「リバース」第10回最終回 感想 | 感想亭備忘録

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終わった…。

 

終わってしまいました。

いいドラマでした。

いいサスペンスでした。

今期のドラマの中では出色の出来だったように思います。

 

まず、最終回についてですが、もう1回ひっくり返してくるのかと思いましたがそうではありませんでした。全てが明らかになった後の登場人物たちがどう再生していくのかを描くものでした。

原作は9話の最後のシーンで終わる絶望的な結末のようですが、ドラマの方はその事実を乗り越え、真摯に生きようとする彼らの一回り成長した姿を映し出します。

全ての登場人物に希望の光が差す、多少強引なまとめ方ではありましたが、これはこれでありかなと思います。温かい気持ちで見終えることが出来ました。

 

 

しかし見事なドラマでした。主要登場人物だけでも、広沢、深瀬、谷原、村井、浅見、美穂子、明日香、小笠原と8人もいたにも関わらず、それぞれの人物があの世界で本当に生きて暮らしている事をきっちりと描ききってくれました。画面に写っていない人物もそれぞれの場所でそれぞれの時間を懸命に生きているだろうことを想像できました。

(「小さな巨人」の登場人物のリアリティーの無さとは好対照です。)

深瀬の視点とそれぞれの登場人物自身の視点の二つがあることで重層的に人物を描く事に成功していたように思います。

 

また、劇伴(BGMと主題歌)の力というものを改めて思い知らされました。音楽には詳しくないのですが、急き立てられるような弦楽器の響きを聞くと、それだけで何か重大なことが起こるようで緊張してしまう程でした。素晴らしい音楽だったと思います。作曲は横山克さんという方なのですね。あまりドラマの音楽について意識したことはないのですが、今回は強烈に印象づけられました。

毎回のラストシーンでの主題歌の使い方も印象的でした。一瞬の間の後、隠された事実が明らかになる瞬間流れるサビに何度鳥肌が立ったことか。お見事としか言いようがありません。

 

きちんとした原作があり、それを損なわずより活かす脚本がつくられ、堅実で過不足のない、それでいて物語の驚きを伝えきれる演出がなされ、役者陣の演技力がそれに応えてよりいっそう物語を豊かにする、理想的なドラマだったと思います。キャスティングもある意味地味ではあるのですが、話題性だけを狙った無理な配役がなく演技を楽しむことが出来ました。こういうドラマが1クールに一つでもあればまだまだ日本のドラマも捨てたものじゃない、と思えます。

 

こういう地味でもしっかりと作り込まれたドラマが増えてくれれば、それに勝る喜びはありません。最近ではWOWOWのドラマWが地味でありながら野心的なドラマを量産し始めていますが地上波も負けずに頑張って欲しいものです。