映画批評_気ままにツラツラと・・-グラン・トリノ


さーて今週最後の試写会は
クリント・イーストウッド監督・主演最新作『グラン・トリノ』です。
この監督の作品にハズレは基本的にないので期待度はMAXで鑑賞に臨みました。

あらすじ:
長年一筋で勤め上げたフォードの工場を引退し
妻に先立たれてからは、ふたりの息子と孫たちも寄り付こうとしない
孤独で頑固な老人ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)。
心を開ける相手は、愛犬のデイジーだけだ。

彼は自宅を常にきれいに手入れしながら、M-1ライフルと
72年製フォード車グラン・トリノを心の友に静かで退屈な余生を送っていた。
彼の暮らす住宅街には、もはや昔馴染みは一人もおらず
朝鮮戦争帰還兵のコワルスキーが嫌ってやまないアジア人をはじめ
移民の外国人ばかりが我が物顔でねり歩く光景に苦虫をかみつぶす毎日だった。

そんなある日、彼が大切にする庭で
近所のアジア系移民のギャングが
ウォルトの隣に住むモン族の大人しい少年タオ(ビー・ヴァン)に
ウォルトの所有する1972年製グラン・トリノを盗ませようとする。
彼らを追い払おうとライフルを手にしたコワルスキーだったが
結果的にタオを助けることになり
タオの母親と姉がこれに感謝し、以来何かとお節介を焼き始める。

最初は迷惑がるものの、次第に父親のいないタオのことを気に掛けるようになり
次第にウォルトとタオの不思議な師弟関係が始まる。

学校にも行かず仕事もなく、手本となる父親もいないタオは
ウォルトを見習うことで労働の喜びを知り、男としての自信をつかんでいく。
偏屈なウォルトもまた、タオを一人前にするという目標に生きがいを感じ
見違えるように変わっていく。
しかし、タオは愚かな若者たちの争いに巻き込まれてしまう。

タオに行くべき道を示すため、覚悟を決めてウォルトは行動に出る。

感想:
先に言っておきます。多少ネタバレしてます。

頑固で口が悪く、偏見に満ちたキャラクター、ウォルト。
神を信じず、人に心を許さない。
ギャングを気取った無礼な若者たちには
白人、黒人、ヒスパニック、アジア系
そこに人種は関係なく、罵声を浴びせ必要ならば銃を抜く。
自宅の芝生に一歩でも侵入されれば
問答無用で磨き上げたM-1ライフルを突きつける。
相手がたとえ孫娘でも、気に入らなければ唾を吐く!
そんな強烈な役柄をクールかつコミカルにクリント・イーストウッドが演じています。

かつてのイーストウッド映画なら
有無を言わさずブチ殺していたような悪党に対するラストの彼の行動は
男はいかに生きるかをタオに教えるだけでなく
無用な人種・民族間対立も避ける彼なりの落とし前のつけ方なのです。

このウォルトが最期に見せた生き様はグラン・トリノと共に
確実にタオに受け継がれたはずでしょう。

とにかくシビレました!
イーストウッド映画らしからぬ、笑い溢れるエピソードが盛り沢山で
会場には笑い声が響いていました。
それがラスト30分で急加速して、宣伝文句を引用すると
「映画史上最も優しい衝撃のラスト」に辿りつきます。
まぁ彼の行動から覚悟が伝わってくるので
結末は予想できるのですが、それは大きな問題ではありません。

それは、女性には、もしかしたら理解できないのかも知れないし
最近耳にする草食系の男にも理解できないラストの選択かもですが
自分は、男という生き物は最後の間際までカッコつけて美学を貫く
その姿こそが憧れであり、目標にしたいんです。
だからこそ、ウォルトが示した生き様に強烈にしびれたのです。

この作品は、イーストウッド以外は全員無名の俳優で固められていて
彼の圧倒的な存在感無しにはウォルトは成立しないし
そもそも作品自体の魅力も損なわれたことでしょう。

今年の賞レースからは、何故か無視された作品ですが
北米ではイーストウッド作品としては、歴代最高のヒットなりました。
観る者は、賞とは関係なく、最高の作品を見抜けるんです!
今まで、イーストウッド作品では「許されざる者」が最高だと思ってました。
今日からは「グラン・トリノ」が一番になります。

熱く語ってしまいましたが
騙されたと思って構わないので
劇場に足を運んで心に焼き付けて欲しいです。

自分はウマの合う男友達には全員強制的に観に行かせます!
普段映画観ない男も含めてね!
なんでかって?そりゃ間違いなく気に入るはずだからだよ!
(点数:98点)

原題:GRAN TORINO
製作年度:2008年
製作国:アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン
(4/25公開)