恋愛セラピスト|コンサルタントあづまの サイコロジーな毎日 アメブロ店 -5ページ目

なつをの夏の物語(12)|恋愛ドクターの遺産第10話 記憶のないトラウマを癒す

「では、なつをさん。今から、右手の上のそのエネルギーを持ったまま、ビデオのスクリーンの中の世界、過去の世界に入っていきます。湯水ちゃんは連れて行きますか?」
「はい。お願いしたいです。」
「では、湯水ちゃんも一緒に、過去の世界に入っていきます。画面を通ってすぅーっと入っていったとイメージして下さい。そして、ひとりで心細かった、赤ちゃんのなつをちゃんの目の前に、ストンと降り立って下さい。」
「はい。」
「なつをさん、空いている方の手で、赤ん坊の自分を、そっとなでてあげてください。」
「はい。やっています。」そう答えると、なつをの目から大粒の涙がぽろぽろっとこぼれた。
「そして、右手に乗せて持ってきた、そのエネルギーを、赤ん坊の自分にかぶせるようにして、」そう言いながらドクターは、何かに布をかぶせるようなジェスチャーをした。「包んであげましょう。」
なつをもドクターと同じように、何かに布をかぶせるようなしぐさをした。その瞬間、なつをの表情の険しさが一気に消えて、穏やかで、優しく、幸せそうなほほえみに変わったのが分かった。涙がひと筋、なつをのほおをつたった。
ドクターはそれを見て、癒しが進んでいると判断したのか、安心した表情になった。「なつをさん、今どんな感じですか?」
「はい、何だか急に力が抜けたような。赤ん坊の自分は寝てしまいました。」
「では、また会いたいときはこうしていつでも会えますから、今は一旦、元の世界に戻ってきましょう。」
「はい。」

こうして、ワークは終わった。
「確認をしたいのですが。」ドクターは言った。「最初に思い出したときのように、ふつうに、赤ん坊の時のことを思いだしてみて下さい。」
「はい。」なつをは天井の方を見ながら、思い出しているようだった。
「いま、どんな感覚になっていますか?」
「あの。最初に思い出したときは、本当に、怖くて、吐き気もしていて、ひどい気持ち、得体が知れなくて触れたくない感じだったんですが、今は全然平気になりました。むしろ、恭子と湯水さん、」
言いかけたところで「湯水ちゃんでいいですよ。」湯水ちゃんが言葉を挟んだ。
「湯水ちゃんからもらった、温かくてほわほわしたエネルギーに包まれている感じになっています。もう怖くはないです。」
「それは良かった。」ドクターも安心したのだろう。優しい調子で言った。

その後、ドクターからの説明があったのだが、それは以下のようなことだった。
なつをは、赤ん坊の頃に助けを求めても誰も来てくれなくて、怖い思いをした。そのことで、他人に助けを求めることと、この恐怖心が結びついてしまい、助けを求めることへの心理的抵抗が、人一倍高くなった。
一方、このような怖い感覚が、なつをが世界や他人を見るときの基調、ベースとなってしまい、相手に対して過度の警戒心を抱くような、他人との関わり方・・・平たく言えば性格・・・を作る元となった。
その後、両親も温かい人だったし、ある程度友達にも恵まれて、普通に大人になったのだが、このような乳児期のトラウマを持っているために、根っこの部分でどうしても他人に警戒する心が抜けず、他人の顔色をうかがうようなクセがついた。大人になると、トラウマ的なものを持っていても、冷静なときはある程度はその影響から離れて、合理的に、冷静に行動できることが多いものだが、恋愛のように心理的距離が近く、感情も揺さぶられやすい人間関係においては、小さい頃のクセが出やすいのだ。

ここからは、ドクターが既に話したこととつながってくる。
相手に過剰に気を使う、という関わり方をするということは、【女性から気を遣われたい】男性に気に入られやすい状況を作り出す。オレサマタイプ・暴君タイプが居着いてしまう典型パターンだ。ここに、他人に助けを求めない、という行動パターンが重なって、ますます、恋愛でいい男性を引き寄せることが、できなくなっていた。と、こういうわけだ。もちろん、全てが赤ん坊の時のトラウマが原因、というのは言い過ぎだ。それが重要なきっかけとなったのは事実だが、気づいて行動を直すチャンスはたくさんあったはずなのだ。といっても、中々自分では気づきにくいもの。というわけで、なつをは行動のクセを直すことなく大人になり、そのまま恋愛に突入してしまったので、うまくいかなくなった、というわけだ。

こうして、この回のセッションは終わった(といっても、これは2年前の話だ)。

(つづく)

この物語はまぐまぐから配信の無料メールマガジン「女と男の心のヘルスー癒しの心理学」で(少し)先行して配信しています。また独自配信(無料)の「ココヘル+」では物語の裏側、心理学的側面を解説しています。合わせて御覧頂くと、より理解が深まります。登録はいずれもこちらのページから行えます。(無料メルマガですので、すでにお支払いになっている、インターネット接続料金・通信料以外の料金は一切かかりません。)

女と男の心のヘルス(ココヘル)
心のコンサルタント|恋愛セラピスト あづまやすしの
個人セッション: http://bit.ly/2b8aThM
セミナー:    http://bit.ly/nvKmNj
メールマガジン: http://bit.ly/mtvxYW
自習型教材:   http://bit.ly/lZp3b0




この記事の続きはこちら

なつをの夏の物語(11)|恋愛ドクターの遺産第10話 記憶のないトラウマを癒す

「先ほど出てきた体の感じは、泣いて、吐いて、寝てしまって、という段階の、どの段階だとするとしっくり来るような気がしますか?」
なつをは呼吸が乱れ始めた。でも必死で自分を保ちながら、ドクターの質問に答えた。「ええと、部屋に誰もいなくて、とても不安になる段階と、それで激しく泣いて、吐いて、混乱している感じと、両方が混ざっているかな、と思います。でももちろん、ハッキリと覚えていないので、当てはめてみるなら、そうかも、という感じですけど・・・」
「いやいや、それだけ答えられたら上出来ですよ。なるほど、なつをさん。やはりこの辺が、あの『得体の知れない感じ』の原体験と言えそうです。逆に言うと、この原体験をしっかり癒してあげれば、なつをさんの問題は大きく解決に向かうと期待できるわけです。」
「はい。お願いします・・・でも、どうすれば・・・」
「大丈夫ですよ。具体的なやり方は任せてください。」そして、ドクターはこれから行うワークについて簡単な説明を始めた。当時のことをビデオのスクリーンの向こう側の出来事として思い出して、同時に、今元気の元になっていることを思いだして手に載せる。そして、その元気を持って、ビデオの向こう側の世界に行って、当時の自分にその元気をあげる、とざっくり言うとそういう感じのことをする、という説明だった。

「さて。」ドクターが姿勢を正してからそう言った。「今から当時の出来事を癒すワークを行います。」
「はい。お願いします。」なつをは少し不安そうだ。
「では、最近の生活の中で、これをしていると元気が出る、ここにいると安心する、など、なつをさんにとってプラスのエネルギーになることを何か挙げてみて下さい。」
「ええと・・・最近悩みを友達の恭子に聞いてもらうことがよくあったのですが、恭子とごはんしたりお茶したりしている時間は、とても安心します。」
「なるほど。では、そのお店を想像して、隣に恭子さんがいるところを想像して、どんな気持ちになるか、思い浮かべて下さい。」
「安心して、温かい気持ちです。」
「では、その温かい気持ちのエネルギーを、こうして」ドクターはそう言いながら自身の右手を胸の前に出した。「胸の前に右手を出して、その上に載せたとイメージしてみて下さい。」
「はい。」
「手の上に載せたエネルギーに色や形があるとしたら、どんなものですか?」
「ピンク色で・・・少しサーモンピンクかな・・・ほわほわして、丸い感じです。」
「ピンク色でほわほわしている・・・温度はありますか?」
「温度は、温かいです。温かめの人肌みたいな感じです。」
「これは、いい感じのものですね?」
「はい。」

「では今度は、右手はそのまま持っていてくださいね、そして、目の前にビデオのスクリーンがあるとイメージして下さい。」
「はい。」
「そのスクリーンの中に、先ほど思い出した、0歳か1歳ぐらいの頃の、あの部屋があるとイメージして下さい。」
「はい。」
「そして、その部屋の中には、その当時のなつをちゃんがいます。」
ここで、なつをの表情が曇った。眉間にしわが寄っている。
「この、スクリーンに、スピーカーが付いていると想像してみて下さい。そのスピーカーから、当時言えなかった、当時のなつをちゃんの心の叫びが、言葉になって聞こえてくるとしたら、どんな言葉になって聞こえてくるか、今代わりに表現してあげてください。」
「・・・怖い。」なつをはか細いかすれ声でそう言った。
「・・・怖い。」ドクターが繰り返す。「他にはありますか?」
しばらく沈黙があったあと、急に大きな声でなつをは言った。「たすけて!」
「たすけて!!!」ドクターはなつをより大きな声で繰り返した。
「助けて!助けて!助けて!」なつをは泣き出した。
「なつをさん、右手に持ったそのエネルギーをしっかり意識してください。」ドクターが落ち着いた調子で指示を出した。
「湯水ちゃん、なつをさんの後ろについて、肩と背中に触れてあげてください。」
「はい。」湯水ちゃんがなつをのそばによって、肩と背中に手を当てた。
なつをは少し落ち居着いた様子だ。
「では、なつをさん。今から、右手の上のそのエネルギーを持ったまま、ビデオのスクリーンの中の世界、過去の世界に入っていきます。湯水ちゃんは連れて行きますか?」
「はい。お願いしたいです。」

(つづく)

この物語はまぐまぐから配信の無料メールマガジン「女と男の心のヘルスー癒しの心理学」で(少し)先行して配信しています。また独自配信(無料)の「ココヘル+」では物語の裏側、心理学的側面を解説しています。合わせて御覧頂くと、より理解が深まります。登録はいずれもこちらのページから行えます。(無料メルマガですので、すでにお支払いになっている、インターネット接続料金・通信料以外の料金は一切かかりません。)

女と男の心のヘルス(ココヘル)
心のコンサルタント|恋愛セラピスト あづまやすしの
個人セッション: http://bit.ly/2b8aThM
セミナー:    http://bit.ly/nvKmNj
メールマガジン: http://bit.ly/mtvxYW
自習型教材:   http://bit.ly/lZp3b0




この記事の続きはこちら

なつをの夏の物語(10)|恋愛ドクターの遺産第10話 記憶のないトラウマを癒す

セッションが再開して、ドクターがまず方針を述べた。
「なつをさん。今私が考えている方針を説明させて下さいね。」
「はい、先生。お願いします。」
「実は、なつをさんがまだ物心つく前の時期、たとえば2歳とか、そんな時期に作られたトラウマが、現在の人間関係に影響していると想定しています。」
「えっ・・・そうなんですか・・・でも、そう言われてもよく分かりません。」
「そうですよね。人間が出来事を記憶できるのは4歳ぐらいからと言われています。ですから、それ以前の出来事は、いわゆる『記憶』には残らないのです。」ドクターは理路整然と説明した。出来事の記憶とは「エピソード記憶」とも呼ばれ、日記に書くような何が起きて、次に何が起きて、という物事の展開をストーリーにして覚えている記憶のことだ。もっと小さな頃の記憶は、たとえば、ある場面の映像だけが記憶に残っていて、但しそれが何が起きたときの記憶なのかは覚えていない、といった形では、残ることもある。そして、ドクターによると一番大事なのは、出来事の記憶が残らないような時期のことであっても、感情の記憶は残るというポイントだ。だから、その時期に怖い思いをした経験が、意識的には何の出来事かは覚えていないけれど、なぜか心の奥底にある恐怖心、という形で心に傷跡を残すことはあるわけだ。ドクターは話を続けている。「出来事の記憶は残らなくても、感情の記憶が残っていることは多いのです。そしてそれを頼りに、癒すべき心の奥底の感情を見つけ出すことは、十分に可能です。」
「はい。」なつをは先ほどの「得体の知れない」感情を感じたことと、いまドクターに言われた「記憶のない時期の体験」を扱う話とで、とても不安そうな顔をしている。
「なつをさん、大丈夫ですよ。任せて下さい。取り組んだ分だけ、確実に気持ちが軽くなりますから。」ドクターは落ち着いた調子でそう言った。
(こんなとき、先生はホント頼りになるなぁ)湯水ちゃんはそう思った。

「では、始めていきたいと思います。」ドクターはそう言って深呼吸をした。
なつをもつられて深呼吸をした。
「まず、先ほど感じた、『得体の知れない感じ』をもう一度感じてみて下さい。」
「はい。」なつをはそう言って目を閉じ、しばらく自分の内側を感じている様子だったが、やがて、静かにうなずいた。
「では、ここからは、事実でなくて構いません。もし、なつをさんが、1歳頃、あるいは2歳頃に、そんな感情を感じるようなできごとを経験していたとしたら、それはどんな出来事でしたか?勝手に作ってみて下さい。」
その瞬間、なつをは急に目を大きく見開き、はっとした表情になった。そして、何か言葉を探しているようだった。
「何でもいいから、言葉にしていきましょう。」ドクターは促した。「何か映像や、記憶の断片みたいなものが出てきたのなら、まずそれを言葉にしてみてください。」
「はい。薄暗い部屋です・・・ものすごく怖い・・・。」
「誰かいますか?」
「誰もいません。」
「体の感じから、今自分が何歳ぐらいか分かりますか?」
「ベッドに寝ている感じです。まだ1歳か、0歳の頃かもしれません。あの・・・思いだしたことがあるんですけど。」
「では、一旦深呼吸してみましょう。」
ドクターとなつをは一緒に深呼吸をした。
「その、思い出したことを教えてください。」ドクターは促した。
「はい、これは覚えているというよりは両親から聞いた話なのですが、私を寝かせていた部屋が、両親が生活している居間や食堂から少し遠くて、私の泣き声が聞こえづらくて、気づいたときには私が激しく泣いたあとで、吐いて、そのまま寝てしまっていた、ということが何度かあったそうです。」
「思い出した部屋の空気感は、その部屋に似ていますか?」
「はい。細部はもちろん覚えていないのですが、空気感は似ています。」
「先ほど出てきた体の感じは、泣いて、吐いて、寝てしまって、という段階の、どの段階だとするとしっくり来るような気がしますか?」
なつをは呼吸が乱れ始めた。でも必死で自分を保ちながら、ドクターの質問に答えた。「ええと、部屋に誰もいなくて、とても不安になる段階と、それで激しく泣いて、吐いて、混乱している感じと、両方が混ざっているかな、と思います。でももちろん、ハッキリと覚えていないので、当てはめてみるなら、そうかも、という感じですけど・・・」
「いやいや、それだけ答えられたら上出来ですよ。なるほど、なつをさん。やはりこの辺が、あの『得体の知れない感じ』の原体験と言えそうです。逆に言うと、この原体験をしっかり癒してあげれば、なつをさんの問題は大きく解決に向かうと期待できるわけです。」
「はい。お願いします・・・でも、どうすれば・・・」




引用元:なつをの夏の物語(10)|恋愛ドクターの遺産第10話 記憶の・・・