23日のブログで
佐藤優
さんの「TPP」に関する考え方を紹介しました。

その中で佐藤さんは
「TPPの基本的な考え方は自由貿易」
であると述べました。

しかし同じ佐藤さんが、
「その大前提が間違っている」と
週刊誌の連載コラムの中で述べています。



野田佳彦首相は、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加に前向きの姿勢を示している。これに対して、農業団体や保守派の一部が激しく反発している。賛成派、反対派ともに「TPPは自由貿易である」という大前提で議論しているが、筆者はこの大前提が間違っていると考える。

自由貿易とは普遍的な概念だ。本気で自由貿易を推進するならばWTO(世界貿易機関)システムを強化すればよい。アジア太平洋地域という地理的限定で貿易システムを作るという発想は、保護主義に基づく関税同盟に他ならない。

歴史は振り子のような運動を繰り返す。グローバリゼーションの時代は、過去の出来事になった。現在は、国家と資本が一体となり、国外に進出し経済ブロックを形成する帝国主義的傾向が強まっている。ギリシャの国家債務危機でEUは危機的状況に陥っている。しかし、EUはギリシャを追放するのではなく、ユーロの為替ダンピングを行ってEUを生き残らせようとしている。域外からの搾取、収奪を強めることによってEUが生き残ろうとする発想だ。

日本では円高が連日ニュースになっているが、3月11日の東日本大震災による大量破壊と、福島第一原発事故の後遺症で経済が弱っている日本の通貨が高値になるということ自体が奇妙な現象だ。こういう時は問題を分析する切り口を変えると事柄の本質がよく見える。米国がドルの為替ダンピングを行っているのを見ればよい。米国が帝国主義的な近隣窮乏化政策を行うためには、ドル安が不可欠なのである。
(略)

世界の帝国主義的再編の中で、日本には二つのシナリオがあった。第一は、急激に台頭する新興帝国主義国・中国と提携し、東アジア共同体という経済ブロックを形成するというシナリオだ。しかし、中国が航空母艦を建造し、海洋覇権の確立を露骨に追求するようになり、この選択肢はなくなった。

そこで残るのが、TPPに参加し、日米を中心にオーストラリアを加え、アジア太平洋地域に経済ブロックを形成するという第二の発想である。ここで重要なのは、TPPから中国を排除するということだ。日米、米豪は軍事同盟を結んでいる。ここで、日本が武器輸出三原則を緩和すれば、日米のみならず日豪の軍事協力も進み、中国に対する牽制になる。日本がTPPに参加することにより、日米同盟が深化するのだ。

農業分野での米国からの圧力を過度に恐れる必要はない。米国も綿花やサトウキビなどに対しては露骨な保護主義政策をとっている。野田政権が胆力を出して、米国と帝国主義的な取り引き外交をすれば、そこそこの落としどころをつけることができる。

(「週刊現代」11月5日号)




あれあれと思いますが、
佐藤さんの言っていることは
基本的に変わっていません。

アジア太平洋地域という枠内で考えれば
「自由貿易」であっても、
その経済ブロックの枠外に対しては
「保護主義」であるということですね。

いずれにしても
「大国が周辺国から利益を得て繁栄を図る帝国主義的な傾向」が強まっているという佐藤さんの主張にブレはありません。

経済ブロックと日米同盟の深化という「TPP」の本質に日本がどう向き合ったらいいのか。

再び帝国主義化する世界で、日本の外交力が問われています。