはMCを覚えるほど聴きまくったアルバムだが、その全てが今の俺にとっては悲しみの音に聞こえてしまう。
東京ドーム3Days公演の最終日で、メンバーの疲労もかなりのものだと思われる。
「いよいよ、最終日を迎えたぜオイ!今日Xは、なりふりかまわず行くからなオイ!」
TOSHIのMCも自分に言い聞かせているように聞こえる。泰司の最終日に疲れを言い訳に気の抜けたパフォーマンスはできない、と。
"Sadistic Desire"で泰司はピック弾きメインながら随所にスラップを導入している。コイン隠しのトリックを応用したピック収納法を既に実践していたのだろうか。
メンバーを気遣うMC(CDではカット)の後、"Desperate Angel"へ。軽快なアメリカン・ナンバーもなぜか物悲しく聴こえてしまう。
HIDEの百円ライターを使ったスライドギターが印象的だ。流れるように"Standing Sex"が始まる。レコーディングではミュージックマンのスティングレイを使ったドンシャリサウンドが耳に残るが、ライヴはクリミナルだ。図太いベースが耳を打つ。
"WEEK END"は、もちろんシングルバージョンをベースにしている。泰司はかつての柴田直人(ANTHEM)のように動くベースラインで曲を引き立てる。
そういえばこの年にアンセムも解散したんだとふと思う。PVでは射殺された泰司が、あんな死に方をするなんて誰が想像しただろうか?
クラシックの曲をバックにしたYOSHIKIのドラムソロ。はっきりいって魅せる要素だけならコージー・パウエルの"1812"やトミー・リーにだって引けを取りはしまい。
これはCDで音だけ聴いても感動は薄い。やはり映像有ってナンボのドラムソロだ。YOSHIKIはテクニックが売りのドラマーではないから尚更に。
HIDE演じる狂人が主役のソロパフォーマンス"HIDEの部屋"。何回見ても理解不能だった。
この人は幅が広すぎる、そしてこのパフォーマンスは違う世界に届いているのではないか。
そしてCDでは一枚目最後の"Voiceless Screaming"。もはや涙なしには聴けない。
そもそもこの曲は声が出なくなったTOSHIの苦しみとそれを乗り越え、立ち上がっていく意思を歌った曲と俺は解釈しているのだが、泰司へ送る鎮魂歌になってしまった。
ビデオの一巻を締めくくるYOSHIKIのピアノソロ~"Es Durのピアノ線"~"UNFINISHED"のメドレー。
"ALIVE"風のフレーズから入り、誰もが知っているバレエ曲『白鳥の湖』をモチーフとしたアドリブ演奏へ突入する。
"Es Dur~"は、スタジオ版以上に激しくピアノを叩きつける。ピアノとストリングスのみの伴奏による"UNFINISHED"も様になるなあと思いつつ、「静かなX」は幕を下ろす。
そういえばビデオは少女がXのアルバムを見ている体をなしていたんだっけ。アルバムを聴いていると色んな事を思い出す。時間を経るごとに髪が赤く染まってゆくTOSHI、ウェーブをする観客、扇風機をドラに投げつけるYOSHIKI。オープニングではサングラスをかけていた泰司……
「今日はこの、歴史的な瞬間を、楽しく、過激に、分かち合っていこうぜ」
「まさに今日は、瞬間の美学で行けよ」TOSHIのMCからはこの日が特別な日である事が伝わって来る。"CELEBRATION"で明るく行こうと思っても、まだそんな気になれないのか。
「てめえら、そろそろ、X流の、本気をみしてくれよオイ! わかってんなら何度も言わせんな!悔い残すなよオイ!」TOSHIが煽って本編最後の曲"オルガスム"が始まる。
これもスタジオ版を超えるハイテンポと狂気が感じられる。
途中ドラムが極単純な打ち込みに変わり、YOSHIKIがステージで大暴れ。3分に満たない曲が20分近くになる理由だ。
途中、TOSHIの煽りの中に
「てめえら、今日を何の日だと思ってるんだ!後がねえんだよオイ!」というのがある。
このとき、誰より後がなかったのは言うまでもなく泰司だ。(観客が知る由もない事だが)
これも、観客にというよりは自分達に言い聞かせているのだろうか。
この曲の最後にドラム破壊(もちろんメインのクリスタルドラムではない)。
Xを象徴する破滅的なパフォーマンスだ。
アンコールは"紅"だ。まるでここから始まったかのような勢いはさすがだ。
もう誰の手にも届かない所へ行ってしまった人(歌詞の意味するところは恐らくYOSHIKIの父親だろう)を慰めることなどできないのだろうが。
今後の展開を語る際、「俺達とお前達は運命共同体ってことだ」と語るTOSHIだが、そこに泰司は含まれていない。「やれよ、JOKER!」と、"JOKER"。やっと心が晴れてきた。明るい気分で曲を聴ける。
「所詮ノラ犬」か、それが彼の生き方だったのかな。
TOSHIが「裸の付き合いしようぜ」と言い、上着を脱ぎ捨てる。
これも"X"の前フリとしておなじみだ。実際に脱いだのはカメラの人だが。
TOSHIに肩を抱かれつつ泰司の叫ぶ"X"をもう聞く事が出来ない……
「ON BASS! ターイージー! ターイージー!」
大事なことだから2度言ったんですね、わかります。
泰司コールが聞こえる中最後の最後を締めくくるのはおなじみの"ENDLESS RAIN"。
泰司のベースは指弾きのせいか最も柔らかい音となっている。
ピック弾きの時はリアピックアップ付近で鳴らしているのに対し、指で弾くときは指板に親指を置いて弾いていたためだろう。
ビデオでは少女が1巻のアルバムに鍵をかけ、2巻を取り出し、To Be Contenuedのテロップで締められる。
泰司の人生を象徴するようなタイトル、これだけで泣かずにはいられない。
忘れない、このバンドに松本秀人と沢田泰司がいたという事を。
伝えたい、Xは素晴らしいバンドであったという事を。
クレジットを見ると、サポートキーボードとして後にD.T.Rに参加した小森茂生の名前がある。
ストリングスなどの楽曲を彩る音は彼の手で入れられていた事がわかる。
当日には"ROSE OF PAIN"と"Say Anything"を演奏しているはずだが、収録時間の都合かVHS、CD共に(CDはVHS版を再編集したものだから当然だが)カットされている。
ソニーさん、この三日間の完全版DVD(ブルーレイも可)を出す予定はありませんか?
VISUAL SHOCK Vol.4 破滅に向かって 1992.1.7 TOKYO DOME .../X
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fecx.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F21EF9AXVTJL._SL160_.jpg)
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破滅に向かって’92.1.7 TOKYO DOME LIVE/X
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果たして、まともにレビューが出来るのか?
そんな不安がよぎる中、オープニングSE"WORLD ANTHEM"が始まる。
曲の最後にメンバー紹介のコールがかかる。
"Here is TOSHI TAIJI PATA HIDE... AND YOSHIKI!
All right motherfxxkers, are you ready?
We are X!!"
All right motherfxxkers, are you ready?
We are X!!"
YOSHIKIがスティックでXを描き、"Silent Jealousy"のカウントを始める。
そう、1992年1月7日、東京ドーム。TAIJIこと沢田泰司のX最後のステージを収録したライヴアルバムだ。
海外進出前最後のライヴだったのか、「祝 海外へいってらっしゃい」という応援メッセージが書かれた横断幕もかかっていた。
かつてVHSで発売された映像から音源を抜き出して再編集しただけの代物で、音質ははっきり言って悪いが、Xにとって初のライヴアルバムである。
かつてはMCを覚えるほど聴きまくったアルバムだが、その全てが今の俺にとっては悲しみの音に聞こえてしまう。
東京ドーム3Days公演の最終日で、メンバーの疲労もかなりのものだと思われる。
「いよいよ、最終日を迎えたぜオイ!今日Xは、なりふりかまわず行くからなオイ!」
TOSHIのMCも自分に言い聞かせているように聞こえる。泰司の最終日に疲れを言い訳に気の抜けたパフォーマンスはできない、と。
"Sadistic Desire"で泰司はピック弾きメインながら随所にスラップを導入している。コイン隠しのトリックを応用したピック収納法を既に実践していたのだろうか。
メンバーを気遣うMC(CDではカット)の後、"Desperate Angel"へ。軽快なアメリカン・ナンバーもなぜか物悲しく聴こえてしまう。
HIDEの百円ライターを使ったスライドギターが印象的だ。流れるように"Standing Sex"が始まる。レコーディングではミュージックマンのスティングレイを使ったドンシャリサウンドが耳に残るが、ライヴはクリミナルだ。図太いベースが耳を打つ。
"WEEK END"は、もちろんシングルバージョンをベースにしている。泰司はかつての柴田直人(ANTHEM)のように動くベースラインで曲を引き立てる。
そういえばこの年にアンセムも解散したんだとふと思う。PVでは射殺された泰司が、あんな死に方をするなんて誰が想像しただろうか?
クラシックの曲をバックにしたYOSHIKIのドラムソロ。はっきりいって魅せる要素だけならコージー・パウエルの"1812"やトミー・リーにだって引けを取りはしまい。
これはCDで音だけ聴いても感動は薄い。やはり映像有ってナンボのドラムソロだ。YOSHIKIはテクニックが売りのドラマーではないから尚更に。
HIDE演じる狂人が主役のソロパフォーマンス"HIDEの部屋"。何回見ても理解不能だった。
この人は幅が広すぎる、そしてこのパフォーマンスは違う世界に届いているのではないか。
そしてCDでは一枚目最後の"Voiceless Screaming"。もはや涙なしには聴けない。
そもそもこの曲は声が出なくなったTOSHIの苦しみとそれを乗り越え、立ち上がっていく意思を歌った曲と俺は解釈しているのだが、泰司へ送る鎮魂歌になってしまった。
ビデオの一巻を締めくくるYOSHIKIのピアノソロ~"Es Durのピアノ線"~"UNFINISHED"のメドレー。
"ALIVE"風のフレーズから入り、誰もが知っているバレエ曲『白鳥の湖』をモチーフとしたアドリブ演奏へ突入する。
"Es Dur~"は、スタジオ版以上に激しくピアノを叩きつける。ピアノとストリングスのみの伴奏による"UNFINISHED"も様になるなあと思いつつ、「静かなX」は幕を下ろす。
そういえばビデオは少女がXのアルバムを見ている体をなしていたんだっけ。アルバムを聴いていると色んな事を思い出す。時間を経るごとに髪が赤く染まってゆくTOSHI、ウェーブをする観客、扇風機をドラに投げつけるYOSHIKI。オープニングではサングラスをかけていた泰司……
「今日はこの、歴史的な瞬間を、楽しく、過激に、分かち合っていこうぜ」
「まさに今日は、瞬間の美学で行けよ」TOSHIのMCからはこの日が特別な日である事が伝わって来る。"CELEBRATION"で明るく行こうと思っても、まだそんな気になれないのか。
「てめえら、そろそろ、X流の、本気をみしてくれよオイ! わかってんなら何度も言わせんな!悔い残すなよオイ!」TOSHIが煽って本編最後の曲"オルガスム"が始まる。
これもスタジオ版を超えるハイテンポと狂気が感じられる。
途中ドラムが極単純な打ち込みに変わり、YOSHIKIがステージで大暴れ。3分に満たない曲が20分近くになる理由だ。
途中、TOSHIの煽りの中に
「てめえら、今日を何の日だと思ってるんだ!後がねえんだよオイ!」というのがある。
このとき、誰より後がなかったのは言うまでもなく泰司だ。(観客が知る由もない事だが)
これも、観客にというよりは自分達に言い聞かせているのだろうか。
この曲の最後にドラム破壊(もちろんメインのクリスタルドラムではない)。
Xを象徴する破滅的なパフォーマンスだ。
アンコールは"紅"だ。まるでここから始まったかのような勢いはさすがだ。
もう誰の手にも届かない所へ行ってしまった人(歌詞の意味するところは恐らくYOSHIKIの父親だろう)を慰めることなどできないのだろうが。
今後の展開を語る際、「俺達とお前達は運命共同体ってことだ」と語るTOSHIだが、そこに泰司は含まれていない。「やれよ、JOKER!」と、"JOKER"。やっと心が晴れてきた。明るい気分で曲を聴ける。
「所詮ノラ犬」か、それが彼の生き方だったのかな。
TOSHIが「裸の付き合いしようぜ」と言い、上着を脱ぎ捨てる。
これも"X"の前フリとしておなじみだ。実際に脱いだのはカメラの人だが。
TOSHIに肩を抱かれつつ泰司の叫ぶ"X"をもう聞く事が出来ない……
「ON BASS! ターイージー! ターイージー!」
大事なことだから2度言ったんですね、わかります。
泰司コールが聞こえる中最後の最後を締めくくるのはおなじみの"ENDLESS RAIN"。
泰司のベースは指弾きのせいか最も柔らかい音となっている。
ピック弾きの時はリアピックアップ付近で鳴らしているのに対し、指で弾くときは指板に親指を置いて弾いていたためだろう。
ビデオでは少女が1巻のアルバムに鍵をかけ、2巻を取り出し、To Be Contenuedのテロップで締められる。
泰司の人生を象徴するようなタイトル、これだけで泣かずにはいられない。
忘れない、このバンドに松本秀人と沢田泰司がいたという事を。
伝えたい、Xは素晴らしいバンドであったという事を。
クレジットを見ると、サポートキーボードとして後にD.T.Rに参加した小森茂生の名前がある。
ストリングスなどの楽曲を彩る音は彼の手で入れられていた事がわかる。
当日には"ROSE OF PAIN"と"Say Anything"を演奏しているはずだが、収録時間の都合かVHS、CD共に(CDはVHS版を再編集したものだから当然だが)カットされている。
ソニーさん、この三日間の完全版DVD(ブルーレイも可)を出す予定はありませんか?
VISUAL SHOCK Vol.4 破滅に向かって 1992.1.7 TOKYO DOME .../X
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