我が征くは北の札幌 ヤマトモデルプレーンを求めて
既にざっくりした記事を投稿しているので恐縮ながら、自分の記録として書いておきたいのでご容赦を。 ヤマトジェットのモデルプレーンが機内販売されると知ったのは、SKYマークのフェイスブック上でのアナウンスによるものでした。何とヤマトジェット機内だけでなく全機で限定150個販売されるとのこと。「これは、何としてもゲットしなければ!」と思いましたが、ゴールデンウィーク中に急に旅行を決めるなど今の日本では無謀な試み。しかも、既に決まっている予定として、妻の実家に参勤交代でご機嫌伺いに行くというイベントが組み込まれていました。 ただ、「限定150」という数は、ヤマトファンの数だけで考えてもかなり競争率が高いと言わざるを得ません。なんせ、公式ファンクラブの私の番号ですら1000番台(失くして再発行してもらった)。次に私がスカイマークに乗るとすればヤマト2202第二章公開日6月24日ですが、それまでに150機が売り切れていたら・・・。私は、妻に土下座して、「行かせてくれ」と頼みました。妻は、「どうせこうなるって思ってたわ」と呆れ顔。「でも、条件がある。私も連れていくことと、帰ったら家の掃除を一人ですること」「わかりました」 行き先は、スカイマークの直前予約で一番安かった札幌と決めました。その日のうちに行って帰ってくれば、一人25000円(往復で)の料金で済むのです。普通、神戸札幌間は片道30,000円、往復だと60,000円かかりますので、破格のバーゲンだと云えます。札幌という観光地としてはとても魅力的な場所だけに宿泊も検討しましたが、泊ると宿代と航空機代が合わせて一人頭20,000円、さらにいればいるほどいろいろ使ってしまうだろうということで、あえて日帰りと決めました。 神戸から札幌に向けては、朝8時45分発の航空便が出ていました。ヤマトジェットではありません。しかし、ファイスブックのアナウンスでは、「全機で販売開始」とありましたので、「この便でゲットしよう」と思っていました。こわいのは、お金持ちのヤマトファンが、他の機内で「友達の分も合わせて150個」といって買い占めてしまうことですが、さすがに分散して機内に積み込むだろうし、まだ売り切れては無いだろう、と思いました。 ただ、座席の網の中に入っているスカイマークの冊子のオリジナルグッズの中にはヤマトジェットの表記が無く、通常のモデルプレーンのみが4,500円で掲載されていました。「もしかして」・・・一抹の不安が胸をよぎりました。 座席は前から二番目の三列席の真ん中。窓側に妻。フライトは約2時間。その間、スカイマークと提携しているキットカットの配布、ホットコーヒーの無料サービスと続きます。「機内販売はまだか」・・・あまり機内販売で物を買ったことが無い私は、タイミングをわからず、とても焦りました。いつの間にやら離陸してから60分以上が過ぎていました。心の中で私はつぶやきます。 「ああ、このままでは、着陸態勢に入って、機内販売が終了してしまう!!」「しかし、CAさんはコーヒーを配った後奥に引っ込んで出てこない」「あーどうすればいいんだ!!」苦悶していると、前の二列席の男性が彼の奥さんに「トイレ行ってくるわ」といって立ち上がりました。その時、私の脳裏にイナズマが。「これだ!!」 「今なら、トイレに行ける。その時に前方に待機してるCAさんに機内販売を申し入れよう」 苦悶している私をよそに妻は寝ていました。 私は、即座に決意を行動に移しました。 席を立って、前方に向かいます。 すると、CAさんが、立ちふさがるように目の前に来て「現在、トイレは別の方がご使用中です。もしお急ぎなら後方のお手洗いをお使いください」「いえ、そうじゃなくて、機内販売のことでお聞きしたいのですが、今で、いいですか?ヤマトジェットのモデルプレーンを買いたいのですが」「ヤマトジェットのモデルプレーンですね。在庫があるかどうか確認してまいります。お席にお知らせに上がりますのでお戻りください」 私は席に戻りました。そして、しばらくして、CAさんがやってきました。「申し訳ない」という顔をしています。「誠に申し訳ありません。まだヤマトジェットは当機には積み込んでおりません。通常のモデルプレーンならありますがいかがいたしますか」「え、あ、じゃ、いいです」「誠に申し訳ありません」「いえいえ、ありがとう」 妻が薄目を開けて、僕の顔を見た。そうだ。全機に積み込むという意味は、ヤマトジェット以外でも売ってることがあるということで、絶対にあるとは限らないのです。それは公式なアナウンスの段階でちらと書いてあったので、ここで「ないじゃないか」と怒ってはいけません。ただ、「僕は、今、何をやっているんだろう」という自己嫌悪が急降下爆撃機のように襲ってきました。妻は云いました。「失敗した話の方が共感されるわよ。それに、この飛行機は札幌に連れてってくれる。札幌を楽しみましょうよ」 札幌は、自分の記憶では24年前に行ったことがあります。その前は1985年。大学の友人と北海道を原動機付バイクで海岸線を一周しました。札幌は2週間の大旅行の最終ポイントでした。札幌ではテントは張らずに駅に寝袋を並べて野宿しました。自分たち以外にも、北海道には同じようにバイクで廻っているライダーたちがいて、互いの経験を語り合って仲良くなったりもしました。札幌駅に着いたとき、そんな思い出が一気に胸の中に去来して、何とも言えない気持ちになりました。妻が「よかったね、また来れて」と笑顔で云いました。 札幌では、時計台を観たり、テレビ塔に上ったり、ススキノで寿司を食べたり、マイペースで周遊。楽しかったです。札幌ラーメンは胃袋の都合で食べられなかったけど次回こそ何泊かして食べたいと思います。ジンギスカンとサッポロビール館も。「次はせめて函館や小樽に足を延ばすか」「いいね、それも」「君の運転で」「ツーリングでもいいよ」。妻は中型の免許を持っています。話しながら、神戸から札幌まで「日帰り」という馬鹿な旅路に付き添ってくれた妻に感謝の気持ちでいっぱいになりました。 さて、そうこうしている間に帰る時間が迫ってきました。神戸に帰る最も遅い時間19時30分頃発の飛行機に乗らねばなりません。覚悟はできていました。ヤマトモデルプレイン、なくて 元々。それより、ヤマトジェットをきっかけに、日帰り弾丸で札幌デートができたことに満足していました。例え、ヤマトジェットのモデルプレーンが手に入らなくとも、一生の思い出になることは間違いありません。それでも機内販売に備えて、財布をポケットの中に入れておきます。 新千歳から神戸へ向かう今度の座席は、前から十番目以後の三列席の一番窓側。行きと同じで最初にキットカットの無料配布、コーヒーの無料配布と続いていきます。座席の網入れのスカイマークの機内雑誌には通常版のモデルプレーンの写真しか掲載されていません。「やはり、ヤマトジェットモデルプレーンはなさそうだ」と私は思いました。妻が、無言で私を肘でこづきます。「だって、なさそうじゃないか」「ここまで来たんでしょ。」 「そうだ、ここまで来たんだ。結果はどちらでも受け入れる覚悟はしている。勇気を出して聞いてみよう」 私は、コーヒーを配り終えて、立ち去ろうとするCAさんに見えるように挙手しました。CAさんが「?」という顔で近づいてきました。 「あの、機内販売で、あのヤマトジェットのモデルプレーンありますか」 私は、勇気を振り絞って、聞きました。 他の客が一斉に僕の方を見ました。恥ずかしい。いや、恥ずかしくなんかないぞ!! しかし、機内はゴーッという飛行音が激しく、CAさんは聞き取れません。 「すみません、よく聞こえません、もう一度お願いできますか」 「(大きな声で)ヤマトのジェットのモデルプレーンありますか」 「在庫を確かめてまいります」 妻が、僕の腕をつかんで、「よくやった」という表情をしてくれました。 数分後、CAさんが、戻ってきました。 「ヤマトジェットのモデルプレーン、在庫ございます」 あ、あ、あ・・・「あるんですか!!」 「はい、在庫ございます」 「買う買う買う、買います、買います」 五回も買うという意思表示。 機内販売を初めて経験しましたが、最初にお金のやり取り(釣銭)、次に商品の手渡しと続きます。モデルプレーンを渡してもらう際に「ヤマトジェットのモデルプレーンには、宇宙戦艦ヤマト2202の特別クリアファイルがついています」とCAさんが説明。「知ってるよ」とは言わずに説明を頷きながら最後まで聞きました。 神戸まであとどれくらいあるのか、モデルプレーンを抱えている私は腕時計を見ることもできず、確認できませんでした。ただ、「やりとげた」という満足感が心の中に満ち満ちてきました。この時間がずっと続けばいいとすら思いました。 帰宅後、スカイマークのフェイスブック上で、「ヤマトジェットのモデルプレーンはヤマトクルーでも販売できるよう調整中です」とのスカイマークの人のコメントが掲載されてました。 「でも、これはこれでいい。実現すればせっかくの150機が、欲しい人の手元に届くのだから」「うちの一機はどこに飾るの?」「そうやね、凱旋門で撮った記念写真を立ててる隣に飾ろうか」・・・こうして、2017年のゴールデンウィークは終わりに近づこうとしていました。