広瀬淳二ソロ なってるハウス | ジョン・コルトレーン John Coltrane

広瀬淳二ソロ なってるハウス


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去る10月16日金曜日、台東区松が谷のなってるハウス広瀬淳二 のソロを聴いてきました。


開演予定8時の15分ほど前に到着。



ジョン・コルトレーン John Coltrane-看板 広瀬淳二ソロ



入るとカウンター奥の席に広瀬さん、そして一人広瀬さんと親しく会話を交わしている方が一人のみ。


席に着くとパーカーのダイアル・セッションがかかっているのに気付く。「Out of Nowhere」「Don't Blame Me」「Drifting on a Reed」等が別テイクを含めて続く。


しばらくして広瀬さんのライヴの時に必ずお見かけする方が入ってくる。


パーカーを聴きながらですから退屈しませんでしたが、いくら待っても他の客が一向に現れない。結局この日の客は自分も含めて3人だけだった。



大沼志朗とのデュオや前回の SAU の 2nd set でその片鱗をうかがわせた、楽器というよりはメカニカルな金属の管としてのサックスによる即興がソロでは一層際立つのではないかと期待していましたが、果たしてその通りのライヴ、驚くべき「技」の数々を他の楽器に掻き消されることなくじっくりと堪能できた。


それでは始めるかと一人ステージに立つ広瀬淳二。台湾製(あんまり言うと嫌みかな)のテナーを手に取り、リードを装着して身構える。PAなし、テナー1本に絞ったソロでした。



・1st set の初めは息を吹き込む音のみのロングトーン(だから本当は「トーン」じゃないんだけど)のミニマルな反復。キーは両手共一定のまま動かさない。大体10数秒から20数秒ぐらい。それの繰り返しで微妙にニュアンスが変わっていく。音楽的な歴史やジャンルを背負ったテナー・サックスという楽器がまた、一本の金属の管でもあることをデモンストレイトするような演奏。そして今度は逆にその管がまたサックスという楽器でもあることを思い出させるように、時折意表を突くように鋭い実音が入る。



以下、演奏する様子を眼で見た限りの、そこから出されていた音をメモ風に記します。多分全然正確ではないだろうし、きっと順番もかなり怪しい。いちいち読む必要はありません。ともかく多様なテクニックを駆使して多様なサウンドによる驚くべき即興が繰り広げられた、ということが示せればと思います。



・次は一転、実音のみを吹き、目まぐるしい運指で駆け上がり駆け下り、フリー・ジャズ的な語法、マナーによるうねるラインの激しい即興。


・そしてハーモニックスのロングトーン。ニュアンスを変えつつ繰り返す。1回の持続はやはり10数秒から20数秒ぐらい。高音と低音の二つがはっきり聴こえる。高音が一定の高さで持続し、低音が動いたり、また高音がひと際強まり、空間をビリビリ響かせたり。


・リズミックな、というと明らかに語弊があるが、ハーモニクスの、或いは高音と低音交互の、短い音の速い反復…というか言葉で説明できない。ともかくそれが次第に速さと強度を増していき、広瀬の動きも激しくなる。初めて聴くような音、初めて耳にするようなテナーの演奏で、圧巻の即興でした。


・目まぐるしい運指(キーのメカの音)に、息を吹き込む音のみ。まさに「管」が鳴っている感じ、べたに「管」としてのテナーを鳴らしている感じ。


・高音部が動き(左手、上の方のキーを目まぐるしい運指で)、右手、下の方のキーの開け閉めでパーカッシブな音の伴奏をつける。キーの「カチャカチャ」ではなく、タンポ(パッド)の閉じる音。「ボンボン」というちょっと緩めな、だが管に反響しているような音色。



・2nd set は終了後、メモはおざなりで写真を取り始めてしまったのでさらに記憶は曖昧。初めは 1st set 同様、息を吹き込む音のみのロングトーン…だから「トーン」ではなくて長いひと吹きなんだけど。それを今度ははっきり息の強さを変化させて。吹くだけでなく、吸っていたような? そんな喉の動きも見られた。吸ってもやはり音が出るのだろうか。


・高音部が一定の高さで持続し、右手、下の方のキーを細かく開け閉めして顫音。


・旋律らしきものがうかがえる「曲」のニュアンスを持った即興。


・高音と低音の、速い反復。そこに中低音の、スラップ・タンギング(?)の弾ける音、破裂音で鋭いアクセントが入る。どことなし音の表情がユーモラス。


・ラスト、短いが鮮烈な高速高密度、塊になってうねり捲る内臓的なフリー・ジャズらしい即興。「内臓的」って実のところ意味不明な言葉だけど(>_<)、ニュアンス伝わるかな。



そしてもちろん、これにプラス、目では見えない、微妙なアンブシュアやタンギング等のテクニックが加わっているわけで、それはもう自分で実際にテナー吹いてみるという段階を経なければ記述しようがないです。



各セットを終えてステージを降りる広瀬淳二は汗を流し息もかなり荒かった。以上の諸々の「技」は、要所要所でしかるべき脱力が必要であるにしても、かなり身体的な負荷がかかるものだったのだと思います(やっぱエンドルフィン出るのと違うか)。


様々な「技」を駆使してまさに息をのむようなサウンドを生み出していました。しかし決してアクロバティックな見世物というようなところのない、張り詰めた厳しさのある即興だったと思います。(レイシーだってほら、New Duck みたいな演奏あったじゃないですか。)サックスを吹いていない時の広瀬さんは非常に気さくな感じの方なんですけどね。



しかしこの驚嘆すべき即興を聴くのがたった3人だけとは一体どういうことか。これは絶対おかしい。間違っている、と思う。もったいないです、広瀬淳二を聴かないなんて。是非とも一度、広瀬淳二のライヴを自身の五感で確かめてみてください。



ジョン・コルトレーン John Coltrane-広瀬淳二
広瀬淳二
おお、なかなか風格のある写真が撮れた!


ジョン・コルトレーン John Coltrane-広瀬淳二とのツー・ショット
広瀬淳二とのツー・ショット♪


広瀬さんの写真撮らせてもらっていたら、終止広瀬さんと親しく話していた方が写真撮ってくれる。この方、さっき検索していて判明したのですが、doubtmusic沼田順さん でした。沼田さんもブログにこの日のことを書いておられます。「梅津和時・還暦。広瀬淳二・54歳。」



ジョン・コルトレーン John Coltrane-なってるハウス店内01



主役とマスター、そして客3人(一人は写真を撮っている)の計5人。まあ、これも悪くないですが、次回またソロがある時はもっと入ることを願います。



ジョン・コルトレーン John Coltrane-なってるハウス店内02
手前の丸刈りの方が沼田順さん


沼田順さん、ICレコーダーで録音してました。デモかなにかで使うのでしょうか。うらやましい。自分も録音したい。音源を手元に置いて、何度も繰り返し聴いて得心したい、そんな思いに駆られます。



ジョン・コルトレーン John Coltrane-破顔の広瀬淳二
普段の広瀬さんはこんな感じ


ジョン・コルトレーン John Coltrane-台湾製テナー・サックス
広瀬淳二のテナー・サックス
弘法筆を選らばぬ台湾製




次は



10月23日(金) 東京、国立「ノー・トランクス」

広瀬淳二(ts)、井野信義(b)、芳垣安洋(ds)トリオ


10月25日(日) 

西荻窪 アケタの店  03-3395-9507

藤川義明Trio=藤川義明(as) カイドー・ユタカ(b) 大沼志朗(ds)


に行ってこようかと予定しています。





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