そういえば、ついこのあいだ、今のキミと同じように、自分の部屋や、電車のなかでこのブログを読んでいた友だちが、ゆっくりと読み進めていくうちに…なんだか普段とはちょっと違う不思議な感覚を覚えたんだって。
それは、記事の文章を、一行ずつじっくりと読んでいるうちに、気分がゆったりと落ち着いてきて…。
さらに読み続けると…。
その友だちは、なんとなく、すーっと腕の筋肉や、脚の筋肉の力が抜けていく感じがして、まるで身体が少し軽くなったような感覚がしてきたらしい。
そして、その身体が軽くなったような感覚を、頭のてっぺんから、足の爪先までじっくりと味わうように感じてたら、手や足がほんの少し、じんわりと温かくなった感じもしてきて…。
身体の力がさらに抜けて、軽くなるのを感じたら、まぶたがほんのちょっと重くなったような感覚や、まぶたが軽く痙攣するような感覚もあったんだって。
そのまぶたの違和感に意識を集中すると、普段よりも瞬きがゆっくりになっていることにも気づいたかもしれないし、呼吸も、まるで深呼吸をしているときのように、静かに…規則正しく…。
そして…深く呼吸をしながら、気持ちを内側に向けると、心臓の鼓動が「ドクッ…ドクッ…」と…ゆっくりと脈打つ音が聞こえる気がするくらい、落ち着いてきて…。
まるで、静かに本を読んでいるときのような、あのゆったりとした心地よい雰囲気に包まれて…。
自分でも気づかないうちに…リラックスしながら、軽いトランス状態に入っていたそうんだんだ。
![眠れる森の美女。](https://stat.ameba.jp/user_images/20130818/23/lovestrategist/1e/3d/j/o0600047912653020186.jpg?caw=800)
photo by Shandi-lee Cox
勘の鋭い人はすでに気づいてるかもしれないけど、これは、この話を聴いている人や読んでいる人をトランス状態に導くための例文だ。
具体的には「マイ・フレンド・ジョン」と呼ばれる、催眠誘導のテクニックだ。
「え?聴いてる人を!?…でも、ただ他人の話をしてるだけじゃん?」
って、キミは言うかもしれないけど、まさにそのとおり。
でも、他人の話だからこそ、キミは構えないで、自然にトランス誘導の例文を読み進めちゃったんじゃないかな?
催眠療法や、セラピー、カウンセリングに訪れるクライアントは、相談や何らかの改善を求めて来てるんだけど、時として本人も気づかないうちに心理的に抵抗してしまう場合がある。
「さぁ…眼を閉じてリラックスしてゆったりとしてください…。」
こう言ってセラピストがリラックスさせようとしても、ラポールができていなかったり、相談内容の重さや不安、不信感など…何らかの原因によって、心のブレーキが働いて、スムーズに誘導できない…といったことが起こる。
そんなときに、クライアントに「誘導を意識させない」ように、
「そういえば、ボクの友だちの話なんだけどね…」
…と、“誰か別の人”が催眠誘導によって、トランスに入っていったことをそのまま話すことで、間接的にトランスに導いて誘導する…なんてことをするんだ。
クライアントに話しているのは、あくまでも“他人の話”だから、目の前の相手は油断して(つまり、顕在意識の壁が下がった状態で)その催眠誘導の話を聴いている。
そして、頭の中で無意識に、その人(話の登場人物)がトランスに入っていくのを想像(イメージ)しながら、結果として相手もトランスに入っていってしまうんだ。