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このマンガがすごい!157



タイトル・・・20世紀少年

作者・・・浦沢直樹


 いや~実に面白いマンガなんだなこれが!7~8年前に初めて読んで、今回また久しぶりに読み返してみたが、やっぱり面白かった。自分も昭和に生まれ平成を生き抜いているが、自分の子供のころをやっぱり思い出してしまい、自分もある意味、『20世紀少年』だったと思う。昭和・・・良くも悪くも日本という時間が一番動乱に動いた時期ではなかったのではなかろうかと思う。勿論自分は戦後のずーっと後の時代に生まれたが、それでも昭和レトロの時代を生きていた。だからこそケンヂたちに感情移入するのだろうと思う。ケンヂたちが原っぱで秘密基地を作ったり、駄菓子屋でお菓子を買ったりと自分の子供のころとシンクロしているシーンがたくさんあって、平成生まれの『21世紀少年』たちにはわからんだろな~。と、いうか、当時は携帯もテレビゲームなくアナログな遊びしかなかったのである。しかしそれはそれで楽しい時間で、今でも、昭和はいい時代だったと思う。何度でもいうようであるが、自分もまた『20世紀少年』だったのである。

 で、物語であるが、主人公・遠藤ケンヂは、子供のころ(70‘年代)、仲間たちと原っぱで秘密基地を作り、多感に遊んでいた。そして『よげんのしょ』を描きタイムカプセルを仲間とともに埋める。99年、大人になったケンヂはコンビニ経営をしていた。その背中には姪のカンナをおんぶして仕事をしていた。そんな時、かつての遊び仲間だったひとりが、[ともだち]という謎の存在になり、『よげんのしょ』通りに世界を破滅しようとしていたの知り、それを止めようとする。しかし結果的に、世界中に破壊活動がおこり、ケンヂと、その仲間たちはテロリストの汚名を着せられ姿を消す。2015年、ケンヂの姪・カンナは、[ともだち]を倒すべく、かつてのケンヂ仲間たちと、再び立ち上がっていく・・・

 と、相変わらず大雑把に書いてしまったが、本は全部で24巻(ラスト2巻は、『21世紀少年』)と、大河的なドラマで、早大稀有なクロニクルなマンガといっても過言ではない。このマンガは1970年、1999年、2015年と三つの時代を描いてあり、なかなか面白い設定で、昭和時代の人間には、『これ、あるある!』の世界が描いてあるし、平成生まれの人間にも充分面白く感じれる内容になっている。そう、正にエンターティメントな物語で、これぞ日本が生んだマンガ!って感じもする。

 浦沢先生のマンガは、アニメ化ドラマ化されているものが多いが、この『20世紀少年』も映画化されている。しかも三部作構成で製作費60億円で、ケンヂの役には唐沢 寿明、カンナ役には平 愛梨が起用され、他の俳優たちもなかなかの配役だったと思う。ただ原作の広大複雑な世界観は完全に表現されてはいなく、原作ファンとしては映画の方はややチープに感じた。ただカンナ役の平 愛梨は自分個人的に大好きで本当に当たり役だったと思う。愛梨ちゃん・・・かわいいっ!♡

 このマンガの面白いところは実際の人物をモデルにしたり、結構遊び心がちりばめられていたり、他にもマンガやドラマのオマージュが結構見て取られマンガ好きアニメ好きにはたまらないシーンが多々あり、わかる人間にはわかるパロディがあるのが浦沢マジックとでも言える。勿論、浦沢先生だけでなく、原案協力者の人の博識があるのも事実だが、これをマンガ的に、結果的描かれている浦沢先生のセンスが実にうかがえる。ただ少し残念なのは、浦沢マンガは、線がシャープ過ぎて、尚且つコマワリがやや大きすぎて、するする読めてしまい、引っかかりが今一つないのも事実である。これがいいのか悪いのかは、結局は読者にゆだねられるのであるが、自分としては浦沢マンガの悪い一面ととらえている。浦沢先生すみません。だけど、それを凌駕して面白いのが浦沢マンガでもあることを、念のために一言。

 『20世紀少年』は、友情のマンガでもある。ケンヂとその仲間たちが、悪に立ち向かう・・・簡単に言えばそれまでなのだが、それがかっこつけづにやっているところがこのマンガをヒューマン的な見方で、ドラマを奥深くしている。物語を70年から2015年までの長いスパイラルで描いていて、子供が立派なおじさんおばさんにになっていき、少女は大人になっていく。彼らは、時に武装して戦い、時にレジスタンス活動で独自の戦いをしていく。そう、人間戦わなきゃならん時は、何らかの形で戦うものなのである。そのことの重要性をこのマンガはわかりやすく教えてくれるマンガもあるのだー!

 このマンガ読んでいて、恋愛シーンやエロシーンが全くないのを改めて感じた。せいぜいカンナのパンティ姿があるだけで、エロとか恋愛とかなくても物語は成立するものだ。でも、自分的には、ケンヂとユキジを結び付けてやりたかったし、カンナも恋愛の一つがあってもよかったのではなかろうかと個人的には思ったものだ。ここら辺のシーンがあるかないかで、また違った物語の広がり方があったのではなかろうかとフト思ってしまった。まあ歴史にもしは無しなので、これはこれでよかったのかもしれない。でも、おじさんおばさんになっても未来の展望はあるからね!

 『20世紀少年』から 『21世紀少年』になっても、未来は続く。それどころか『22世紀少年』『23世紀少年』になっても、世界は続いていく。そしてそこには、いつもケンヂがいて仲間がいて、友情の戦いがあることを自分は信じている。

このマンガがすごい!156



タイトル・・・包丁人味平

原作・・・牛 次郎

作画・・・ビッグ 錠



 日本マンガにおけるグルメマンガのパイオニア的な存在のマンガで、料理というものの存在を初めてマンガで取り上げた功績は大きく、後に様々なグルメマンガが登場するきっかけとなった作品であるといっても過言ではない。連載されたのが73‘年から76‘年で、『美味しんぼ』は、まだずうーっと先の話である。このマンガ最近読み返したのだけれど、さすがに時代性というものがあるが、料理に関する資料もまだ乏しい時代によくこれだけ書き切ったものだと自分は素直に感心する。そうですぞ!70‘年代ですぞ!まだネットも料理本もあまりなかった時代ですけんね。ただ、料理とスポ魂が既に合体した作品に仕上がっており、料理対決という図式もこのマンガで既に完成されており、当時の劇画時代のブームに見事にマッチしていた。劇画というのはアンチ手塚で始まったものだから、この時代、様々なものがマンガに取り入れられていた時代でもあって、その中でも、このマンガは異色のマンガだったと思う。

 で、物語であるが、主人公・塩味 味平は中学を卒業して、父親・塩見 松造の期待を裏切り、高校へ進学せず、キッチン・ブルドッグへ入店し、洋食の修行へと進んでいく。しかし鼻っ柱の強い味平は、まだ半人前の腕前のくせに、他の料理人たちとつい料理対決をしてしまうのである。仲代 圭介戸の包丁試しや、包丁貴族・団 英彦との点心礼出の戦いなど味平は苦心しながら勝利していく。カレー戦争編では、デパートにやとわれ、対するデパートのカレー将軍・鼻田 香作との壮絶な戦いに勝利する。そしてラーメン戦争編ではカレー戦争編の時同じ仲間だった柳 大吉と勝負をすることになる・・・

 と、まあざっくり書いてしまったが、結構、重圧なストーリーで資料面においては、やや時代性あるいは乏しさを感じるものの先に述べたスポ魂的な要素が充分に取り入れられ、飽きることはない!それまで料理人というのは、格下の存在に見られていた傾向があるが、このマンガで料理人という存在が如何に偉大で尊敬の対象になるのかというのが、このマンガ見直されたような気がする。この時代はまだ料理界は男社会で、女が料理をするというのは家庭だけのことであり、プロの世界というのは、厳しい存在だということをまじまじと見せつけられたマンガでもある。

 味平の父親・松造は五条流(おそらく四条流庖丁道のこと)の免許皆伝者であって、和食において凄い事なのであるが、味平はなぜか洋食を選ぶ。勿論和食と洋食とで、どちらがえらいとかそういうのはないと思うのだが、あえて洋食で、修行をしていく。まあ、結果、物語的には和食勝負あり、日本の国民食といってもよいカレー勝負があり、今でこそブームであり地位を確立したラーメンの勝負がありと、ある意味では時代を先取りしていたのかもしれない。ちなみに昨今ブームになっているつけ麺なんかも、すでにこのマンガで登場している。牛 次郎先生のクリエイターとしての先を見通す力に自分驚いている!なんてたって四〇年前のマンガですからね!

 料理マンガと言う、新しいジャンルを開拓したこのマンガの功績は大きいと思う。70‘年代時代はうごめいていた。勿論マンガの世界にいおいてもだ。アンチ手塚を叫び、様々な人々がマンガにおける表現を模索していた。このマンガもその一つである。新しいジャンルを見つけることは冒険であり喜びでもある。そしてそれを育てようとした編集者たちの懐加減さじ加減が勿論ある。結果、時代は劇画を大頭させ、今日に至る。きっとこのマンガを描いた先生たちはこのマンガを描生き始めた時、神が下りてきたような喜びを受けたと思う。その熱い思いが時代をたっても伝わってくるのである!名作と言うのにはだからこそ時代は寒けないのである。面白いものはいつ読んでも面白いのである。これが結論!

 このマンガ以降、グルメマンガというジャンルが確立し、『美味しんぼ』で、決定的に、一億総グルメ時代に突入したと思う。やはり食べ物というのは、人間三大性欲の一つを制しているものであり、これからも伝統と文化の発展がしていくものであるだろう。その時代に警鐘を鳴らしたこのマンガを、古典としながらも、これから先読み継がれていくことだと自分は思います。

このマンガがすごい!155



タイトル・・・ブラック・ジャック創作秘話

原作・・・宮崎 克

作画・・・吉本 浩二



 過去に『このマンガがすごい!』でも取り上げた名作・『ブラック・ジャック』の創作秘話である。(ああっ・・・そのまんまだっ!)でも、このマンガを読んで、『ブラック・ジャック』を読むと、なお面白いというある意味相乗効果があるマンガでもあって、手塚ファンの方ならば、一読しておく価値のある一冊である。マンガのジャンルとしてはドキュメント的なマンガであって、出てくる人たちがすべて実名で、仮名など使っておらず、資料としての価値もあるといえよう。とにかく徹底的な取材を基に作ってあり、今ではすでに故人となった人もいるので、このマンガ、10年前に書いてあったら、もうちょっと資料的な価値が上がったかもしれない。そういう意味では、少しばかり残念なマンガでもある。でも、まあ今の時代、手塚離れをしている若い世代が多い中、こういうマンガは描くことに意義があると個人的には思っている。それに自分は、『ブラック・ジャック』は個人的に、手塚作品の中で、ベスト3に入ると思っているので、このマンガのことを、あるいは、手塚先生が如何に苦悩して『ブラック・ジャック』と言う作品を生み出されたのか?を、世の中の人に知ってもらいたいと思ってます。

 で、物語であるが、1973年、手塚治虫は劇画の台頭と共に作風が時代遅れと言われた時期があった。事実、この頃、手塚はスランプに落ちいて、作品があまり描けなくなっていた。そんな時、週刊少年チャンピオンの編集長から、『死に水を取ってやれ』の意向のもと、その時の手塚番(手塚先生直属の編集者)に、『医療もの』を描いてくれ、との依頼があった。その結果、誕生したのが、かの名作『ブラック・ジャック』だったのである。手塚はこれを皮切りに、再び手塚後期の作品群を生み出し、再びマンガの神様へと返り咲くのであった。 

 と、まあざっくり書いてしまったが、実際のマンガの内容は、歴代のアシスタントの方々、手塚番と呼ばれた歴代の編集者との取材内容と、再現フィルムのような内容で、100%ドキュメントである。じゃーそのようなドキュメントタッチのマンガが面白いのかというと、これが面白いのである!ダントツに面白いのである!マンガの神様と呼ばれた手塚治虫が実に生々しく、稀代の天才であり、その隠れた裏側にあった努力というものをとうに超えた執念とともいえるマンガに対する熱情が、否応なく伝わってきて、一種異様なマンガに仕上がっているのである。

 手塚先生は、終戦後、すぐにマンガ制作に取り掛かる。終戦後、まだ娯楽に飢えていた人々、特に子供たちには『新寶島』や『ロストワールド』なんかは子供たちを虜にしてしまったのは有名な話である。それからの手塚は押しも押されぬ人気作家になり、いつしか彼を慕う若きマンガ家たちが手塚のもとへ集うのであった。そして数々の名作を描きあげ、マンガの神様の異名を持つようになるのであった。しかし、時代は残酷なもである。なぜならば世の中は常に新しいものを求めるのである。そう、流行というものがある。マンガ家というのは常にこの流行いわゆるトレンディに対して常に敏感でなければならないのである。そうでなければマンガに対して新しい未来の展望が描けなくなるのであるからだ。このトレンディに乗り遅れたマンガ家は、残念ながらマンガ家を廃業となっていくのである。この点、手塚は常に新しいものに対して、敏感であったことがこのマンガでも描いてある。それが手塚マンガに反映され長く愛読されている理由なのかもしれない。

 このマンガの凄いところは、存命の歴代の編集者たち、アシスタントからの手塚への言質だろう。手塚が如何に画に対してこだわり、ストーリーに対して身を削る思いで真摯に取り組んだことがうかがえる。手塚は初めてマンガ業界にアシスタント制を取り入れ、マンガ量産を可能にした。それまでは、マンガの締め切りが間に合わくなると、編集者がベタ塗りの手伝いや、駆け出しのマンガ家たちが手伝ったりしていたのである。今では考えられない事であるが、当時はそういう時代でもあったのだ。勿論、ここら辺のことも、このマンガに描かれていて、貴重な資料文献としての価値を高めている。 

 マンガのアシスタント制は、確かに量産を可能にしたが、それと同時に、マンガを記号化することにも成功している。マンガを記号化することにより、背景やモブシーンなんかはアシスタントが描き、効率よくマンガの大量生産が可能となった。マンガのアシスタント制。今では当たり前だが、これを最初に行ったのは、手塚先生なのである。このいまでは業界のスタンダードのスタイルではあるが、最初にしたのは、やはり凄い事なのである。しかし手塚先生この方法を発見すると、次に手を出したのが、アニメなのである。手塚先生がディズニーアニメの大ファンであったのは周知の事実で、ある作品なんかは100回以上見たとこのマンガに書いてあった。そして虫プロ(手塚治虫のマンガをアニメ化する会社)を立ち上げ国産初の長編アニメ『鉄腕アトム』を敢行するのであった。虫プロの想像を絶する過酷なアニメ制作の苦労もこのマンガに描かれてあって、手塚先生もすごいが、手塚につていったアシスタントたちも凄かったといえる。虫プロは残念ながら倒産するが、手塚のアニメに対する執念は衰えることなく、24時間テレビの特別枠で、2時間放映のアニメでアニメを制作し、この中にブラック・ジャックが登場するのは有名な話である(この時が初めて、ブラック・ジャックがアニメになった!)。

 歴代のアシスタントたちものちに一本立ちし、有名作家になった人たちがいる。例えば、石坂 啓、小谷 憲一、寺沢 武一、わたべ 淳、とり・みき、鴨川 つばめ、他にも大御所の人たちがアシストされたりして、手塚プロダクションは、マンガ家輩出の要となったところでもある。勿論、今ここに書いた人たちのインタビューもこのマンガに描いてあって、このマンガをより面白くさせている一因でもある。そう、正に事実は小説よりも奇なりなのである。手塚治虫の業績はマンガ創作だけではなく、後世のマンガ産業への人員育成でもあったのだ。

 このマンガ、『このマンガがすごい!』(宝島社のやつ!)の2012年度オトコ編1位を受賞している。これは自分も納得で、確かに12年度の中で自分が読んだマンガの中でも、トップクラスであった。そして、なんと!ドラマ化されてもいるのだ。しかしドラマの方は残念ながらバツ。はっきり言って面白くない。というか、よくドラマ化したね~。無謀と言うかなんと言うか、自分不思議である。このマンガいいところの、各方々のインタビューなんかは無し、しかも、手塚治虫の役を、スマップの草彅 剛がやっていて、残念ながら彼じゃあ役不足と言うか力不足。だからこのマンガのドラマ版は見る必要はない!

 このマンガは、ここで、あーだのこーだの言っても仕方がないので、お金に余裕のある人は全5巻を読んでくだっせ。それが一番早い!結論。しかし、このマンガから読み取れるのは手塚治虫というマンガの神様が実はどこか偏屈で奇人でもありながら、人の数百倍マンガを愛し、情熱をかけた熱い男だったということを知ってもらいたいと自分は思いますよ。

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