2012.11.27

大まかな治療方針と検査結果が分かった翌日。
わたしは朝から大学病院の婦人科にいた。
予約票に9:00~10:00と書いてあったため、
予約枠だと思って行くも
結局は普通の外来と変わらず…
寒い廊下で、4時間程待たされた。



この日は
クリニック転院日に軽く聞かされていた
『抗がん剤による卵巣へのダメージを受ける前に
卵子凍結、卵巣凍結の選択肢がある』という話を
大学病院の婦人科で第一人者のN先生に
話を聞きにきたのである。

ただ、わたしの中では
前回の時点でほぼ答えは決まっていた。
卵子や卵巣凍結についても自分なりに調べた。
卵子に関しては、世の中的に不妊治療が進むにつれ
凍結技術は確立しているが
受精卵凍結に比べたら、卵子凍結からの妊娠の可能性は低く、
また自然の排卵周期で毎月できる卵子は1つ。
せっかく凍結するのでも、1つでは意味がない。
確率の問題で、多ければ多いほど良いわけで
そうなると、無治療の期間を半年ほど取り
最低6つくらいは集めなくてはならないが
その選択肢は、しこりがこんなに大きいわたしにはない。
待てない。

促進剤により、一度の排卵で
大量に卵子が出るようコントロールする方法もあるが
女性ホルモンと関係してくるため
ホルモン受容体陰性の人向き。

消去法でいくと、残るは卵巣凍結になるのだが
これは90年代からの技術で
まだ世界で20人くらいしか妊娠に成功していない。
この確率に自費で高額出す価値があるのか?

33歳の卵巣を取り出して凍結保存、
ホルモン治療が終わった5年後に
39歳の身体に移植する?
そんな話、わたしにとってクローン人間レベルのSFの世界でしかない。


母親には、
わたしが子どもをどうしてもほしいと望んでいるわけではないこと
(例えば、子どもほしい?と聞かれれば
うーん、特に考えてない、どっちでもいい、と答えるレベル)
乳がんの治療に専念したいこと
どれも確率が低過ぎると感じていること
それに対して費用が高いということ
多分やらないと思う、と話してあったが
母親は、お金で何とかなるものならば
可能性を残しておくっていうのも
アリなのでは?との意見だった。
この時、特に子ども好きではない母も
孫が見たいのかな?と
チラッと思った。



また、自分の中で引っかかっていたのは
母性についてだった。

わたしの周りにはパートナーはいらないけれど
子どもはほしいという独身のコや
不妊治療をする夫婦も結構いる。

それに比べ
わたしは子どものことを簡単に諦められる気がする。
そもそも、この年でも産めるか分からないなぁと以前から思っていた。
しかし、それって…なんだか、女性としてどうなんだろう、と
乳がんをキッカケに考え始めることに。

子どもはいらない、と心に決めたり
それを口に出してしまうと
理由の分からない涙が出る自分もいて、自分の本意が測りきれなかった。
いま考えると…
母性が欠けている(かもしれない)ことや
あたたかい家庭とか、一般的な幸せというものに対する
罪悪感からの涙かもしれない。



いろんな意見が聞きたいと思ったわたしは
乳がんであることを告知した友人や
ネットで出会った同病、同年代のコにも聞いてみた。

やはり、子どもがほしいと言っていたコたちは
凍結を選択すると言った。

みんなからの答えの中で、
わたしが一番しっくりきたのは
子どもがいる人生と、再発する人生だったら
どっちがいいか?という話だった。
わたしは間違いなく、後者を選ぶな、と。


そう思ったら、すごく楽になれた。
子どもを望まないコトが悪いコトではない
その理由っていうのかな?
それをハッキリ堂々と言えることで、
とにかく頭がクリアになった。


よし、今日は、婦人科のN先生に会って
お昼を食べたら、すぐ会社に行こう。
N先生は、新聞にもコメントを寄せる程
この卵子、卵巣凍結の世界においては
有名らしいから
興味深い話を聞きに行く程度のノリで楽しもう。


それにしても、大学病院の廊下は底冷えする。