昔、ある女の子に、とても素敵なおとぎ話を教えてもらった。
話を聞き終えたとき、すごく心がほっこりして、同時に、
そのお話を「いい話」っていう、その子の純粋さを感じた。
どこかにベースになったお話があるんだろうし、そもそも又聞きだから、
正確な内容かどうかは分からないけど…大体こんなお話だった。
穴の空いたバケツ。
昔々、あるところに水汲みをする少年がいた。
彼の使っていた水汲み用のバケツは、担ぎ棒のついた二対のバケツで、
ひとつは普通のバケツ、そしてもうひとつは…小さな穴が空いていた。
朝早く、少年は離れた水汲み場に水を汲みに行くのが日課だった。
大きなバケツを二つ。
帰りには水が入ってるので、さらに重くなっている。
けれども、片方のバケツには穴が開いていて、家に着くころには
水が半分以下に減ってしまう…。
だから、少年は両親に怒られながら、何度も水を汲んで
往復しなければならなかった。
あるとき、普通のバケツが、穴の空いてるバケツに言った。
普通のバケツ:「オレは自分の仕事をしっかりとやっている。水を溜めて、家までちゃんと運んでいるんだ。けれどもお前はなんだ?」
穴の空いたバケツは返す言葉がない。
普通のバケツ:「お前に穴が空いてるせいで、少年は両親に怒られて、何度も水汲みに戻らなきゃいけないんだぞ!この役立たずっ!!」
穴の空いたバケツは、自分が少年につらい思いをさせている
ことを知り、とても傷ついた。
彼は、申し訳ない気持ちでいっぱいで、少年に言った。
穴あきバケツ:「ボクのせいで…ごめんなさい。迷惑ばっかりかけてしまって、逆に何の役にも立てなくて…。」
すると、少年は笑ってこう言ったんだ。
少年:「役に立っていないだなんて…そんなことはないよ。」
穴あきバケツ:「でも、いつも水をこぼしてしまっているし…。」
少年:「いいんだよ。それにね、キミはずいぶん役に立ってるよ。ウソだと思うなら、明日、いっしょに水汲みをした帰り、道端をみてごらん。」
photo by Dinesh Weerapurage
穴の空いたバケツだって役に立っている。
次の日、またいつものように少年は水汲みに行きました。
帰り道…穴の開いたバケツは、相変わらず水をこぼしていく。
そして、少年が言った。
少年:「ほら、下を見てごらん。」
穴の空いたバケツが自分の下を見てみると…
そこにはたくさんの花が咲いていたんだ。
少年:「ボクとの帰り道、キミは、この花たちに水をあげていたんだよ。」
穴の空いたバケツは驚いた。
少年:「それにね、このきれいな花たちが、お母さんに摘まれて、家のテーブルに飾られて、素敵な食卓を作っているんだ。だから…キミは十分役に立っているんだよ。」
ボクらは、どこかで必ず必要とされている。
キミも、キミだけじゃなくて、キミの大切な人も、
何の役にも立っていない…なんて落ち込んだり、
凹んだりしているときも…もしかしたらあるかもしれない。
でも、そんなことはないんだ。
大きな視点に立てば、必ず何かの役に立っている。
そして、必要とされているんだ。
そう思ったら…なんだかワクワクしてこない?
さらに、自分ではたいしたことじゃないって思っていることでも、
それを欲している人にとっては、価値のあるものだってあるはず。
ボクらは、この世に生まれてきただけで、
すでに何かの役に立っていて、誰かを幸せにしている。
そして、そんなふうに意識することで、もっともっと
役に立つことだってできるんじゃないかな?
それは、たとえ大きなことじゃなくても、
今自分ができる小さなことから…。
この「穴の空いたバケツ」の話を聞いたときに、
なんだかすごくワクワクして、心がほっこりしたんだよね。
もし…キミも何か感じることがあったら、
ぜひキミの大切な人にも教えてあげてほしいな。