アンコール昭和外伝④
【実録番長への道Ⅳ】
後方から低いドスの効いた声。
『おい止まれっ!』
秀『ギョッ…!』
振り向いたそこには2年生番長グループが並んでいた。
2年番長『お前ら新入生のくせして生意気な顔して歩いてんじゃねぇぞ!』
(心の声)
『ヤバい…体格が違う、確実に負ける、せめて仲間たちが見てない所でやられよう』
秀『みんな、先に帰ってくれ!こんな奴ら俺一人で充分だ。』
A、B、C『えっ?でも…』
秀『俺も番長じゃねーか!こんな奴ら一発よ!』
A、B、C『わかった!』
みんな案外薄情だ、蜘蛛の子を散らす様に走って消えて行った。
2年番長『おいっ!一発で何だって?あぁ~?』
秀『い、いや、一発で勘弁してもらえないかと思いまして……』
負け犬だった。
愚かだった。
みんなと同じ格好をしていれば、こんな苦労する事もなかった。
後悔先に立たずだった。
2年番長『甘いんだよお前!タイマンだ!来いっ!』
秀『ちょっ、ちょっと待って下さいよ…』
とその時、
『おいコラっ!何意気がってんだコラっ!新入生イジめやがって!』
3年番長グループが現れたのだ。
2年番長グループは一斉に姿勢を正し挨拶を始める。
3年番長『お前ら!俺たちが上にいるのに意気がってんじゃねー!帰れっ!』
2年番長グループは消える様に走って行った。
ラッキー過ぎる展開だった。
3年番長『お前気合い入ってんなぁ、しかし先輩がいる事を忘れちゃいけねーよ。明日から標準制服を着て学校に来い、いいな!』
秀『は、はい。』
危機は去った。
秀二郎は全力で走って帰り、大好きなバァちゃんに事情を説明した。
その説明の仕方、熱弁ぶりは、一週間ご飯を食べなかった猫が、やっとご飯を食べた時の様にンゴンゴ唸る様に語っていた。
祖母『なるほど…番長になる為には標準マーク入りの制服は着たくないのか…、しかし、そうしなくてはやられるかぁ、じゃあ、その長ランに標準マークを縫い付けてあげるよ!』
秀『ん?バァちゃんナイスっ!そうだよね!マークが付いてりゃいいんだよ!』
そんな訳ないのだが、秀二郎とバァちゃんは思考能力がほぼ一緒だった。
そして次の日の朝、登校した秀二郎を見た担任は激怒していた。
担任『き、き、貴様…』
秀二郎は勝ち誇っていた。なぜならバァちゃんが標準マークを縫い付けてくれていたからだった。
秀『先生!ちゃんと標準マーク付いてますよ!』
こんな言い訳が通用する訳もなく、剃り込みと眉毛をマッキーマジックで塗られ、その姿は昔の北斗の拳、または郷ひろみの様だった。
その日一日、罰としてその姿で過ごし、そして下校の時間を迎えた。
仲間たちと帰っていると、またドスの効いた声が…
『おい!』
3年番長グループだった。
3年番長『俺たちの忠告を無視するとはいい度胸だな。』
秀『標準マーク付いてるのに…』
蚊が飛ぶ音より小さな声だった。
(心の声)
『終わった…短い番長生活だったなぁ、また昔に逆戻り、でも少しの間でも番長になれて幸せだった。よし、どうせやられるならせめて戦ってやられよう。』
秀『だったらどうしろってんだ!お?』
3年番長『上等だ…ガキが…』
秀二郎と3年番長グループのにらみ合いが続く。
秀二郎大ピンチ、果たして番長対決の結末やいかに…。
次回、衝撃のクライマックス!!
つづく…
【実録番長への道Ⅳ完】