2015.7.15
朝日新聞デジタル



大島涼花(おおしま・りょうか)、16歳。チームB副キャプテン。小柄だが、パフォーマンスは人一倍目立つ=慎芝賢撮影


先輩の言葉で少し成長


 最近、「大人になったね」とよく言われます。自分ではわかりませんが、たくさんの方に言われます。

 以前は、いたずらっ子でクソガキと呼ばれていましたが、今はそうでもないような気がします。

 AKB48に入って4年。後輩もたくさんできました。後輩たちは妹のように絡んできます。特にあえり(横島亜衿)、なーにゃ(大和田南那)はすごいです。機嫌がいいときは、うざったくなるほど。一緒にお泊まりしたときは寝かせてくれません。でも、「かわいいな」と思います。

 チームのための役割を任されるようにもなりました。チームBでは、大家(志津香)さんやあきちゃ(高城亜樹)さんがMCを回して下さいますが、たよりっきりではいけないので、ふたりがいないときは、私がまとめ役を引き受けるようにしています。

 後輩やチームのために何かをしたいと思えるようになったのは、優しい先輩たちのおかげです。

 たとえば、研究生の頃、チームAの目撃者公演に高橋みなみさんのアンダーとして出演したときのことです。振りが難しくて、練習しても全然できず、公演を前に楽屋で、泣いていました。先輩たちはそんな私に「大丈夫だよ、ちゃんとできているよ」と励まして下さって。そのおかげで緊張や不安がほぐれました。「大丈夫だよ」の一言で心を楽にしてくれる。「先輩の力ってすごいな」と驚き、いつか私もそんな先輩になりたいと思いました。

 研究生からチームAに昇格した頃は、いたずらっ子のイメージでしたが、実は不安でした。覚えなくてはいけない振りがたくさんあったので。それでも、先輩たちが優しくて振りを丁寧に教えてくれたので助かりました。

 篠田チームAから横山チームAになった頃にはチームにも慣れました。川栄李奈さん、佐藤すみれさん、松井咲子さん……。尊敬できる先輩がいっぱい。横山さんは明るくて弱音をはかないし、後輩にすごく優しい。話しやすくて、研究生の頃から何度も相談をしていました。

 たとえば、公演やコンサートでの自分のポジションのことなどで、相談すると、「うちは最初、前の方のポジションじゃなかったけど……」と体験をもとに話してくれます。「若いから大丈夫だよ」。その言葉に安心しました。

 川栄さんはすごく明るくて一緒にいて楽しいです。先日、福岡ドームコンサートのリハーサルの日、休憩時間に楽屋で川栄さん、れなっち(加藤玲奈)さん、ちより(中西智代梨)らとホラー映画のDVDを見ていました。川栄さんが途中で寝てしまったんです。れなっちさんが「カワエー!」と言っても起きなくて。みんなで笑って、楽しかったです。

 あきちゃさんは、後輩らをよくご飯に誘ってくださいます。昨年はあきちゃさんが声をかけてくださって、なーにゃやいずちゃん(伊豆田莉奈)、あえりらとプール、バーベキュー、ボウリングと色々な場所に行きました。

 朱里さんは1歳年上。MCが上手でおもしろい。普段からネタのことを考えている姿を見ているので、すごいなと尊敬しています。

 MCもパフォーマンスも先輩の姿を見て学んできました。そんな私ですが、3月、チームBの副キャプテンに指名されました。不安よりも楽しみの方が大きいです。

 何をすればいいか考えました。私はみんなが楽しくすごす雰囲気が好きです。チームBは2期生の小林香菜さんから中学生の達家真姫宝(たつや・まきほ)まで、メンバーの年齢差が大きいチームなので、私がその間をつなげ、仲のいいチームになるようにしたいです。次期総監督の横山由依さんは「涼花ならできる。大丈夫やで」と言ってくれました。

 キャプテンの木﨑ゆりあさんはまだSKE48からAKB48に移籍してまだ1年半くらいなので、フォローできればと思っています。

 私自身の目標もあります。一つは16人選抜に入れることです。選抜総選挙では圏外で、すごくショックでした。昨年は80位。たくさんの新しい仕事の機会をいただいて、充実していた分、「順位を上げなくちゃ」という思いが強かったので。

 結果を受けて「どうしよう、これから」と思いました。選抜総選挙翌日のコンサートでは、「僕たちは戦わない」の選抜メンバーとして出演する予定だったので、「圏外の私が出てもいいのかな」と考えました。

 48グループ総支配人の茅野しのぶさんは「今は種まきの時期。将来に向けて色々な準備をしている段階だと思って」と勇気づけて下さったので、「気持ちを切り替えてがんばろう」とポジティブに考えられるようになりました。

 私はどのようなメンバーになりたいのか、今まで考えてきました。王道アイドルでもないし、おもしろいことが言えるトーク力があるわけでもありません。私がいちばん好きなのは歌とダンス。パフォーマンスで、ファンの方に元気を与えられるようなメンバーでありたいです。先輩で言えば、2期生の宮澤佐江さんのような人が目標です。

 AKB48をモデルにした舞台「AKB49」で、ご一緒してからすごく存在を身近に感じるようになりました。宮澤さんは座長としてセリフの量がすごく多かったけれど、ちゃんと覚えていました。舞台でも集中力がすごいし、どんなに疲れていても、忙しくても、メンバーらに「絶対に成功させようね」と声をかけていました。

 私が研究生の頃、チームK公演に出演したとき、宮澤さんが話しかけてきて、一緒に写真を撮って下さいました。いつも明るく笑顔で優しい。しかも、格好よかったです。

 舞台「AKB49」の期間中には、宮澤さんの今までの舞台の経験を話してくれました。私の稽古も見てくれていて、「声が大きくなったね」。「すごく良くなってるよ」と言って下さったのでうれしかったです。最初から好きな先輩でしたが、もっと好きになりました。

 実は、舞台の稽古では悪戦苦闘していました。稽古で3時間もかかったのにOKが出ない場面がありましたが、その翌日もできなくて。「なんで昨日言ったのにできてないんだ!」と演出家さんに厳しく注意されました。

 公演が終わって、みんなと「イエーイ!」という喜ぶ場面でしたが、演技の経験がなかったので、なぜ、ダメなのかわからなかったんです。演出家さんには「自分のセリフよりも相手のセリフを聞け!」と言われました。相手のセリフを受けて、自分の感情を出すようにと。先の展開を知っていても、初めてそのセリフを聞いたように反応しなさい、と言われました。相手との間や感情の表現が上手にできていなかったんですね。厳しく指導されましたが、宮澤さんが「怒られるのはいいことだよ」と教えてくれたので、苦にせず、本番を迎えることができました。稽古期間は「もういやだな~」と何度も思いましたが、本番は楽しくて仕方がありませんでした。千秋楽の舞台が終わった後は、泣きましたし、何か心にぽっかり穴があいたような……。そんな感覚は横山チームAの千秋楽以来でした。

 あの現場の楽しさが忘れられず、女優のお仕事が好きになりました。作品を見た方がお芝居の中に入り込むような演技ができるようになりたいです。「AKB49」はいい刺激になり、あらためてがんばる気持ちが芽生えました。宮澤さんの一番の教えは「初心を忘れない」ということ。今はいつもチームや自分の夢を真剣に考えています。


■番記者から

 一昨年に取材した時は中学3年生。取材中は、いたずらっ子のような目で、記者のノートをのぞきこんでいた。当時のニックネームは「KUSOGAKI(クソガキ)」。子供の印象が強かったが、今回、(少し)大人の雰囲気に変わっていたので驚いた。口調も以前より落ち着いている。「KUSOGAKIは卒業した?」と聞くと、「環境もすごく変わりましたから」と答える。チームA時代は最年少だったが、チームBでは後輩たちに囲まれ、自然と自分の役割を務めるようになった。

 KUSOGAKIのイメージと違って、真面目で不安を抱きがちな面もある。選抜総選挙では昨年の80位から今年は圏外に後退。シングル曲の32人選抜に選ばれるなど周囲からの期待を背負っていた分、つらかったはずだ。それでも壁にぶつかるたびに成長している。むしろ、一皮むける機会になるかもしれない。

 横山由依次期総監督の門下生のイメージがあるが、ロールモデルに挙げたのは宮澤佐江(現SKE48)。実際に厚く尊敬しているのはインタビューから伝わったが、現在のAKB48には不在なタイプでもあり、グループの活性化にもつながるような気がした。

 宮澤佐江はいつも元気で明るくて根性もある。歌も演技も上手。ボーイッシュなタイプで、女性の崇拝者も多い。

 涼花は後継者になれるか。まだ未知数だが、成長スピードはめざましい。期待をもって見守りたい。

(大西元博)





ファンにとってAKBの面白さは、多様な個性からなる群像劇を見る楽しさにあります。

その群像劇の中でメンバーが光り輝くためには、自分の個性をいち早く見つけ、その個性においては誰にも負けないくらい磨きあげなくてはいけません。

幸いAKBには、ロールモデルとなる先輩が多種多様揃っています。

しかし、言うは易く行うは難し。そのメンバーの悪戦苦闘ぶりが、またAKBという群像劇をより魅力的なものにしています(選抜総選挙の残酷ショーはその最たるもの。残酷であるだけにファンはより感情移入してしまう)。

大島涼花ほどの逸材が、選抜総選挙では80位圏内にも入れなかったという事実は驚きですが、茅野しのぶの言うように「今は種まきの時期」。大きく育つことを祈ってやみません。

(とりあえずは、れなっち選抜の楽曲とMVを楽しみに待つことにしよう)






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