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恋愛小説『Lover's key』

#21-1 リスク(teru's side)





「ふーざーけーんーーーー、なっ!!!!」


携帯を切ると、オレはブチ切れてそんなことを口走りながらベッドの上に携帯を投げつけた。


最近、モノを投げつけること多くなってるよな。そんだけ感情の起伏が激しくなってるのは自分でも大いに自覚してる。


センセと会話中、冷静を装うのでやっとだったよ。



(やっぱ、昨日は由愛に会ってたんだ。。。。)



オレは自室で呆然と立ち尽くしたままベッドに転がった携帯を見つめた。それと同時に昨日の夜センセについていって辿り着いたマンションを思い出す。


何階かは分かんなかったけど、やっぱ由愛ん家だったんだよな…。


あんなに知りたかった家が分かったことは素直に嬉しいんだけど、オレの胸中はかなり複雑だ。手放しで喜べない。


二人の絆的なものを。

昨日の様子だけで痛感しちゃったんだ。


あの時間に堂々と女の家に行くセンセはさ。やっぱ大人だよ。手馴れた感じがムカツクし。



あーーーーっ!……くそっ。



しかもさ。センセが朝帰りして、朝寝たってことは。。。


それまでナニしてたんだよってハナシだよな。


イヤな妄想はしたくねーんだよっ。考えただけでイライラする。。。


こんな気持ちでセンセに会ったら、、、。オレ、何するかわかんねぇから今日はカテキョなんて気分にはなれなかった。




ハァ…。なんでこんなにイヤな気分なんだよ。。。




好きになるってさ。

こんな嫉妬まみれのドロドロな感情も知らなきゃなんねーのかよっ。





 オレはドサリと勢いよくベッドに腰掛けると、リモコンでテレビの電源を入れた。


ベッドの上に転がってるビデオのリモコンを拾い上げると、再生ボタンを押す。


TVに映し出されたのは、子供向け番組の『いっしょにうたおう!』だ。


昨日、寝際にネットで調べたら土曜の朝も放送されることを知って予約録画しておいたんだ。起きてから、もう何度も見てる。


笑顔で歌って踊るおねえさんは、どう見ても由愛に似てて。写真を持ってないオレにとっては唯一由愛を感じられる時間だった。




でもさ。

これじゃぁ空しいんだよ。。。


オレ、何やってんだよ?って。




おねえさんと由愛を重ねて見てるオレ、正直キモイ。達哉が唖然とするのもわかる。


こんなの絶対いつものオレじゃねぇよな……。


でも、そんな感情とは裏腹に見るのを止められない自分がいる。


きっと、本物に会えないからだよなぁ。。。なんつーか。多分、欲求不満?


いやいや、、、えちな意味じゃなくてさ。


実物に会えないのが辛過ぎるんだよ。。。


だから、さっきセンセとの会話中に思いついちゃったんだ。




オレから直接連絡しないで、由愛と会う唯一の方法を。




センセを介せばいいんだってこと。





一番使いたくない手だったけど、他人に由愛を重ねて腐ってく自分がイヤだった。


だったら、リスクを冒してでも、由愛に会ってやろーじゃん??


センセに由愛とのことをバラすつもりなんかじゃなくて、純粋にただ会って話して、とりあえず様子を伺いたいだけなんだ。


・・・どんな反応で由愛がオレのことを見るか。


“あんなこと”があった後だし。今までどおりオレと話してくれるのか、それとも避けるのか。反応を確かめたい。


あと、2人がどんな感じで恋人同士なのかも、くやしーけどこの目でしっかり見てやるよ。


臨機応変な態度は、、、多分できると思う。でも、思いのほか見せ付けられたら、、、どうすんだ?オレ。。。


いつものオレは本当は冷静なのに。由愛が絡むとダメなんだよ。超感情的になりそうだ。



……。




オレがこんなふうに想ってること。もっと由愛にぶつけたい。


もっともっと。。。由愛に会って、笑って、触れていたいんだ。



ベッドに腰掛けたまま、自分の右の手のひらをじっと見てからぎゅっと拳を作ってみた。





手ごたえが無い。






何も手の中に入ってない。入ってるのは空気だけだ。





今の状態はそんな感じ。空気を掴んでるみたいに、まだ全然手応えがなくて。


少しでもいいから手応えが欲しいよ……。




手応えを感じられたら、、、。


迷わず、一気に掻っ攫うのに。







なぁ、由愛。


オレを好きになれよ。


好きに、、、なってくれよ。。。





 


 ぼーっとそんなことを考えながら、その日、『いっしょにうたおう!』のビデオはエンドレスで。


常にオレの部屋で流れていた。





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