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恋愛小説『Lover's key』

#12-4 心の鍵(yua's side)






熱い──。



鼓動も、吐息も、唇も、手も、何もかも──。



私に触れてるものすべてが熱く感じる。



まるで“好き”という刻印を押されているみたいに。頭の芯までクラっとするような濃厚なキスからは、真剣な気持ちが伝わってくる。



あまりにも伝わりすぎて…。私はテルくんを突き放すこともできなかった。





どうしてテルくんにキスを許してるの?



テルくんはなんでこんなに真っ直ぐに私を好きでいてくれるの?





こんな風に熱い気持ちが伝わってくるキスなんて……。

私、進一からですらされたことないんだよ……?





そう考えたら涙が出そうになる。でもそれは必死に堪えていた。






────ゆっくりと唇が離れた後。



私は放心状態だった。現状は完全に私の許容範囲を超えていて。



混乱して、その場で急に体の力が抜け、ガクンと膝が折れてへたりそうになる私を。テルくんが「大丈夫か?」と、即座に受け止めてくれた。



私の腰を抱きかかえながら、テルくんは私の髪を優しく撫でる。



でも。



少し気分が落ち着いて、私が一人で立てるようになるとすぐに離れ、こう告げた。







「オレさ、、、もう、センパイに連絡しないから」







「……えっ?」



(……何?どういうこと?)



言ってる意味を理解しようとしたコンマ数秒の間に。







「バイバイ……」







突然。別れを告げられて──。



テルくんは私に背を向けると、一度も振り返ることなく足早にその場を去って行った。











(どう……して………?)





考えても、考えても──。



全く理解できなくて。私はその場に呆然と立ち尽くすことしかできない。





連絡しないって何……?バイバイって何……??



どういう意味なんだろう……。私を、諦めたってこと……?


あっけない幕切れは私をかなり混乱させた。突然すぎて、頭の回転が追いつかない。




「…ずるいよ。テルくん……」



私は、自分の唇に手をあてて小さく呟いた。





……私。



もうテルくんに会わないって決めたんだよ……?



マフラーだけ受け取ったら、もう繋がりは無しにしようと思ってたんだよ……?





それなのに、、、なんで“あんなキス”するの?




バイバイするなら、、、“あんなキス”しないでよ……。






心の中に強引なくらい真っ直ぐに入ってきたと思ったら、掻き乱してスルリと抜けて。



テルくんがわからない。



でも、同時に自分の気持ちもわからなくなった。






自分は……。

本当はテルくんみたいに真っ直ぐに自分を想ってくれる人を望んでた……?






進一では埋められない、私の心の隙間。



一緒にいてもいつも不安ばかり。本当に愛されてるのかさえ分からなくて。



でもテルくんは。



本気の気持ちが溢れてて、素直に感情をぶつけてくる。



私には無いものだから、、、。

それにどんどん惹かれて、触れてみたくなってしまうんだ──。






何気なく目に入った公園の時計は、6時半をさしていた。



ここに着いてからまだ30分も経ってないのに……。



たったそれだけの間に、私は。






テルくんに完全に心を奪われてしまった。





───「いきなり好きになるなんてどうかしてる」



自分でさっき言い放った言葉なのに……どうかしてるのは私のほうだ。



好きになるのに時間は全然関係ないんだね……。






進一じゃ開けられなかった私の本当の心の鍵。



テルくんなら完全に開けてくれる予感がする。



…それなら。



進一と別れてテルくんと一緒にいたほうがいいの?



ベンチに腰掛けて、自問自答を何度となく繰り返してみても、『それはダメだ』という結論に達してしまう。



自分の身勝手な気持ちだけを押し通せるはずがない……。






どうしよう…。




どうしたらいい……?






これはしてはいけない恋。




そして、きっと叶わない恋……。






そう思ったら胸がぎゅうっと苦しくなって色んな感情が込み上げてきて──。



私の目から、とめどなく大粒の涙が溢れた。






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