LL.M.コースを希望しているLさん。去年のTesDafの結果は、学籍登録レベルに届かなかったらしい。春のDSHに再度挑戦するそうです。

夏学期からLL.M.コースを始める事について、私は「冬学期からの方がいいよ。」と薦めています。なぜなら、夏学期の授業は通年開講の授業の途中から参加する形になるので、理解するのが大変だからです。(私は、これで苦労しました。)

一日でも早く修了したい彼女は、DSHに合格したらすぐ、夏から学籍登録するようです。

そこで彼女に、今私が使っている教科書を、できるだけ早い時期に読んでおく事を薦めました。法律用語を増やせるし、独特の文章の雰囲気に慣れる事ができるからです。

語彙力を増やす事は、絶対課題です。日常使わない単語がたくさん出てきます。普通の辞書には載っていない単語もたくさんあります。

2セメで修了のドイツLL.M.コースですが、ついていくには、入学前に相当のドイツ語力が必要だと思います。私の現在の問題点は、未だにドイツ語力のなさです。ドイツ語を読んでも聞いても、未だにモヤモヤがかかった状態で、日本語のようにスッキリ理解する事ができません。

しかし、どうやら、このモヤモヤはドイツ人学生にとっても、講義を理解するのは大変らしいです。PÜ とあだ名のある、Propädeutische Übung(演習)で、ある学生が
「講義の重要なメモを全て書き留められない。ついていけない。」
と講師に質問していました。
講師は、
「講義にでるだけでは理解できないから、私は教科書をしっかり読んだよ。」
と言っていました。

『なんや、ドイツ人でも講義ついていくの大変なんや、うちも大変やけど、がんばろ。』とちょっとホッとした記憶があります。

そこで、お薦めの教科書を紹介します。Lさんにもこの教科書を薦めました。


まず、Zivilrecht (私法、略号はZR)では、1セメでGrundkurs (基礎コース、略号GK) Bürgerliches Recht I (略号BGB)の講義を受けます。授業内容は、BGB-AT (ATはAllgemeiner Teilの略号、つまり民法総則)と、Schuldrecht-AT(債権法総論)が範囲です。

講義の初日は、参考文献や講義予定表が配布されるので、必ず出席しないといけません。学部ホームページに公開される場合がありますが、パスワードがないと閲覧できない場合が多いので、パスワードを知る為にも初日の参加は欠かせません。

いくつか教科書が紹介されましたが、私が購入したのは、
Musielak, Grundkurs BGB, Verlag C.H. Beck
です。購入したのは第10版(10. Auflage)ですが、数年おきに新しい版がでるので、購入の際は第何版か注意が必要です。
この教科書は民法総則と債権各論が別冊になっているものが多い中、唯一一冊に民法総論と債権総論が収録されているところです。演習の講師も薦める教科書です。

刑法(Strafrecht (StrR))は、1セメでStrafrecht Iの授業を受けます。授業内容は刑法総則(AT)です。2セメと通年で総則を勉強します。

何冊か紹介された中から、刑法の教授が薦めたC.F.Müller出版のSchwerpunkteシリーズを購入しました。
Wessels/Beulke, Strafrecht Allgemeiner Teil, C.F.Müller
この刑法の教科書は既にポルトガルト語、スペイン語、韓国語、ロシア語に翻訳されています。残念ながら、日本語版はまだないようです。あったら、楽できたのに。

教授が薦めるだけあって、難しいけれど、理解しやすくレイアウトの工夫がされていると思います。

各教科の入門書になっている通常の教科書サイズより小さくて分厚いオレンジのシリーズ、Verlag C.H. Beck出版のGrundrisse der Rechts があるんですが、比較的簡単な文章で説明されていて、多くの学生はまずこの入門書から読むらしいけれど、私にとっては、文章がダラダラ続いていて、理解しにくい。

一方、Wesselsの教科書は項目ごとにコンパクトにまとまっていて、私にとっては、Grundrisse der Rechtsシリーズのものより、分かりやすかったです。

公法(Öffentliches Rescht (ÖR))は、私にとって一番のネックです。早い段階で気に入った教科書を見つけることができなかったし、日本語で知らない分野の講義だったので、一番理解していない科目だからです。

1セメで学習する分野は、国家法I(Staatsrecht I)、国家組織法(Staatsorganisationsrecht)
です。ドイツ基本法(Grundgesetz、略してGG)と言われるドイツの憲法にあたる法律です。第146条まであります。1セメでは、Grundrechteと言われる基本権を除く、第20条から第146条までが範囲です。関連する特別法も併せて学習します。

私が購入した本は、
Ipsen, Staatsrecht I, Carl Heymanns Vertrag
でしたが、あっさりまとまりすぎて、もう少したくさん説明してある本がほしかったです。演習の講師に薦められたオレンジ色のGrundrisse der Rechtsはどうも好きになれなかったので、図書館で刑法の教科書と同じ出版社が出している
Degenhart, Staatsrecht I, C.F. Müller
を借りてきました。

どうやら、私にはC.F. MüllerのSchwerpunkteシリーズの雰囲気が好きなようです。