”CIDER ROAD"感想 | アストロノーツはプラトニックな恋をする

アストロノーツはプラトニックな恋をする

絵と、歌と、ときどきライブ

2月6日にリリースされた、UNISON SQUARE GARDENの4thアルバム「CIDER ROAD」、

発売から1か月以上たってもしかしたら今更感があるのかもしれないけど

ぽそぽそと感想とかいろいろ書いていこうと思います…。


なぜこんなことを書こうとしたのかというとそれくらい個人的にヒットしたアルバムだったからです。

そしてしばらくたってから書こうとしたのも、すぐに書くと感情が先走って

ファン感情丸出しになりかねないということがあったからです。(笑)


正直リリース前は、私の中で3rdアルバム「Populus Populus」がユニゾンの最高潮、これを越えられるのかな?

と、あまり期待をしていませんでした。

しかし蓋を開けてみればびっくり、聴けば聴くほど世界観に引き込まれていき、いろいろなものが

見えてくるのです。


まず「to the CIDER ROAD」、アルバムの名前がタイトルに含まれていたので、

短時間のインストかなと思っていたのですがちゃんと歌も入ってるではないですか!

イントロが、サイダーの炭酸を連想させるフェードイン。

っていうのをアマゾンかなんかのレビューで見てなるほどと思いました。(いきなり自分の発見じゃない感想)

キー、テンポともに高めで疾走感があり、いきなり聴き手を引き付ける、これからどんな曲たちが

待っているのかしらとわくわくさせる一曲だと思います。


そして「ため息shooting the moon」は、一曲目から間髪を容れず鋭いギターから始まります。

斎藤さん本人もおっしゃっていたように、歌・ギターともに忙しそう(笑)

ハイテンポで早口を駆使し、歌パートが終わったと思いきやギターソロ、みたいな。

「満月をかけさせたため息 朝を待つ」の後にくるギターとベースのソロがかっこよすぎ!

初めて聴いたときは、「つーかむしろno one no one know that way」と

「it's still alive shiny shiny energy」のフレーズに心を掴まれました。

思わずニヤリとしてしまいましたよ…

あと「Hey 六拍子は三で割ったら二拍子」という歌詞が個人的にすごく好きです。

こんな言葉も歌にしてしまう田淵さんのセンス、すごいなぁ。

疾走感、スピード感あふれるこの曲、なんかのアニメのOPとかでありそうだなぁ~

アクション系とかならないかな?(笑)


三曲目はタイアップ作品の「リニアブルーを聴きながら」。

曲順発表が来るまでは、これは前回のオリオンみたいな感じで、

アルバムに入ると後半のポジションに来ると思ったのですが序盤に放り込んできましたね…


一曲目からリニアブルーまでスピードを緩めることなく駆け抜けてきたけど4曲目の

「like coffeeのおまじない」でいったん緩やかになる、というか雰囲気がパッと変わる。

もう、この曲はひたすらカワイイ。ギターなどバンドサウンドではなくブラスサウンド主体なことにより

一層メルヘンさが増して、ユニゾンの曲の幅が広がった一曲だと思います。

この曲は物語になってるのかな?

でも考えれば考えるほどいろいろと矛盾が生まれてきていまだにスッキリ解読できないんですけど…

「君」は少年ラビットなのか、「ボーイ・ミーツ・ガール」って歌詞や、「恋が始まるかも」から

女の子のことなのか、というかそもそもこの曲の主人公は男の子なのか(一人称が僕だから男の子かと思っていたけど)。

でも最初に出てくる「きっと君は信じないかもしれないけど」だったら少年ラビットじゃないよなぁ。

だったら後半の「僕の世界に君が現れたこと」の君は誰なんだろうか。

この「君」は全部同じ人を指しているわけじゃないのかも。うーん。難しい。でもこうやって考えるの楽しい。

あと気になったのがタイトルの「コーヒー」。コーヒーって紅茶ほど澄んだ色じゃないし、

そもそも苦い。なんでそんなコーヒーをチョイスしたのか…

「オリオンをなぞる」のように、ただ単に響きがいいからかな?

でもミルクシロップならコーヒーか。

ところでミルクシロップって響きかわいいね。


ここからどんどん疾走感という点では減速していき、聴かせる感じに。

田淵さんが魂を削って書いたとおっしゃっていた「お人好しカメレオン」。

カメレオン=周りの色に体に色を変え、背景に溶け込むトカゲの一種、

ということから、簡単に考えて、カメレオンのように周りに合わせることなんてないんだ、

自分を見失うな、自分の思っていることや決めたことは決して譲るなというメッセージかな?

でもそうやって周りに合わせようとしているのを真っ向から否定するような感じではないと

思ったのが「お人好し」とつけているところ。

そんなに気を使うことなんてないんだよ?、と優しく問いかけているような感じがしました。

「さわれない歌」の時点では「もしも僕が君の前まで来て 何かできることがあるとしても

この手は差し出さない」と、まだ手は握っていない。

でもこの曲では「最低でも半数は見放していく僕の手を掴むのか 別にかまわないけど」

「ならば今その手を離さないで」「離さないなら遊びに行こうよ」と、ちょっと変わったように見える。

一見聴き手との距離を縮めたのかと思ったけど、「さわれない歌」と「お人好しカメレオン」では、

その手を出すのがどっちかって考えると、結局は同じことを言ってるんじゃないかと思えてきます。

前者からは「こっち(ユニゾン側)からは手を差し出さない」と言っているけど

後者の手はこちらの受信側、つまり手の主(?)はそれぞれ違っているのでは?

こちらから手を指し出すことはしないけど掴んでもいいよみたいな?

とにかく、一見距離が近づいたと思ったけど実は同じことをうたっている気がしました。


そして「光のどけき春の日に」。

この曲は前回のツアーでお披露目されたもの。

イントロの落ち着いたドラムとギターが、春の暖かい空気を連想させる。

ライブで聴いたときは「くだらなくてもいいから話をしよう できるだけ太陽が沈むまで」の

部分、音域たっけええええとかしか印象がなかったのですが(ごめんなさい)

今までにないような雰囲気の歌詞ですね。

「まだ王様は気づいていない 今のうちだよ 宝物は隠さなくちゃ」と

「大人にはナイショだよ あの秘密基地は」

のフレーズがすごく好き。

こういう歌詞で、田淵さんの感性ってまだ若いところがあるなぁって思います。

「あてずっぽうのding dong」の「ding dong」って、「等身大の地球」にも出てくるよね?

なにか関係してるのかなあ。


あと「くだらなくてもいいから 話をしよう できるだけ太陽が沈むまで」
のところ。
語り合うのは「夜が明けるまで」じゃなくて「太陽が沈むまで」って表現があうのはタイトルにきちんとなぞらえてあるからかなと思います。

「クロスハート1号線(advantage in a long time)」は、すごく恋愛色の濃い歌ですね。

最初聴いたときはびっくりしましたよ(笑)

田淵さんいわく、恋愛ソングは基本的に俯瞰して書く、実体験などではない、らしいですが、

ここにきて最近のユニゾンの歌詞は明るくなったなぁと実感。

でもやはりよく聞くラブソングとか歌詞が一味違う。

たぶんサビの「君が僕を好きなこと知っているはずなのに」の、「僕」と「君」が逆だったら、

私はこの歌に対してアレルギー反応を要しただろう…

「僕は君になりたい」での「募る思いがあるのなら 僕あてに手紙でも書きなよ」と

どこか同じにおいを感じさせる歌詞。

「シュプレヒコール~世界が終わる前に~」での「有象無象が掃いて捨てられる僕らの生活には

知った風なラブソングが街にあふれる ああうるさいな気に入らないんだよ」…などと

言っていたからにはやはりちょっと違ったラブソングを投げてくるユニゾンを体感。


そして緩やかに流れてきたところ、爆弾を放り投げてきたように勢いよく始まる

「セレナーデが止まらない」。

この曲も、クリスマスあたりのクアトロで初めて聴いたのですが、

とにかくかっこいい!

でもかっこいいだけじゃなく、どこか哀愁漂う感じがまたたまらないです。

「出ない、行かない、君をさらわない 時は止まんない」と、

「疑問、質問、ないのです ならもう、幕を引いても?」のフレーズにまたもノックアウト。

あと「空気に手を伸ばすなんてピエロ」のベースラインがお気に入りです。

鈴木さんいわく「お気に入りのアガる曲。」

ふむ、まったくの共感である…。

「話題を知った風なラブソングなんかで 何十億分の一なんて当たるわけないのに」

またもやここでもシュプレヒコールを思い出させる歌詞が。

セレナーデとは、夕べに、恋人の窓下で歌い奏でられる音楽。(byウィキペディア)

まぁ、ラブソングってことですかね?

相手に伝えたい、誰にも聞こえないように君だけに伝えたい、

けど結局は孤独で聞こえない、止まらない。孤独なりに想いを伝えようとしているように感じました。


続いて「流星のスコール」はリニアブルーと同様シングル曲。

こっちが後半にやってきましたね。星の降り注ぐようなギターのイントロが好きです。


「Miss.サンディ」で気になるのはやはり「Mr.アンディ」と関連があるのか…。
曲調でいえば、サンディのほうがキラキラしていてより明るくポップな印象。

歌詞もこちらのほうがさわやかで、雰囲気はちょっと違う。

この二つに出てくる共通のワードは「月」と「手」かな?

アンディは「月が出るみたいです 君にはまだ見えないけど」

サンディは「離れているのにまだ同じ月を見てるから」

アンディでは見えなかった月がサンディでは見えるようになったのか…

一日そこらでできるようなことじゃない存外に なことができるようになったのか…

アンディで「手をつないでみよう 触れ合うとこだけもらっていこう」

サンディで「つないだ手はもう離さないから」

とりあえず両者ともに手をつないで、離さないらしい。

そして「花びら数えるだけの毎日」の花びらは「ローズマリー」のことかな?

「カリソメローズマリー」は造語みたいだけど、かりそめって意味的には一時的ってことから

一時的なローズマリーの花びらを数える毎日の不安から抜け出して信じてみる、

ここで面白いのが、そのカリソメローズマリーはアンディで嘘ついて消えてるってこと!

嘘つかれたり不安な日々を過ごしてきたけど信じてみようと思うってことですかね…


「crazy birthday」を初めて聴いたときは、「アイラブニージューみたいなのきた!」って思いました。

こういう短くてガチャガチャした曲、好きだなぁ。

これは自分の誕生日を祝ってもらえず、一日が終わろうとして悲しくなっているとき

サプライズで祝ってもらえた!やったね!!って感じですよね。

「時計は5時」は明け方か夕方かわからないけども…。

(でも田淵さんの誕生日は4月で夏じゃないよなぁ)

バカー!!って叫びがあったり、「I like Happy birthday」の掛け合いがあったり、

がやがやパーティーみたいでにぎやかでテンションあがりますね!


ラストスパートでいったんクールダウンする「君はともだち」、

タイトルだけ見たときは、あの自称友達いない田淵さんが書かれるこれはいったいどんな曲なんだ…

と、かなり気になっていた曲でした(失礼)

この曲は「友達」というものに対して優しく且つ真剣に綴られた曲だと思います

「友達」って呼べる人なんて、別に多くなくたっていいよね、本当に友達と呼べるきみは大切な存在だよ、

というのを感じました。馴れ合いになる友達なんかよりよっぽど大事な存在がほんとの友達。


そしてラストの「シャンデリア・ワルツ」。

私はこのアルバムの中で一番好きな曲は何かと聞かれたらこのシャンデリア・ワルツだと即答します!

なぜなら、この手の曲はユニゾンにしかできない曲だと思うからです。

というか、もうタイトルの響きからして好き。

私の中でこれはいわゆる「ユニゾン節・田淵節」です。

ポップだけどロック、ユニゾンの武器の一つ。

この曲も一度だけですがライブで聴きました。シャンデリアは割とライブで披露されてて、

念願の音源化って感じでしたね。

曲順発表がされたとき、これを最後に持ってきたか!と意外でした。

いつもだったらきっと最後にこれは入れてこなかったと思います。

ですが、聴けば聴くほど、これはトリできれいに成立していると思いました。

聴き終わってからまたto the CIDER ROADを再生することをなんの違和感もなしに誘導するのです…。

気づいたらCIDER ROAD永遠ループですよ。あ、もう一回聴こうってなるんです。

サビの「ハローグッバイ」も耳に残りやすく、とてもキャッチーな旋律。

タイトルもワルツで、聴いていて踊りたくなるような明るい曲。

だけど、私はこの曲を聴いて不思議と目頭が熱くなりました。ほかの曲だとそんなことなかったのに!

この曲には、いい意味での「開き直り」を感じるからです。

本当に世の中はつまらないし嫌なことばっかり、だけどほら、踊ってみるとすごい楽しいよ!って

言ってるような感じがするのです。

たとえ「行き着いた先に何もなくても」。

この世知辛い世の中から目を背けることもなくすべて受け入れてのポジティブなメッセージの

投げかけをしているんじゃないでしょうか。

そんなことでくよくよしてないで、楽しいことをしようじゃないか。そう真面目に言われている気がして、

いつまでも暗い気分でいる自分がアホらしく感じます(笑)

「ハローグッバイ」が「出会い(ハロー)」・「別れ(グッバイ)」だと考えると、

「ハローグッバイ ハローグッバイ 何度も繰り返す 死んじゃうまできっと

悲しいことでもなんでもない そのたびに君は大人になる」

なんとなく意味が通りますね。出会いと別れを繰り返して大人になっていくけど、

別にそれは悲しいことなんかじゃないんだ!

人生という長期的なスパンの壮大なテーマをうたっている気がしてきました…。(笑)


と、ざっと全曲さらってみましたが、全体を通して気になった単語は「名前」でした。

「そして僕は君の名前を呼んだ 今!」

「君の名前を呼ぶよ」

「ちゃんと名前もある」

…など、ほかにもなんども使われていました。

ずっと気になっていたのですが、以前ラジオに出ていたときに田淵さんが

「名前とは一番わかりやすいアイデンティティだ」というようなことをおっしゃっていて

なるほどなぁと納得…。

自分を見失うな!というメッセージ性を受けました。

わかりやすいのが「お人好しカメレオン」だと思います。


曲調の大きな振れ幅は感じないものの、

歌詞としては、確かに「キライ=キライ」のような雰囲気のものはあまり見られなくなりましたね。

明るい歌詞が以前より目立つようになったと思います。

もともと私は明るい曲を毛嫌いしてしまうタイプだったので、初めてユニゾンを聴いたときも

少し抵抗があったのですが、聴いていくうちにこれは「押しつけがましくないポジティブだ」と

気づきました。これもユニゾンの魅力の一つだと思います。


私の中で今のところこれがユニゾンの最高傑作なのではないかというほどのめり込み、

本当に大好きな一枚となりました。

というか、これが良すぎて次のリリースが心配(笑)

もっといろんな人に聴かれて、評価されてほしいなぁ。

ユニゾンに関してはもう余計なファン感情とかないです。もっと売れろっ。

次作も期待しちゃってもいいですかね、ユニゾンさんよ…!

ライブも楽しみです!ユニゾン大好き。

みなさんもぜひ!




目印はこのキュートなハリーちゃん。