良い作品に恵まれて、演者が急成長することってありますよね。
もちろんその逆、ちょっと待ってくれ・・・というつくりのものが
演者の力でリピーターを招くこともある。
宝塚はその点、客席の方にも愛があふれているので、
「ものすごくおもしろい!わけではない・・」ものもリピーターがついたり
するので、客席を見ただけでは評判がよくわからないことも。
昨今の不景気もあるのか、さすがの宝塚もチケット売れ行きに
かげりが見え隠れする中、チケ難といわれた今回の月組公演でした。
それは原作が非常によくできている、楽曲が優れているということも
あるでしょうが、
満を持してのきりやん(霧矢大夢)とまりもちゃん(蒼乃夕妃)
トップコンビお披露目公演ということも、あるでしょうが。
やはり演者の力は大きかった。かと。
前回の観劇から3週間前を経て観た本日、きりやんパーシーはもう、
粋でおしゃれな貴族でありながら、完全にお気楽にみせかける術も
賢さも持つ、強い信念の人そのものでした。
その余裕、頼もしい、本当に安定したトップスターぶり。
対するまりもちゃんも、イヤ、もう全然不安がありません。
3週間前と比べてすら、歌がうまくなっていて。
彼女の芝居心がより一層、歌う姿を輝かせていました。
歌もダンスも、ある意味芝居、改めてそう思い。
でも1番、急激な成長が難しいという点で
まずダンサーありき、という持論の私にとって、
フィナーレのダンスで微笑むトップコンビは
もう、文句のつけようもない輝きを放ちました。
やっぱりトップコンビというからにはこのぐらいみせなければ!
と思っているかのような2人の姿にいろいろな思いが胸に去来。
イヤきりやん&まりもちゃん、素晴らしい。
才能ある人が真摯に努力し続け、実を結ぶとこうも素晴らしいものを
みせてもらえるのか、と、きりやんにも、
それを支え続けたファンの方々にも、頭が下がる思いでした。
そしてやはり・・・<ノバ・ボサ・ノバ>のとき、
ヤオヤ舞台でうまくダブルを回れない、と
1人黙々とターンを続けていたというきりやんや、
いつもタニちゃんとニコイチで、トーク番組などでも、何か突っ込まれると
すぐアワアワするかわいいタニちゃん(大和悠河)をフォローしていた姿や、
<大海賊>の舞台の小道具の樽に乗った後輩娘役ちゃん(叶千佳)が
それを踏み抜いてしまったとき、きりやんが
「私がその前に乗ったとき、踏み抜いといたらよかったなぁ・・・」 と
心配して何度も言っていたことに千佳ちゃんが(その優しさに)泣いていた、
という話とか、なんで今!ということを思い出し。涙。
もう泣くから、きりやん、羽根背負って出てこないで(←大バカ)
悠々と笑顔で銀橋を渡るきりやんは、お披露目にして素晴らしい貫禄と
光を放ち、輝く月のプリンスぶりでした。
生まれ持ったキラキラや光のある人、
天性の笑いの太鼓を持っていて、ソレを叩けば観客を沸かせられる人。
かと思うと、脇でコツコツと、静かな渋さを発揮し、目立たないけれど
長く長く記憶に残る人。
華やかさ、美しさ、巧さ、存在感、重み。
役者さんにはいろんなタイプがありますが、
きりやんはもちろん素晴らしいスターなのは間違いないものの、
<最初から光、キラッキラ☆> というタイプにはみえなかった、私には。
ダンスセンスと芝居の勘所のよさを生まれ持ち、その誠実な人柄と
真摯な姿勢を以って、そのすべてを光として少しずつ集め、
ゆっくりと階段を上がってきたように、遠くからのファンには見え。
ずっと支えてきたファンの応援を力として、
そのファンのためにも、自分のためにも、走ることをやめなかった。
だからこそ、努力に努力を重ねて、病気に負けずくさらず、
よく生徒さんが言う、
「目の前のことを一生懸命やるだけ」 だったように思え。
だからきりやんが
「強い力立ちふさがろうと 僕はあきらめはしない」
「ひとかけらの勇気が僕にある限り」
「数多の障壁乗り越えて」 と歌う言葉のひとつひとつが胸に沁み・・・。
ゆひさん(大空祐飛)について書いたときも同じでしたが、
スターであるまえに、男役である前に、人間として、素晴らしい。
過信しないから努力をやめず、天狗にならないからこそ
人の想いにきちんと応えられる、
そういう人が、歴史に残るトップスターになっていく、
という思いを強くいたしました。
稀代のトップスターとなるだろう霧矢大夢さん、
そして強烈な存在感を持ちながらきりやんに寄り添う蒼乃夕妃さん
素晴らしいお披露目公演、お疲れさまでした。
そして月組の皆さん、無事千秋楽おめでとうございます。