こんにちは。杉浦 健(ケン@さんだ市民)です。

昨年、春学期の授業で、「International Professional Conversation C」という授業を受講しました。


これは、いわゆる「英語」の授業なんですが、担当の八木康夫教授は昨年春まで、立命館大の建築計画研究室、通称「八木研」のボス。つまり、いわゆる「建築」系のヒト。


テキストは英語だったけど、日本の文化遺産、日本建築のアーキテクチャについて教授いただきました。

その甲斐あってか、まちづくり政策の一番最初にすべきことは「設計デザイン」なんだということを学びました。
しかも下手の横好き、デザインに興味を持つと、やたらと本を買いあさる。特に日本建築の、柱と梁で支えられた工学的なバランスやそこに見え隠れするギミックのすばらしさを目の当たりにし、でっかい柱とでっかい梁で立つ大屋根の住宅のデザインに魅力を感じたわけです。
当たり前の話ですが、住宅とは、ただ単にそこに立っているものではないんだということを、あらためて思い知らされました。


構造物に大切なのは、縦と横のバランスです。


そして、建築っておもしろい。



◆コミュニティとアソシエーション◆

後期の授業に「都市政策課題研究(RP=Research Project)」というのがあって、修士論文の先行研究をレポートで提出するというのが最後の課題になりました。


僕の修論のテーマは、まだ仮りのタイトルではありますが、「地域コミュニティ活動における『共働』のあり方に関する研究」というもので、サブタイトルに「兵庫県三田市・学園小学校区まちづくり連絡会の取り組みを事例として」というのを付けています。


これは、指導教員の長谷川教授によると、学術研究というのではなく、調査・取材に基づく政策提言の部類になるんだそうです。
成功事例を分析しその効果を見つけられたら、形は違っても果たしている役割は同じなので、帰納的に汎用モデルを導き出す、というものです。


その、先行研究として、RPのレポートでは、「まちづくり」の基礎的な単位組織である「地縁組織」、その代表である「自治会」についてまとめることにしました。


タイトルは「地域コミュニティ活動における自治会のあり方に関する報告」です。


量の規定はなかったのですが、結局、引用も含めてまとめていくと、2万字近い量(40字×40行が12ページ半)になってしまいました。


その多くは、愛知江南短期大学学長で僕もその論説ではお世話になっているコミュニティ政策学会会長の中田実先生の著作からによるものなのですが、中田先生の自治会推進論を肯定ばかりをするのではなく、たとえば自治会と相対する位置にあるNPO(という名の、いわゆる地域まちおこしグループ)が、なぜ対峙関係になるのかも同時に分析しました。


以下が、後半、まとめに入る直前の一節です。


「『地域の共同管理の機能を総合的に担うためにある自治会を、個別機能(目的)の遂行を目指すほかの地域所組織と同列視することは、自治会を否定する議論である(中田実)』という認識が、はたして正しいものかどうかの検証は必要である。たとえばNPOが地域内の特定の専門的問題処理主体として活動するのなら、それが地域共同管理の一部を担っているともいえる。NPOは元来専門家集団であり、その会員は有志に限られるため、機能的にも自治会に取って代わるものではないが、自治会自体が非営利活動主体であるのなら、NPO的な自治会や自治会的なNPOもあってしかるべきである。しかし、部分的な機能を担うNPOだけでは地域共同管理の機能を総合的に果たすことはできず、故に自治会の代替はできない。もちろん地域ぐるみでNPOの認証を受ける事例も生まれているが、それは福祉や緑化といった自治会の機能の一部を事業化するための手段としてであることが多い。
NPOがまちづくりといった総合的な地域課題に取り組むとすれば、それはNPOの機能が自治会に近づくことになる。それを良しとするのか、驚異とするのかによって、NPOの存在意義が大きく変わってくるし、自治会のあり方についても同様に変わってくる。
そして多くの場合、マッキーヴァーが定義するような、社会的存在の共同生活の焦点(社会生活)=コミュニティである自治会(統合的地域組織)と、共同の関心または諸関心の追求のために明確に設立された社会生活の組織体=アソシエーションであるNPOを代表する専門集団(部分的地域組織)とは、共同の名の下に同一地域の中で交わることがなく、特に自治会にとってはその機能を脅かす驚異としてNPOをとらえられた。
その理由は、前述の、自治会の公共性の弊害である。行政末端としての機能が色濃く出された公共的団体という存在意義を表面的には否定しながら、内面的にはさまざまな特権や公共サービスを享受し、『市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な(特定非営利活動促進法第1条)』組織たるNPOとのパートナーシップを遠ざけることになったのは、甚だ残念といわざるを得ない。なぜならば、NPO(を含むそのほかのアソシエーション)の専門性こそ、自治会のさまざまな機能を補完できるものだからである。」


まさに、この部分。


簡単なことなのだけど、これを、創意と工夫で改善できれば、地縁組織とNPOは、いや、地域のさまざまな活動主体は、それぞれが主体としてのアイデンティティをしっかり維持しながら、それぞれの機能を生かしたまちづくりに従事することができるのですが……。


修論本体では、これを一つの問題提議として、ここから脱却するための多くの「創意と工夫」を紹介し、帰納的に地域のコミュニティのあるべきかたちを論じていくことになる……予定です。


(続く)