※初めての方は、プロローグ からお読みください。
恋愛小説『Lover's key』
#1-1 2人の出会い(yua's side)
「由愛(ゆあ)、待たせてごめん!!」
息を切らしながら走ってきた進一(しんいち)に、私は文句も言えなかった。
だって、結構真剣に走ってきた感じするもん・・・。あの息の上がり方ハンパじゃない。
「平気だよ。ここ、風が気持ちよくて待ってるの全然苦じゃなかったし」
・・・なんて。ほどよくこんな風に言ってみた。
ホントは少し寒かったんだけど・・・。
「ふぅ・・・」
進一は一息ついてから私の頭をポンポンと撫でた。
「・・・ありがと」
そう言って、ニコっと笑う進一にちょっとキュンとする。
「でもどうしたの??携帯も繋がらないし心配したよ」
進一は早めに待ち合わせに来るタイプじゃない。いつもギリギリ。
少しの遅刻はいつものことだけど、今回は携帯も繋がらないし大幅に遅れたので心配した。
「ごめん。今日、カテキョの日だったろ??時間結構オーバーして・・・しかも携帯充電切れてたから思いっきり走ってきた」
・・・そう。
私の彼、櫻井進一(さくらい しんいち)は、社会人だけど父親からたのまれて、父親の友人の息子の家庭教師をしている。
K大卒で、今は大手メーカーの開発職に就いていて、エリートまっしぐらの人生。
見た目もイケてて、ホント、言うことない。
なんでこんな優秀でカッコイイ人が私の彼氏なんだろう??
なんて・・・正直たまに思う。
───出会いは、約2年半前のバイト先。
私は映画が好きで、その頃バイトを始めるのに一駅先のレンタル屋を選んだ。
「野崎由愛(のざき ゆあ)です。今日から宜しくお願いします」
バイトの初日、ちょっと緊張しつつ私は頭を下げた。
その頭の先にはバイトの先輩たちが居て。
一人ずつ軽く自己紹介され、最後が進一だった。
「はじめまして。櫻井進一(さくらい しんいち)です」
ちょうど同じ時間帯にバイトに入っていた大学3年生の進一。私はその時大学1年生だったから、2つ上の先輩。
進一に対する第一印象は、カッコよくてセンスのいいメガネがとても似合うヒトだな・・・と。
そして、・・・第二印象にはもう好きになりかけていた。
ちょっとヒトと違うオーラを放っていて、一見近づきがたいけど、ふっとした笑顔に救われるというか。
クールなヒトなの??それとも優しいヒト??まるで2面性があるようなそんな印象。
仕事は進一に教わることが多くて、上がる時間も同じだったから一緒に帰ったり。
私はバイトに行くのがとにかく楽しかった。