サザン 紅白での歌がネットで反響


2015.1.6
朝日新聞


 31年ぶりにNHK紅白歌合戦に出場したサザンオールスターズ。そこで披露した歌が反響を呼んでいる。どうしてなのか。

■「裸の王様♪」政権を批判?

 昨年の大みそか、ちょびひげを付けた桑田佳祐さんがテレビ画面に映し出された。横浜での年越しライブ会場から中継で登場した桑田さんが歌ったのは「ピースとハイライト」だった。

 世界各国の言葉で「平和」という文字が映し出された映像が流れる中、桑田さんは少しおどけたように歌った。

 ♪都合のいい大義名分(かいしゃく)で
 争いを仕掛けて
 裸の王様が牛耳る世は……狂気

 この「都合のいい大義名分」を、集団的自衛権行使容認のための憲法解釈変更に重ね合わせて聴いた視聴者らがネットで反応した。曲名を「平和(ピース)と極右(ハイライト)」と読み替えたり、「裸の王様」を安倍晋三首相への揶揄(やゆ)と受けとめたり――。

 ツイッターなどにはこの歌の「解釈」を巡って賛否の投稿が相次いだ。

■「素晴らしい」「応援しない」

 「安倍政権の極右旋回へのプロテスト(抗議)と戦争への危惧」「素晴らしい(安倍政権への)カウンターソング」。一方では「今後一切サザンは応援しない」「日本に対するヘイトソング歌う為(ため)に紅白でたわけか」というツイートも。

 伏線もあった。昨年12月28日、安倍首相が昭恵夫人とともに観賞したサザンのライブ。桑田さんは「爆笑アイランド」という曲で歌詞にない「衆院解散なんてむちゃを言う」という一節をアドリブで歌い、首相を驚かせたと報じられ、政権批判だと一部で解された。

 サザンの紅白出場が直前まで決まらなかったことも関係しているようだ。29日のリハーサル段階ではまだサザンの出場は「交渉中」だった。NHKの広報担当は「出演の経緯や選曲については、具体的に申しあげられない」。所属事務所のアミューズも、選曲や今回の反響について「担当者不在のためお答えできない」と話した。

 WOWOWで年越しライブを見ていたという元民主党衆議院議員の井戸正枝さんは「言葉のごく一部をつまみ上げて、自分の主張に合うように加工し、正当性を主張しようとする『狡猾(セコ)さ』」とブログに書き込んだ。歌っている姿を見て「国際情勢を含めて、桑田さんはもっと大きい話をしていると感じた」と話す。

 「ピースとハイライト」の発売は2013年夏。音楽評論家の岡村詩野さんは「桑田さんは、特に食道がんがみつかった10年以降、社会的な問題に強い意識を持つようになったのでは」。

■「今の日本へ 素直な本音」

 ♪知ろうよ 互いのイイところ!!

 「政権批判というよりは、様々な問題を抱えた今の日本に生きる一人の国民としての素直な本音」と岡村さんはみる。「いたずらに深読みして、評価したり、重荷を背負わせたりすると、ウィットと音楽への愚直な愛情が魅力の桑田さんの持ち味が損なわれてしまうかも」と指摘する。

 桑田さん本人はどうか。直接聞くことはできなかったが、この曲について週刊誌「アエラ」(13年8月12―19日号)のインタビューで韓国、中国との関係などを絡めてこう語っていた。

 「平和的に、交渉や外交で、政治家にはうまくやってほしいなと。ねじれちゃったもの、不信に思われてるものとか、誤解されているものを、少しでも解いてほしいな、と思う」「歌を投げかけて、考えてもらって、反応をうかがうのは、いつもなんです。あくまでポップミュージックとして、直截(ちょくせつ)なメッセージより、歌ったほうが届くんじゃないか、広がっていくんじゃないか」

(山田優、斉藤佑介、渡辺洋介)





「ピースとハイライト」自体は、直接的な安倍政権批判の歌ではありません。しかし紅白歌合戦でわざわざちょびひげを付けて登場し(ヒトラーをイメージ)、「ピースとハイライト」を選曲した意図が、安倍政権批判にあることは疑いようがありません。

それが何かいけないことなのでしょうか。ポップスターは政治的な歌を歌ってはいけないとでも。

桑田佳祐が愛するビートルズも、他愛のないラヴソングから政治的な反戦ソングにいたるまで、自分たちがただ歌いたい歌を歌にして歌いました。そこにタブーはありません。

その自由を最大限行使することが、自分たちを支持してくれるファンに対する誠実な態度だと信じていたからです。

安倍政権が統制を強めるNHKの紅白歌合戦の中で、政権批判という国民に与えられた当然の権利を行使したことに大きな意味があるのです。

なぜなら「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって」(日本国憲法第97条)、基本的人権が保障されているからといって、その上で眠りこけていたら、権力は平気でその権利を攻撃してきます。

それに安倍政権批判のパフォーマンスを行うことが、どうして日本に対するヘイトや反日的行為になるのか、まったく意味不明です。桑田は安倍をヘイトしているだけであって日本をヘイトしているわけではありません。

私には無自覚に安倍首相と癒着している歌手たちのほうが、よほど反日的歌手ではないかと思えてしまいます。


じこぼうTwitter(2015.1.1)
《サザンが大晦日ライブで体制批判っぽいことをやったことに関し、「反体制揶揄が全国放送で流れるのは、政府の寛容さの証明」みたいな揶揄をする人がいること自体が、民主主義や自由を自ら勝ち取っていない日本の、自由はお上によって与えられたものという戦後民主主義的な意識を証明しているな。》
アマヤ
《「お上のお慈悲により放送させてやるから有り難く思え」と「お上」とは何の縁もない一般庶民が言うところが、日本の絶望的なところ。》


政権批判という自由を遠慮していたら、いつかその自由がなくたって愕然としても後の祭です。


Android携帯からの投稿