※初めての方は、プロローグ からお読みください。
恋愛小説『Lover's key』
#4-1 事故の記憶(shinichi's side)
輝の家から由愛との待ち合わせ場所はそんなに遠く無い。
まだ時間があるからのんびり歩いていこうと思った。
その間、また物思いにふける。
輝に会うと、どうしても昔を思い出してしまうんだ。
俺が一生忘れられない前の恋人との出来事を──。
*******
芹沢里香(せりざわ りか)との出会いは高校1年の時だった。
同じクラスで、男女共にとても人気があった里香。
しっかりもので、面倒見がいいせいか、いつもまわりに友達がいた。笑顔がいいと思っていたのは多分俺だけじゃないと思う。
つきあうきっかけは、俺からの告白。
まさかOKがもらえるとは思ってなかったからかなり嬉しかったのを覚えている。
それからは、もう学年公認の仲だった。
成績が似ていた俺たちは、同じ大学に行くことを目標にしていて。
切磋琢磨とはこういうことをいうんだと実感するほど、お互いがお互いを刺激しあっていた。
そして──。
念願のK大に合格。もちろん里香も一緒だ。
俺は、自宅から大学は別に遠くもなかったのに、一人暮らしをさせてもらうことになった。
仕送りは最低限で、あとは全て自分でやってみろと親に放り出されたかたちだったが、それでも初めての一人暮らしは嬉しくて。
里香もよく俺の部屋に来て、自炊や掃除の手伝いとか色々世話を焼いてくれていた。
この頃はこれから始まる新しい生活に大きな期待を膨らませていたんだ。
不安なことも悲しいことも、負の要素は何もない・・・
はずだったのに。
入学式も無事終わり、新しい生活にも慣れ始めた6月の第4土曜日。
強烈な出来事が起こってしまった。