2025年12月21日付の「47NEWS」が、
『まさかのSOS、弁護士会が「危機に瀕しています」…背筋が寒くなるその真相 「容疑者」に駆け付ける弁護士が激減、「冤罪」を生む恐れ』
と題した記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、懸念される問題点と国が実施すべき対応策について、考察しました。
《記事の要約》
誤認逮捕や冤罪を防ぐ重要な役割を担う「当番弁護士制度」が、深刻な危機に直面している。
逮捕直後、家族や職場とも連絡が取れない中で始まる取り調べは、本人が無実であっても冷静な対応を難しくし、捜査員の誘導による供述や不本意な調書作成につながりやすい。
こうした事態を防ぐため、各地の弁護士会が運営する当番弁護士が、原則無料で逮捕直後に駆け付け、助言を行ってきた。
しかし、2024年の当番弁護士登録率は全国平均で32.3%と過去最低を更新した。
弁護士数自体は増えているにもかかわらず、登録者は減少している。
背景には、長時間拘束される割に報酬が極めて低いこと、育児や通常業務との両立の難しさがある。
国選弁護に移行しても、数か月に及ぶ事件対応で得られる報酬は10万~20万円程度にとどまり、「やっていられない」と感じる弁護士が増えている。
大阪弁護士会では登録者が急減し、会長が「緊急事態宣言」を出す事態に陥った。
研修の厳格化や当番辞退への警告制度が反発を招き、登録抹消が相次いだためだ。地方でも、高齢会員の引退や新人不足により、1人当たりの負担増という悪循環が懸念されている。
一方、捜査機関は「弁護士が来るまでが勝負」と、逮捕直後の取り調べを急ぐ傾向があると指摘される。
黙秘権などの権利を知らないまま供述してしまう「供述弱者」も多く、当番弁護士制度は冤罪防止の最後の砦だ。
憲法34条の理念を体現する制度であり、もはや弁護士会任せではなく、国が責任を持って支える必要性が強調されている。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
<懸念点・理由と国が実施すべき対策>
本記事が示す最大の懸念は、当番弁護士制度の機能不全が、冤罪リスクの拡大に直結しかねない点である。
逮捕直後は精神的に最も不安定な局面であり、ここで弁護士が関与できなければ、違法・不当な取り調べを抑止する歯止めが失われる。
特に知的障害などを抱える「供述弱者」にとって、弁護士不在は致命的だ。
制度が揺らぐ理由は明確である。
第一に、報酬体系の歪みだ。
早期釈放に尽力するなど「良い弁護」を行うほど報酬が低くなる逆インセンティブ構造が存在する。
これは専門職としての合理性を欠き、使命感だけに依存した制度設計の限界を露呈している。
第二に、働き方の問題である。
育児や本業との両立が難しく、留置場への移動時間も含めた負担が過大だ。
第三に、弁護士全体の経済環境の悪化がある。
司法制度改革後、若手弁護士の収入は必ずしも安定せず、「割に合わない仕事」を避ける動きは自然な流れとも言える。
では、国は何をすべきか。
第一に、当番弁護士・国選弁護に対する公的財源の大幅な投入である。
これは「司法の救急医療」に対する国家責任であり、ボランティア前提を改め、業務量と成果に見合った報酬体系へ是正すべきだ。
第二に、ICTの活用である。記事にある「ウェブ接見」を制度化すれば、時間的・地理的制約は大きく緩和される。
第三に、専門化との両立だ。当番制度を刑事専門弁護士中心に再設計しつつ、一般弁護士の過度な負担を減らす仕組みが必要である。
当番弁護士制度は、人権保障インフラの一部である。
医療の救急体制と同様、採算論だけに委ねれば崩壊する。
ISO思考で言えば、これは「重大リスクへの予防管理」が欠落した状態だ。
冤罪という取り返しのつかない不具合を防ぐため、国主導で制度を再設計することが不可欠である。
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