森のドアラの読書事情

森のドアラの読書事情

新書を中心に、本の感想・書評を書いていきます。
2022年からは毎月1日更新予定。

 

 

著者は憲法学の第一人者らしい。集団的自衛権が問題になっていた2018年の出版。政治的な本は著者と意見が違うと低評価になる傾向があるものだが、ちゃんと議論の筋を勉強したいと思った。私と著者の意見の違いは「小さいながらあるかな」くらいの想定で読んだ。

 

しかし、読んでがっかりした。安全保障問題に関する意見の違い以前の問題だ。どんな本でも最後まで読むようにしているが、第2章で断念。語り下ろしとのことだが、それにしてもひどい。

 

著者は、憲法については専門の憲法学者が決めるべきだと言う。もちろん、専門家の見解は大事だ。しかし、憲法や民法やその他の法律とは違って、憲法は国民が読んで分かるものじゃないといけないんじゃないのか。実際、憲法は中学校の公民で学習する内容だ。著者の考えに従うと、政治のことは政治学者に任せるべきだということになるが、それでいいのだろうか?

 

著者は、憲法改正に反対という立場で、自衛隊を合憲としつつ、立憲主義を強調している。これはこれでいいのだが、憲法改正について国民が考えること自体が異常だというのは異常だろう。ここまで露骨なエリート主義を公言して、誰も止めないのかな。

『憲法と平和を問い直す』(ちくま新書)を読んだときもちょっと気になってたが、この人の本は読まないことにしたほうがいいようだ。

 

☆なし

 

 

 

 

『旧約聖書』から「創世記」・「出エジプト記」・「申命記」の三書を、『新約聖書』から「マルコによる福音書」・「ローマ人への手紙」・「ヨハネの黙示録」の三書を選び出し、解説している。まあ、分かりやすい。「ヨハネの黙示録」はまったく知らなかったので、勉強になった。

 

☆☆☆

 

 

著者はYouTubeで統計に関する動画を出している人。わりと面白いのでたまに観ているが、書籍も出しているということで読んでみた。本書もYouTubeも、この人の戦略を創造しながら読む(観る)と面白い。本書では、身近な例を使って統計に興味を持ってもらおうという意図がある。その辺はタイトルにも表れているが、内容は分かりやすいし、まあいいかなと思う。

 

☆☆☆

 

 

 

寛容・不寛容について関心があったので読んでみた。本書では主にネット炎上における「極端な人」の正体を考察している。経済学者らしく、さまざまなデータを基に分析していて、説得力はあると思えた。

 

☆☆☆

 

 

 

著者は元日刊スポーツの中日番記者。『週刊文春』に連載された元中日ドラゴンズ監督・落合博満についてのノンフィクションで、一部読んだことがあるものもあった。全12章で、それぞれ一人の人物の視点が盛り込まれている。その中には選手・コーチだけではなく、フロントの人間もいる。読み応えのある、良質なノンフィクションだった。

 

☆☆☆☆☆

 

 

全30章からなる分厚い本だが、元々は雑誌に連載されたエッセイとのことで、かなり分かりやすい。教授と助手の対話形式にはリアリティがまったくなく、いろいろ気になるところもあったが、読みやすい。全体として科学哲学を主題にした章が多く、特に前半は章と章のつながりもあって、どんどん読み進めてしまう。読み物としては良いと思う。

 

☆☆☆

 

 

不寛容な時代になった感じさせられる中、「訂正」という新鮮なワードに惹かれて読んでみた。同じ著者の『訂正可能性の哲学』(ゲンロン叢書)を読みやすくしたものかなと思ったら、本書は語り下ろしとのこと。語り下ろしはあまり好きではないのだが。

 

本書では、「訂正する力」の意義について様々な思想家を参照しながら語られている。それなりに同意はできるが、著者が強調する歴史修正主義の「修正」との違いが、やや曖昧な気がする。

 

☆☆☆

 

 

 

サメについての入門書で読みやすいが、専門性はそこそこ高い。サメの興味深い特徴を紹介しつつ、研究史などにも触れられている。一般向けの本ではあるが、サメ学研究者を増やそうという意図に貫かれている印象。

 

☆☆☆☆