いまそこにある奇跡〜自転車窃盗犯を捕まえた件 | 学習メモ。

学習メモ。

長男(開成→東大理1[2016現役・専願]→東大大学院情報理工学系研究科→大手外資系IT企業)、長女(桜蔭→東大文1[2020現役・専願・TLP仏語]→東大大学院人文社会系研究科)の生活,中学・大学受験。暗記はAnkiが9割。リスニングは英語アニメが10割。

一昨日に奇跡が起きた。

 

私はいつものように、深夜の散歩に出た。
西日暮里→上野→御徒町→鶯谷と一周する2時間半ほどのコースである。
(なぜこんなことをしているか。高血圧、高血糖対策である。2年ほど前から散発的に行ってきたが効果はなかった。しかし、ここ一ヶ月ほど、ある願掛けも兼ねて休まず毎日行ったところ、少なくとも血圧は完全正常値となった。)


午前1時頃、御徒町近くの交差点で信号待ちをしていると、私の横に一台の自転車に乗った持田香織似のちょっとした美人がいる。


(深夜のサイクリングか。風が気持ちいいよね。
黒のGIANTのスポーツタイプ。女性にしては趣味が男っぽいなぁ。うん? なんだか私が3週間前に西日暮里駅前で盗まれた自転車に似てる気がする。フロントサスペンションがついている。ますます似ている。もしかして私のだったりして。)


そう考えているうちに、信号が青になり、自転車は走り出した。

 

(まいっか。深夜に散歩していて、全く離れた場所で、盗まれた自転車に乗る犯人に出くわすなんて偶然が、そうそうあるわけがない。はっきり私のだと判断できる目印でもあるならともかく…。そうだ。私の自転車には、ハンドルにサイクルコンピュータ取り付け跡がある。サイクルコンピュータは盗まれ、設置台のみが残っている。そこまで符合すれば、明らかに私のものだと判断できたはずだ。あ~あ、それぐらいたしかめておきたかった。)


急速に遠ざかる自転車を眺めながら、私はため息をついた。
ところが、そのとき、その前方の信号が赤になり、自転車もまた停止した。
今だ。私は、走った。女性に追いつき、自転車のハンドルを見る。あるある、サイクルコンピュータ取り付け跡が。これ、私のだろ。
「あの~ すみません。この自転車、私が以前盗まれたものにそっくりなのですが、ちょっと見せてもらえますか?」
有無を言わさず、自転車のハンドルとサドルを奪い取り、細部をみる。
持田香織似の女性は言う。
ひとから、もらったアルヨ
なんだ中国人かよ。(すみません、アルヨは作りました。アクセントがなまってただけです)
「いつ? まぁいいよ。ちょうど目の前に交番がある。防犯登録を見てもらいましょう」
中国人女性は、抵抗することもなく、素直についてくる。私は目の前の交番に。
「ものすごい偶然なんですが、私の盗まれた自転車にそっくりな自転車に乗ってる女性をそこで発見したんです。盗難届は出してあるので、防犯登録を確認してもらえますか?」
警察官が数名出てきて対応してくれる。中国人女性は交番内のイスに座らされ、事情聴取を受ける。私は交番の外で待つ。防犯登録を確認したところ、予想どおり、私の自転車であった。


警察官によると、女性はこう主張している。
「同じ中国人の引っ越しの手伝いをしていたら、引っ越す人から『自分は中国に帰るので、この自転車は不要になるからおまえにやる』といわれ、譲り受けた」と。
私は質問した。
「それは単なる言い逃れじゃないんですか?」
警察官はいう。
「たぶん本当です。よくあることなんですよ。やつらは、規範意識が欠如してますからね。街の自転車は共有財産だとでも思っていて、盗まれた自転車がやつらの中をぐるぐる回っているんです。

いま細かく事情を聞いていますが、一応筋が通っていて供述に矛盾がない。この女性を罪に問うとすれば、盗品等譲り受け罪になります。その場合は、主犯である窃盗犯を捕まえなければなりませんが、中国に帰って連絡がつかないのであれば捕まえられない。また、この自転車が盗品であるという盗品性の認識がこの女性にあることも立証しなければならないがそれは難しい。一応もう少し取り調べてみますが。」
私は質問した。
「この人たちの間で盗難自転車が流通しているという認識があるなら、そんなふうに譲り受けたものも盗品だろうと少なくとも未必的には認識しているはずなんじゃないですか?」
警察官は答える。
「そこはそう思わないのがやつらなんですよ。なにも考えていない。」
私は、その中国人女性をまじまじと見つめる。あどけない顔をして、悪気はなさそうである。

自転車は盗まれる前よりきれいになっている。チェーンのさびが落とされぴかぴかに。自分用の鍵とドリンクボトルまで取り付けてある。この女性も、せっかく良い自転車が手に入ったと思い楽しくサイクリングしてたのに残念だね。
ま、いいや。釈放してやるか。
「私は、この人たちの更生には関心ないんで、あとはおまかせします。」

自転車を返却してもらった。
警察官はいう。

「それにしても、奇跡的ですねぇ。この自転車には何かあるんですかね。

 

自転車に何かあるのではない。私が本気で願えば、たいがいのことは実現するのである。願掛けもかなう。

そんなふうに妄想する今日この頃である。

 

アメンバーさんたちのお子さんの合格を願います。

 

後日談

 

この話を家族にしたところ、自転車が戻ってきたことで、私がまた歩かなくなり不健康になることを心配した長女が、こうつぶやいた。

「今度は私が盗もうかな。」

 

盗まれた自転車

盗まれた自転車はこのモデルである。115,500円。

油圧式ディスクブレーキ採用のおかげで、雨の中でもブレーキの制御力がオチないのが通勤に便利で気に入っている。ろくにメンテナンスしていないが不自由していない。このモデルに乗る人を街中で見かけたのはこの女性が初めてである。

 

2012 GIANT ROAM XR 1