永井荷風とストリップとドラマ「わが家の歴史」 | 60歳を超えて

60歳を超えて

なんだかんだといっても人間60歳の還暦を迎えてしまい、今までの経験したことなど反省の意味を込めて残して行こうと思っています

今回は一見ストリップとは関係ない話のようで・・・関係あるのですが、3回に分けて永井荷風氏とストリップのお話を・・・(^_^;)

 永井荷風という文豪をご存知だろうか?じつはストリップでは彼のことは有名である。ストリップに"理解のあった"有名人といえば"監督"の山本晋也氏や愛川欽也氏、ストリップ劇場でコントをしていた"世界の"北野武氏や萩本欽一氏、などそうそうたる人物が挙げられる。文豪であり(『ぼく(氵に墨と書く)東綺譚』『ふらんす物語』など)、元慶応大学教授であり文化勲章受賞者である永井荷風氏=1879年(明治12年)12月3日~1959年(昭和34年)4月30日、は異色であるが、最近ではドラマ「わが家の歴史」(フジテレビ開局50周年記念ドラマ、2010年4月11日より三夜連続放送→長いです。全話見ると8時間で根性が必要です)の第三夜にも登場する人物である。荷風氏は戦後毎日のように浅草へ出かけ、ロック座の楽屋へもぐりこんで踊り子と談笑したり、作品を書いたり(『春情鳩の街』『裸体』『渡り鳥いつかへる』など)、自分みづから出演したり、あるときはロック座のヌード嬢オーディション(2月11日)で、 審査委員長を務め、黒の背広に駒下駄で誰よりも早く会場に現れて細かく指図、大いに張り切っていたのは、昭和26年。文化勲章を受章する前の年の出来事でした。ロック座でのこぼれ話は ①劇場がハネると、お気に入りの女の子を誘って食事に出かけ、 満足して市川の家に帰るという毎日だったようです。
それでもお金にはシビアだった(筆者注:父親の相続財産やら肌身外さず持っていた預金通帳には2500万の残高が・・・。これ、現在では2億円に相当、あるとき総武線の車内に忘れて大騒ぎ・・・通帳だけなので無事戻ってきたそうですが、通帳2冊の合計残高が新聞で報道されてバレタ)。 半藤一利さんの目撃談によれば、ある店で先生が食事中、「おまちどおさま!」と踊り子二人が入ってきた。 しばし談笑の後、お勘定ということになりましたが、 一人の踊り子が怒り出したんだそうです。「先生、私の分は?」「ダメ、君は呼んでないから」… 「ケチンボ!」どんなに大声で怒鳴られようと、声をかけて誘った女性の分しか払わなかったそうです。 ②ある日、ストリッパーの一人が巨匠宅に招かれました。偉い先生にお茶を入れて差し上げましょうと台所を見渡した彼女は さて困ってしまいました。急須もなければ湯のみも一つきり・・。『普段は何を飲まれているんですか?』との彼女の問いに巨匠は「水だよ」と答えました。とか。かなりの変人・奇人と思われるが、文化勲章受章後は次第にロック座から足が遠のいていく。浅草へは毎日通ったが踊子達から「あのニカゼさんってどういう人なの?」のうちは良かったが、文化勲章受賞で楽屋の雰囲気が変わったことで足を遠ざけたようだ。浅草寺の側のベンチで"うたた寝"していたようだ。(写真が撮られている)そんな荷風氏はドラマの中でどのように描かれているのだろうか?

※このドラマの第三夜にストリッパーが登場するが(一之瀬ゆかりを長澤まさみが演じている)

一之瀬ゆかりはこの家族の八女家長女政子の友人。東大進学後、八女家の長男である義男(松本潤)の恋人になるが、交際を両親に反対される。その後、北海道でお見合いしていた時に、義男と駆け落ちし、洞爺丸の海難事故に巻き込まれる。その後記憶を失い青森にいたが、東京に戻ると両親は駆け落ちした二人を追い洞爺丸に乗船していたため事故で亡くなり、家は売りに出されていたため全てを失いストリッパーになってしまう。

※荷風氏が登場する場面でのセリフ

1956年(昭和31年)の売春防止法施行後、次女の波子(堀北真希)は「働く女性」の取材をすることになった。それらの女性のうち底辺にいる女性として「赤線やストリップ」があがり、取材に訪れる劇場。そこで楽屋にいた永井荷風(石坂浩二)と出会う。
楽屋を出てからの蕎麦屋で永井荷風が「彼女たちは体を張っているが故に気高い。気高いが故に美しいんだよ。あの子たちに比べたら彼女たちをネタに雑文を書いて高い金をもらっている私なんぞ人間としては、はるかに下品だと言えるだろうね
この後、一之瀬ゆかり(長澤まさみ)と八女家の長女政子(柴咲コウ)が再会を果したときのゆかりのセリフ「何もかも失っていっそのこと死にたかった。でも死ねなかった。おかげで死ぬよりつらい思いをずっとしてるわ」 ※売春防止法施行前は"夜の女"であり、施行後はストリッパーになっていた。また、ストリップ劇場の舞台のシーンもあるが、劇場に盆はなく、本舞台で演じるゆかりの姿があるが、服を脱ぐところは服が下に落ちるところだけでダンスもない。

このドラマで最後のテロップに、ダンス指導として雅麗華さん(彼女は原氏から「ロック座の華」といわれ、すでに引退後、奇しくもこれを発表する直前の2012年9月30日にCDデビューしてのディナーショーが浅草ビューホテルで開催された。加瀬あゆむさんの10月1日のBlogに挙げられている。)の名前があることが意外な"発見"であった。

永井荷風のこの場面でのセリフがイイ。"不幸にして"この脚本を書いた三谷幸喜氏の作品は私は"そりが合わない"ので(すみません)あまり見ないのであるが、戦後の女を取り巻く状況という制限付きではあるが三谷氏やそれ以後のストリップに対し、世間にはある種の感覚があったことが感じられる。現在この種の問題は『AV女優という職業』(幻冬舎新書)で中村氏が述べられているが、もはやセーフティ・ネットとしてAVが機能していないことが問題である。ストリップにはある種の"暗さ"がつきまとう。これについてはのちのち述べることがあろうがいまはひとまず置いておこう。

今回はこれまでにして「続く」(次回は永井荷風氏の踊り子に対する審査基準など)

☆お知らせ☆
仕事で8日から15日まで海外出張に出ます。出発まで出来るだけ「舞姫伝説」のアップをしておきますが、データ・ベースは持っていけないので下書きで書きためてある永井荷風氏のお話を現地からアップします。コメント等は随時行える環境なのでよろしくお願いしますm(__)m