2016.9.23
Qetic


凝縮された音のエネルギーはザ・ビートルズ(以下、ビートルズ)に勝るとも劣らない。全員が岡本太郎好きで、ラモーンズのように全員苗字はオカモト。だからOKAMOTO’S。ちょっと人を食ったような遊び心もまたビートルズ流なのだろうか。映画『にがくてあまい』の主題歌“Burning Love”を発表したばかりのOKAMOTO’Sの4人の中で、最もビートルズのことが好きなオカモトコウキ(ギター)に、ビートルズのライヴ・ドキュメンタリー映画の関連作品として発売される『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』の聴きどころについて訊いた。

Interview:OKAMOTO’S(オカモトコウキ[Gt])

――まず、聴き終えていかがでしたか?

ハリウッド・ボウルのライヴは、当時出たレコードも聴いていましたが、今回は音質や音の分離がとても良くなり、リアリティがすごく増していますね。歓声も、もともと3トラック録音だったというので作業は苦労したと思いますが、大きさも含めていい落としどころになっていると思います。

ビートルズがライヴでどんなふうに演奏していたのか、どんな熱量を持っていたのか、それがひとつにまとまって伝わりやすくなったなと。“Roll Over Beethoven”など、1回途中で演奏を下げ、また上げて盛り上げる演出や、音量差のある演奏はダイナミクスがあります。小さいライヴハウスで活動していた強みというか、生音の強みを感じました。それにしても、ドラムの前にアンプがあって、モニターの返しがないという劣悪な環境なのに、よくあそこまで息を合せられるなと。コーラスも含めて。ビートルズは、場数を踏んだうまいバンドだったということですね。

――それぞれの楽器についての印象は?

第一印象としてはリンゴのドラムが強力でした。音も迫力があり、すごくスウィングしているというか、単なる8ビートではなく微妙にシャッフルしている彼ならではのドラムが味わえる。ドラムだけでグルーヴしている。リンゴは普通のプレイでも半ハットのシャッフルで叩きますが、あれをできる人はなかなかいませんね。ギターも今と違って歪んでいるわけではないのですが、塊になってダーンとくる感じが凄い。

ヴォーカルはジョンが特に強力ですね。“Twist And Shout”は、声が出ていてすごくやる気もあったんだなと。ポールは普通の発声で声を出すからライヴをやればやるほど声が出るけど、ジョンはだんだん声がかすれていってしまったりするので、善し悪しがはっきり出る。でもこの時はコンディションが良く、ジョンの一番いい時期のヴォーカリストとしての魅力が伝わってきます。

――当時出たハリウッド・ボウルのライヴ盤はいつごろ聴いたんですか?

高校生の時です。叔父の家にビートルズのLPがたくさんあり、ハンブルクのスター・クラブのライヴ盤もそのころに聴きました。あれはデビュー直後の乱暴でパンキッシュな勢いのあった時期の演奏ですが、ハリウッド・ボウルのライヴ盤は、デビュー後のいちばんいい時期の演奏だと思います。66年になるとだんだんやる気がなくなってくるので(笑)。“Help!”や“Ticket To Ride”のようなライヴ後のレパートリーも入ってきて、64、65年はバランスもいいですね。

――ビートルズとの出会いは?

中学生の時に友達が赤盤・青盤(『ザ・ビートルズ1962年~1966年』『同1967年~1970年』)を貸してくれて、それで聴き始めました。最初はポール派でした。ポールのライヴ盤『バック・イン・ザ・U.S. -ライヴ2002』がリリースされて、そこから入って聴いていきました。エンジニアのジェフ・エメリックの本なども読んで、『リボルバー』のレコーディングでレズリー・スピーカーをオルガン以外で使用していてやばいなと思ったり、どちらかというと、レコーディングでどんどん新しいことをやっていったり、シンガー・ソングライターが3人いてそれぞれが刺激を受けながら進化していったりというところに魅力を感じていました。

単純に楽曲だけではなくて、様々な側面から語るところの多いバンドだなって。そんなバンド、その後もいないし、ビートルズは今でも発見が多い。たとえばテンプルズのように今のサイケデリックなバンドにしても、中期のビートルズの影響を受けていますし、今の人たちが聴いて真似しても新しいものが作れる。大人だけの楽しみにしてしまってはもったいないと思っています。

――ビートルズに惹かれたポイントは?

60年代当時はレコーディング技術について制約が多かった時代ですが、制約が多いからこそ生まれるアイデアが多くあった気がします。逆再生だったり、今となっては考えられないアイデアで「現状」を打破していくビートルズの力にすごく惹かれます。今はレコーディングの選択肢は広がりましたが、必ずしもそれでうまくいくとはかぎらない。制約が多い中でどうがんばるか――アイデア勝負というのは、ビートルズの姿勢から学ぶところが多いです。ビートルズは音楽を総合的に考えていくので、ギターにしても曲ありきというか、ジョージも曲やメロディをすごく生かすアプローチをしていますよね。全体を見てギターを入れるという姿勢も参考にしています。

――ポールのライヴは行きましたか?

2013年に行きました。東京ドーム。それが初めてです。エンターテインメントとして完成されていて、素晴らしかった。ただライヴをやるだけではなく、流れとしても完成されている。バンドもすごくいい。現代的なアレンジなんかもパワー・アップしていますが、ファンのツボをいやらしくなくうまく突っついていましたね。

――ポールは、ハリウッド・ボウル公演から半世紀以上経った今でも“All My Loving”を歌っていますね。

本当ですね。“All My Loving”はジョンの3連のギターがいいですね。すごくがんばってる(笑)。ジョンのリズム・ギターのうまさを裏付ける演奏だなと。ビートルズはライヴ・バンドとしての実力がきちんと検証されないままきてしまっている気がします。当時のライヴの環境や演奏スタイルもあるとは思いますが、飛び抜けてうまかったと思っています。今回のライヴ盤でそれが事実だったことが証明されたと思いますし、若いバンドにもぜひ聴いてほしいなと。4人編成なのにグルーヴがどのバンドとも違う。ストーンズは黒人音楽をがんばって解釈して、前ノリでやっているという印象ですが、ビートルズはスキッフルの流れできているので、シャッフルしてるんですよ、すごく。その流れをもってして4人編成でロックンロールをやってるというのはすごく正しい気がします。ビートルズは、そういうロックンロール・ミュージックをやるプロフェッショナルな4人組だったということだと思います


http://www.qetic.jp/interview/thebeatles-pickup/210158/




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