パイワン族刺繍工芸「陳媽媽工作室」 | ガイドブックにない台湾を求めて~台湾漫遊日記

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そもそもパイワン族刺繍の「陳利友妹」さんに初めてお会いしたのは、今年2014年3月30日、大阪万博公園にある国立民族博物館で行われた「伝統と創意・台湾における原住民族工芸」という公開シンポジウムの場でした。

パイワン族刺繍の奥深さに触れ、そして眼鏡をかけてスイスイと刺繍を施す「陳媽媽」の職人技に魅せられ、「7月に必ず訪ねて行きます!」と大阪で約束をしたのです。



そんな陳ママの工作室はこんな外観。

知らないと通り過ぎてしまうかも知れません。



いらっしゃいました、この方が陳ママこと、陳利友妹さん。

パイワン族に伝わる古い刺繍法であり、パイワン族において貴族しかこの刺繍を施した服は着ることが出来なかったという「十字繍法」をお母様から受け継ぐ方なのです。

彼女のお母様は、日本統治時代太麻里區長であった頭目の孫娘であったため、この「十字繍法」を受け継いでいました。



まず工作室に入り、迎えてくれるのはこの美しい百歩蛇(ヒャッポダ)たち。

百歩蛇はパイワン族において貴族の祖先であると言われています。なので貴族にしか百歩蛇の図案の服を着ることは許されていませんでした。

パイワン族は階級社会制で、頭目(首長),貴族,勇士,平民という差が古来よりはっきりしていました。



陳ママの作品は服やカバンからアクセサリーまで、多岐に亘っています。


若い頃から洋裁を学び、様々な小物も本当に美しく仕上げていらっしゃいます。



この小物は全て、刺繍を施しているものではなく、パイワン族柄の布を使ったものですので、お手頃価格で売られています。



この辺りはママの力作ですよ。「大王部落」という文字も勿論、刺繍なのです。



そしてこちらのポーチは男性用の貴族のもので、お値段を伺ってみてやはり予想通り、8000台湾ドルと言われて倒れそうになりました。でも欲しかった…。

女性用は丸いんだそうです。いつか8000元握って買いに行ってると思います、私。



そしてママの工房のすぐ下には、息子さんのトンボ玉工房「比亞的草屋」があります。



こちらはとってもおしゃれな内装になっています。カフェも併設されていますよ。



入って右には、ご両親や祖父母の昔の写真を見ることが出来ます。

なるほど、この昔に於いて黒を着ているということは貴族の証しなんだな、とか思いながら見入ってしまいました。



そしてこちらの工房の真ん中にはすごく大きな百歩蛇。

百歩蛇とパイワン族って、切っても切れない結びつきがあり、彼らの伝統建築である石板屋の屋根の伝説にも関係があったりするんですよ。



ママの工房は狭いので、団体さんはこちらへ案内するんだそうです。

なので、ママの作品もここに並んでいるのです。



ちなみに、ママの工房にも息子さんのトンボ玉が並んでいます。



この日はここから山を登って行った金峰郷の嘉蘭村の友達に連れて来てもらい、少し寄っただけだったので、「うちは民宿もあるんだから今度はゆっくり遊びに来てね」と言って見送って下さいました。

作品の撮影は勿論、全て承諾を頂いています。そして、「ブログに書きますよ、いいですか?」というと喜んで下さいました。

陳ママは美しい日本語を話されますので、どうぞ安心して日本語で訪れてみて下さいね。



ちなみに大阪にいらっしゃった時の美しいパイワン族服姿。画質が悪くてごめんなさい。


陳媽媽工作室:台東縣太麻里鄉大王村大王248號

簡単な行き方:台鐵太麻里駅を下車、駅を出てすぐ前の日昇大道を少し下り、最初の十字路「太峰路」を右へ。次の十字路「金萱路」を右へ少しだけ上ると、左側にあります。この道が一番安全です。10分もかからないと思います。