録画していたワイドショーは、あんまり堂本光一君の「endless SHOCK」が取り上げられていませんでした。
残念……。
いつもなら、先輩が「今朝、光一映ってたね~!」って言ってくれたのになぁ。
アタシは朝にテレビを観ないので、そういうときは決まって先輩に「そうなんですか! 今日は賭けで○チャンネルを録画してきたんですけど、どこが一番映ってました?」なんて訊いてました。
なのに……今日はとても寂しい朝でした。
これからずっとこうなのかと思うと、なんだかやり切れません。
昨日の「新・堂本兄弟」で披露された“コントのようなおひげ”の堂本剛君も、先輩が観ることはないんだなぁと……。
先輩が亡くなって 5日経ちましたが、まだ何をしていても、先輩のことばかり考えてしまいます。
こんなんじゃダメだと思うものの、うまく気持ちが切り替えられません。
今日は、お母様と、付き添いでいとこの方が会社にお見えになりました。
「長い間、お世話になりました」
と、菓子折を持ってきてくださって……。
それだけで、グッときてしまいました。
上司がお母様を先輩の席に案内すると、お母様はその机を愛おしそうになでておられました。
「こんないい場所で仕事させてもらえて、○○ちゃん(先輩のこと)は幸せやったねぇ。ありがとうございました。ホントにありがとうございました」
そう言って頭を何度も何度も下げられるお母様。
それがあまりにせつなくて、いたたまれなくなりました。
お母様といとこの方が帰られたあと、先輩の机の上に、お花を飾りました。
白を基調に、薄い青やピンクの花を混ぜてもらいました。
机はもうしばらく、触らずに置いておこうということになりました。
ホワイトボードに書いた名前も、4月に新入社員が入ってくるまで、そのままにしておこうと。
あまりに突然のことだったので、部内の誰もが、気持ちを切り替えられずにいるのです。
一昨日、バレンタインのチョコレート を持って、恋人に会いに行きました。
お通夜、葬儀、告別式を無事に終え、また昼からチョコづくり をしたというのもあり、ずいぶんと心は落ち着いていました。
……いや、つもりでした。
ですが、彼にチョコを渡し、ベッドに腰掛けてブーツを脱いでいるときに、背後から、「大変やったな」と声をかけられたのです。
その言葉に、もうダメでした。
「ゴメンね、あんなメールしちゃって」
彼に抱きしめられると、ダムが決壊……。
堪えようと思っても、次から次に涙があふれ出してきました。
「ゴメン……なんかアカンわ……」
アタシが涙声でそう言うと、
「そりゃそうやわ」
と、頭をなでてくれる彼。
実は、彼の前で泣くのは初めてでした。
付き合って8年、彼との間には幸せなことしかなかったので、涙とは縁がなかったのです。
怒りとも縁がないけれど。
だから、涙が止まらない自分に戸惑ってしまいました。
どうすればいいのかわからなくなってしまいました。
必死で抑えようと、肩を震わせるアタシの背中を、彼の手がやさしくトントンと叩いていました。
「アカン、こんなんじゃアカンね……」
アタシが頑張って笑顔をつくると、
「しゃあないよ、今は」
彼はそう言って、手に力をこめてギュッとしてくれたのでした。
その後、アタシを元気づけるために、いろいろな話をしてくれて。
「メルヘンな話は好きじゃないけれど、天国っていうのがあるとしたら、こっちで苦しんだぶん、きっと身も軽くなって、向こうでは楽になってるよ」
「これからはいつでも、先輩が見ててくれるよ」
そんな、らしくないことも言ってくれました。
彼のやさしさに、また泣いてしまいました。
翌朝、バイバイする前にハグをし、
「会えてよかった……」
と、心からの想いを伝えました。
バレンタインが後押ししてくれた面もあったのかもしれません。
彼は、
「つらくなったら、またメールして」
と、頭をポンポンとなでてくれました。
帰宅後、
“昨夜は情緒不安定でゴメンね すごく落ち着けました。ホントありがとう。また迷惑かけることあるかもしれんけど、頼りにしてます”
と、メール。
すると彼からは、
“しばらくはつらいかもしれんけど頑張れ 応援してるよ またしんどいときとかはいつでもしてな”
と、返ってきました。
つらいときに支えてくれる人がいるというのは、すごく幸せなこと。
先輩の死を通じ、あらためてそう強く思うとともに、アタシの中の、彼の存在の大きさを実感したのでした。