「第2回カラオケ大会」ということで、土曜日は朝から晩まで友達と遊んでいた。
フリータイムで8時間。
先月、「第1回~」
をやったとき、「2人で8時間歌いっぱなしなんて若いこと、きっと最初で最後の体験だろうな」なんて思っていたのに、ひと月ちょっとであっけなく“最後”ではなくなった。
しかも、すでに来月、「第3回~」を決行することが決まっているし(笑)
それにしても、8時間かけて、デンモクの「りれき100」をほとんど光一君とKinKiの曲で埋めてしまったというのに、まだまだ全部は歌いきれてないのがすごい……。
KinKi全曲を制覇するには何時間必要なんやろう??
カラオケの後、お洒落な店でディナーを楽しみ、さて帰ろうと車に乗り込んだとき、携帯が鳴った。
2月に機種変更をしてから、まだ個別の着信音を設定していないため、開けないと誰からなのかがわからない。
でも、アタシに電話をかけてくる人は1人しかいない。
機種変更して以来、アタシの携帯の着歴には1人の名前しかないのだ。
「もしもし」
「もしもし。今、大丈夫?」
「……うん、大丈夫」
助手席にいる友達が気になり、迷ったものの、彼との電話はそんなに長くならないので、まぁいいかと思った。
「家?」
「ううん、外」
「外なん? 大丈夫なん?」
「う~ん……じゃあ、もうちょっと後のほうがいいかな~。もうすぐ家に帰るねん」
「わかった。じゃあまた電話するわ」
「うん、ごめんな。ありがとう」
結局、彼の気遣いのおかげで、友達に迷惑をかけることは避けられた。
仕事でもプライベートでもそうだけど、嫌われたくない、期待を裏切りたくない、がっかりさせたくない、そんな気持ちが強すぎて、なんでもかんでも「いいよ」と言ってしまうアタシは、時に、第三者にかなり迷惑をかけてしまうことがある。
もっとしっかりと、自分の中に優先順位の意識を持って行動しなくては、と痛感した。
後でもう一度彼がかけてくれた電話で、今日の仕事終わり、会う約束をした。
ちょうど1カ月ぶりのデート。
アタシはひと月前の出来事を思い出して、顔がカッと熱くなるのを感じた。
その日は珍しく、彼が2度、求めてきた。
1度目を終えて、少し眠った後、再び……。
数十分ほど前に快感を覚えたばかりの身体は、かなり感じやすくなっている。
たいして特別なことをされたわけでもないのに、すぐに受け入れ態勢十分な状態になってしまった。
2度目の彼は、1度目よりも激しかった。
そして、2度目のアタシも、1度目よりも激しく感じた。
果てた後、アタシは、ベッドがあまりにぐしょぐしょなことに驚き、同時にものすごく恥ずかしくなった。
いつもは、濡れたとしても小範囲。
なのにこの日は、背中部分までもがぐっしょりだったのだ。
彼がシャワーを浴びに行っている隙に、身体1つ分横にズレてみる。
しかしちっとも乾いた面には到達しない。
縦方向にも横方向にも、相当、広範囲に濡れているようだった。
汗?
確かに激しかったしなぁ。
でもやっぱり……アレなの??
考えれば考えるほど、恥ずかしくなる。
そんなことをしているうちに、彼が戻ってきてしまった。
いつもは、彼がシャワーを浴びている間にバスローブを着用し、準備万端にしておくのだけど、その日は間に合わなかった。
慌てて羽織ろうとするものの、薄暗いことも手伝って、どこがどうなっているのかわからなくなってしまう。
「あぁもう、裏表がわからへん!!」
思わず叫ぶ。
すると彼は、笑いながら、
「ゆっくりでいいよ、時間はあるし。なんならそのまま行ってもいいよ」
と言った。
「え?」
「大丈夫、見いひんから。見たいけど……って嘘、嘘(笑)」
完全にからかわれている。
「もう、バカ」なんて、冗談っぽく返せたならよかったんだろうけど、そんな余裕はなかった。
彼と視線を合わせられないまま曖昧に笑い、ようやく見つかった袖に腕を通して、シャワールームに駆け込んだ。
「見たいけど……」
彼は、あんまりそういう大胆な発言はしない。
まぁだから、柄にもないことを言ってしまったと感じ、「嘘、嘘」と付け加えたのかもしれないけど。
アブノーマルなこともしないし、アタシにフェ○さえ求めない。
会ってまずやらないと落ち着けないというぐらいだから、性欲は人一倍あるんだろうし、淡白ってわけでもないんだろうけど、アタシにいろいろと要求してはこない。
そういう人は初めてだった。
とはいえ、アタシは経験豊富なほうではないから、資料は乏しいけれど。。。
今までの人には必ずフェ○を求められた。
中には、アタシが自分で慰めるところを見たいという人もいた。
(断固拒否したけど)
車の中、湯船の中、ソファの上、どれも比較的ありふれたポイントだけど、彼とだけはない。
それから、屋外でのキスや抱擁も……。
だけど、ちっとも物足りなくない。
むしろ、彼との情事はいつも満たされた気持ちになる。
やさしさを感じる。
愛を感じる。
セックスというものが、快楽を感じるものである前に愛情表現であることを、実感させてくれる。
しかしそんなわけで、彼の前だとウブすぎるアタシは、珍しく少し大胆なことを言われたりされたりすると、ドキドキが止まらなくなってしまうのだ。
ときどき自分でも、「高校生じゃあるまいし……」と思ってしまう。
さぁ、今夜の彼とのデートは、どんなふうになるのかな。
14時間後はきっと、ベッドの上にいる。
ドキドキを味わいながら……。