2015.1.21
日刊ゲンダイ


衝撃的な事態だ。日本人2人が「イスラム国」に人質として捕まり、72時間以内の殺害を予告された。

 イラクとシリアの北部一帯を支配し、残虐の限りを尽くしているイスラム国は、これまで人質に取った白人を容赦なく殺しているだけに、殺害予告は脅しじゃない。

 人質は湯川遥菜さん(42)と、フリージャーナリストの後藤健二さん(47)とみられている。イスラム国はビデオ声明で、72時間以内に2人の身代金2億ドル(約235億円)を払うように要求している。

 イスラム国が20日に流したビデオ声明は、「日本政府と国民へのメッセージ」というタイトルで、1分40秒ほどのもの。〈日本の首相へ。日本はイスラム国から8500キロも離れていながら、自発的に十字軍に参加した〉〈日本国民に告ぐ。おまえたちの政府は、イスラム国と戦うのに2億ドル支払うという愚かな決定をした。日本人の命を救うのに2億ドル支払うという賢明な判断をするよう政府に迫る時間が72時間ある〉とナイフ片手に英語で凄んでいる。

 ビデオ声明でも分かるように、今回の人質事件、安倍首相の「中東外交」が引き金になったのは明らかだ。

 16日から中東4カ国を訪問している安倍首相は、17日にカイロで行った演説で、「イスラム国の脅威を食い止めるために2億ドルを支援する」とブチ上げた。この演説がイスラム国の怒りに火をつけたのは間違いない。湯川さんは昨年8月、後藤さんは昨年10月にイスラム国に拘束された可能性が高いが、これまで殺害を予告されることはなかった。元レバノン大使の天木直人氏がこう言う。

「イスラム国が、安倍首相の中東訪問のタイミングを狙っていたのは間違いないでしょう。しかも、首相は、イスラム国と戦うために2億ドルを支援すると表明した。彼らにとっては、飛んで火に入る夏の虫です。イスラム国は、ネットを駆使して世界中の情報を手にしている。恐らく、安倍首相が何を語るか、じっくり観察していたはず。深刻なのは、彼らは、日本の中東政策を問題にしていることです。日本は文字通り、イスラム国との戦争に巻き込まれてしまった

 安倍首相は真っ青な顔をして「2億ドルは避難民への支援だ」と釈明していたが、もはや「イスラム国」に言い訳は通用しない。


■カネをバラまいただけの中東歴訪


 そもそも、安倍首相は、このタイミングで中東4カ国を訪問する必要があったのか。

 ちょっと考えれば、いま中東にノコノコと出掛けて、「イスラム国がもたらす脅威を食い止める」と2億ドルのカネを出すと表明すれば、イスラム国を刺激することは容易に想像がついたはずだ。

「地球儀を俯瞰する外交」を掲げる安倍首相は、これまで50カ国以上を訪問し、毎月、外遊すると心に決めているらしいが、中東に行く緊急性はまったくなかったはずである。

 実際、16日から20日まで駆け足でエジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナを訪ねているが、中身のある外交はゼロだった。エジプトに430億円、ヨルダンに147億円……と、ひたすらカネを配っていただけだ。総額2900億円である。浮かれてカネをバラまき、その結果、人質事件を引き起こしているのだから、どうしようもない。

「安倍首相は中東歴訪を中止すべきでした。いま、中東諸国は“イスラム国”を相手に必死の戦いをしている。フランスではシャルリー紙に対してテロが起きたばかりです。各国の首脳は正直、安倍首相をゆっくりもてなす状況ではなかったと思う。そもそも、安倍首相は、どこまで中東外交を理解しているのか。今回、ゼネコン、銀行、商社など46社の首脳をズラズラと引き連れていったのが象徴です。トップセールスといえば聞こえはいいが、結局、安倍外交はカネ、カネ、カネ。日本人2人の人質事件は、カネにものをいわせる安倍外交の虚を突かれた格好です」(天木直人氏=前出)

 中東4カ国歴訪は、安倍首相が「どこでもいいから外遊に行きたい」と外務省をせっついて組んだ日程なのだろうが、人質事件を引き起こした責任をどう取るつもりなのか。


(日刊ゲンダイ 2015.1.21)





Twitter上の意見。


平川克美
《そもそも安倍首相は、いかなる目算があってイスラエル訪問していたのか。誰がこのシナリオを描いたのか。官邸周辺には、リスクに対する冷静な判断力がなくなっているとしか思えない。それとも計算の上で、今回の事件を誘発させているとすれば、犯罪的。》

toriiyoshiki
《安倍さんの「対イスラム国」発言が意図的なものだったのか、単なる軽率なのかは知らない(たぶん後者だろう)。しかし、勇ましぶった政治家の発言がきっかけとなって、命の危険にさらされる二人はもちろんのこと、「対テロ戦争」とやらに否応なく巻き込まれることになる国民はたまったものではない。》

原発いらない
《ここまでするんだな。。ワザワザ中東に出かけて行って、相手を挑発するような事を言って、これで「人質が殺されました。」などという事になれば、攻撃する大義名分が出来たと喜び勇んで「テロとの戦いだ。これは正当な戦いだ。」っていう流れになるんだね。》

@bcxxx
《日本はもともと中東に沢山金を出してきたわけです。それも、同盟国(宗主国)アメリカと比べると、イスラエル支援には偏らず、地域の信頼を得てきた。安倍はそこに「テロとの戦い」を持ち込んで、軍事的進出と武器輸出のとっかかりにしようと浅はかなことを考えた。その野望はイスラム国に潰された。》

Junji Tano
《「テロに屈するな」って聞こえは良いけどさ、イスラエル行く前に人質の扱い決めてなかったり、国内のテロ対策(原発とか地下鉄とか)やってないって現実どう見るの? 対ISへの支援だってイスラエル噛まさずにやれるでしょ。その辺、感覚おかしいって。》

@mipoko611
《自己責任とか安倍首相に責任はないとか言ってる人たちって、きっかけとなった中東外遊や財政援助が、国際協力や人道支援だと信じてるんだね。海外の報道では「挑発外交」とか「銃と金融セールス」とか言われてるのに。純情なんだねぇ。》

@sforsweep
《金儲けに走って、お取り巻きの企業のみなさんを引き連れたトップセールスをやり、まんまとイスラエルとマケインの思惑にもハメられて、そんな脇の甘さを読まれまくったイスラム国にも待ってましたとばかりの人質カードを切られ、国民の生命と財産を守るどころか危険にさらすような首相は日本に要らぬ。》

makotokasai
《日本人の読解力って凄まじく劣化しているなあ、と思う。要求されているのは人質2人のお金ではない。日本国民の命のお金だ。要求を意訳すると、お前らの馬鹿首相を止めろ。さもないと、お前達はこのテロ地獄に落ちてしまうぞ。その覚悟はあるのか?ってことだと僕は理解した。》

きっこ
《沖縄の辺野古では、今、この瞬間も、安倍政権が国民に対してテロ行為を続けている。》




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