やっと気持ちが落ち着いて来て、
このアルバムのレビューに取り掛かる事が出来るようになりました。
"ONCE AND FOR ALL"も考えましたが、こちらをレビューします。

以前にも書いたとおり、
Xが最高のメンバーを集結させて制作に取り掛かったアルバム。
破滅へと向かっていくような地響きを感じさせる"Dear Loser"から始まり、
YOSHIKIらしい高速曲"VANISHING LOVE"へ。

音は荒々しいの一言。費用の関係でレコーディングを延長出来ないため、
YOSHIKIも二日間相当気合を入れて叩いていたという。

そのような状況ゆえにサウンドプロダクションも稚拙ではあるが、
この破壊力はそんなギリギリの状況だったからこそ出せたのだろうと思っている。

このアルバムから後に"SADISTIC DESIRE"がリメイクされているが、
まとまった音には仕上がっているもののこのアルバム程の勢いと破壊力は感じられない。YOSHIKIの鬼気迫る必死さが感じられないのがその理由ではないかと感じている。
そういう意味では、リーダーであるとともにドラマーであるYOSHIKIが、
Xというバンドのエンジンであった事を強く印象付けている。

また、当時はLPレコードでの発売だったため、B面の一曲目に
A面の流れを切るかのごとくインスト曲を持ってきているのも印象的である。
攻撃的なA面に対し、B面には代表曲となった"紅"やバラードの"ALIVE"、
"UN-FINISHED..."を収録しており、叙情的な面を打ち出している。
(それでも出だしは"GIVE ME THE PRESURE"~"I'LL KILL YOU"という
攻撃的な流れだが)
最後に"VANISH"の言葉と共に消えていくような終わり方が、はかなさを感じさせる。

勢いに任せて突っ走りながらも、メロディを大事にする姿勢は既に確立されていたX。
メジャーへ行く事に抵抗の多いファンも多い時代で、このアルバムは充分に売れた。
それでもメジャーデビューを選んだ理由はソニーの津田氏との出会いも大きいが、
ロッキンf通算300号のインタビューでYOSHIKIが
「(流通に手間がかかり過ぎて)音楽やってるんだかパッケージングの仕事を
しているんだかわからなくなってきてしまって」と語っている辺りに、
自主流通の限界を感じてのメジャーデビューという面を覗かせている。



VANISHING VISION 2000年 (型番XXC-1001)/X

¥3,059
Amazon.co.jp