勝手に論愚選2016.10.27 【産経俳壇2016.10.27】 [宮坂 静生 選] 天高うして生涯の短さよ (香芝市 中谷 清) (評)作者は、80歳。戦中戦後を十分に生きてきたのであろうが、あっという間の人生だった。短い。秋晴れのこんな日が後何回仰げるか。もの思う秋である。
悲しきは芯まで食ひし林檎かな (河内長野市 滝尻 芳博) 薑(はじかみ)や昭和の旨きものひとつ (狭山市 野田 修)
[寺井 谷子 選] 蕾一つ残す作業や菊作り (笠間市 伊藤 邦夫) (評)大輪の「菊作り」であろう。挿し芽から始まり、今、選びあげた蕾一つを残す。この一つに託す思い。多くの言葉から一つを選び、一句を残す「句作」もまた同じか。
一線を越えてみようか曼珠沙華 (東京・世田谷 石川 昇) 畦一筋火の道にして曼珠沙華 (御所市 山崎 寿子)
【産経歌壇2016.10.27】 [小島 ゆかり 選] 我にこの夕月のやうなオパールをくれし父よかの玉の行方よ (和歌山市 小栗 正子) (評)下句は「くれし父よかの/玉の行方よ」のリズムで読んだ。「玉」とは古代、宝石であり、大切なよき物の意味でもあった。不思議な雰囲気をもつ父恋いの歌。
一息に交差路回るだんじりの轍に残る駒の勢い (大阪・忠岡町 田中 成幸)
【産経ターマ川柳】テーマ 柿 熟れすぎの柿家族らの知らんぷり (横浜市 恒松 三枝子) (評)一方では、こういう現象も。今さら柿なんか、といったところなのでしょう。まさに飽食の時代。
渋柿を得心させて甘くする (井原市 山崎 範雄) 柿の皮ピーラーでむくうちの嫁 (府中市 阪本 敬彦) 算盤の簾の様な市田柿 (東京・新宿 菅佐原 道夫) |