リフレックス・レメロン(ミルタザピン) | 「双極性障害Ⅱ型」(躁鬱病)&「うつ病」と向き合う小生日記

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2010年6月20日

今回は日本で2番目に新しい抗うつ剤「リフレックス(レメロン)」です。
2009年になって,日本の厚生労働省によって,久しぶりに認可された抗うつ剤ですね。

リフレックスの名前の由来は存じませんが,レメロンという商品名の由来はハッキリしています。
ラテン語の格言「Luctor et Emergo」(苦労するが、やがて苦境から抜け出す/冬来たりなば、春遠からじ)から来ているとのこと。ちょっと格好いいですね。

ゾロフトもそうですが,ラテン語由来の名称は西洋の歴史を感じられて好きです。
リフレックスとかいうフィットネスクラブみたいな名前よりは重みがありますね。

リフレックスはその構造上,四環系抗うつ薬に属します。と言うより,その構造式はテトラミドにそっくりです。
どこが違うかとよく見てみると,ベンゼン環の炭素が一個置換されて窒素になってるだけです。従って,薬理作用もテトラミドに割と似ています。
1日1回眠前服用という用法も同じで、臨床力価もだいたい同じ。

余談ですがリフレックスのベースとなったテトラミドは1966年に開発され,マイナーな抗うつ薬としてそれなりの地位を得ました。三環系抗うつ薬の副作用を克服すべく開発されたテトラミドですが,効果は三環系に及ばない上に眠気は同レベル以上と人気ない理由を揃えており、
レスリンと並んで「うつ患者用の睡眠薬」という不名誉なポジションにあります。


最近の抗うつ薬はSSRI、SNRI、SARI、RIMAなど様々な略称を付けられてますが,リフレックスも例外ではありません。それもNaSSAという最もややこしい名称です。

NaSSAとはNoradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressantの略で,直訳すると「ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性抗うつ薬」です。
読んで字のごとく,ノルアドレナリン神経と「特異的な」セロトニン神経を活発化させるのです。より具体的に言えば、前シナプスのノルアドレナリンα2受容体および,後シナプスのセロトニン5-HT2A/C・5-HT3受容体を遮断します。

前シナプスにおけるノルアドレナリンα2受容体は,ノルアドレナリンの分泌を抑える働きを持つ自己受容体なので,これをブロックするとノルアドレナリンの放出が促進されます。
α2受容体はセロトニン神経にも存在するので、セロトニンの放出も同時に促進されるようです。

セロトニンは不安を惹起したり抑えたりする厄介な物質ですが,後シナプスにおいて5-HT1受容体に結合すると不安抑制,5-HT2受容体に結合すると不安惹起に働きます。

しかしリフレックスは5-HT2受容体を遮断するので,シナプス間隙に貯まったセロトニンは必然的に5-HT1に多く結合することになり,抗不安効果を示します。
前シナプスにおいてノルアドレナリンの放出が増えても不安症状が引き起こされないのは,この効果によるのでは無いかと思われます。

また5-HT3受容体は吐き気や下痢などの消化器症状を引き起こす方向に作用しますが,これを遮断することでそれらの副作用が軽減されるわけです。この選択性が「特異的」なのです。

作用部位はややこしいですが,それらは全て抗うつ効果として都合のいい方面を持っており,効率よくノルアドレナリン/セロトニン神経を活発化させるのです。

再掲になりますが…実は構造式がほとんど一緒であるテトラミド,リフレックスと同じくα2・5-HT2/3受容体を遮断しています。でも抗うつ効果は明らかにレメロンの方が強いです。
その違いはどこから来るかと言えば,テトラミドは前シナプスセロトニン神経のα1受容体をも遮断してしまうんです。

セロトニン神経におけるα1受容体は,ノルアドレナリンの刺激を受けることにより
活発化し,セロトニンを放出する方向に働きます。
これが遮断されると,ノルアドレナリン神経からセロトニン神経に働きかけることが出来ません。
SSRIでも分かるように,抗うつ薬のキモはセロトニン神経の活発化にあるため,テトラミドは抗うつ薬として評価が低いのです。

ノルアドレナリンとセロトニンを増やすというならSNRIと同じでは?
と思うかもしれませんが,SNRIが「再取り込み阻害」,つまり神経を活発化させるのではなく排出口をせき止めてセロトニン/ノルアドレナリンが貯まるのを待つ薬であるのに対し、NaSSAは直接神経を活発化させる薬なのです。この違いは効果の早さに現れます。
リフレックスは服用後から効果が出始めるのが他薬に比べてかなり早く,投与1週目から変化が出る事もあります。
アモキサンに次ぐ即効性と言うことですが,この言い方はむしろアモキサンの底知れなさが際だつ表現ですね(笑)

薬理作用的にSSRIと被らないので,併用することで相乗効果が見込めることもレメロンの利点です。リフレックス+ジェイゾロフト+セディールというキレイな重ねがけも今後出てくるかもしれませんね。セディールは要らん子かも知れませんが…。見事なカリフォルニアブーストとして抗うつ作用を増強できます。

ムスカリン受容体への作用が弱いので,三環系にみられる口渇・かすみ目などの厄介な抗コリン作用も少なく,SSRIに比べても,5-HT2/3受容体遮断により性機能減退・消化器症状がほとんど無い等,明らかに身体への負担は減ってます。

ただ一つ弱点があるとすれば,ヒスタミンH1受容体遮断作用の強さです。
抗ヒスタミン薬が睡眠薬に用いられる様に,リフレックスの傾眠作用はテトラミドと同様かなり強いようです。半減期が丸一日以上と長い薬なので,薬に敏感な人は一日中眠気が続く可能性があります。
ただうつ病は高い頻度で不眠も併発するので,これがメリットになる人も多いと思います。
しかも5-HT2A/C受容体の遮断は,ノンレム睡眠(S3)を増加させ,眠りの質を改善する働きがあると言われています。

折しもランセットという医学雑誌に、リフレックスを含めて12種類の新規抗うつ薬を有用性(効果)と忍用性(継続しやすさ)でランキングした論文が掲載されました。
これによればレメロンの効果は12種中1位で最も高く,継続しやすさは7位と中間になってます。レメロンの主立った副作用は眠気と体重増加(1年服用して+1kg行くかどうか?)くらいしか無いにも関わらず、意外と忍用性が低いのは、そうとう強い眠気がある事を予感させますね。

私も飲み始めは眠気がひどく,睡眠薬いりません状態でした。そして現在アッパー系の抗うつ薬が処方されなくなったので日中から眠いです。社会復帰できるのか?というくらい。

もう一つの副作用の肥満。コレかなりデーターが怪しいんですよね。私の場合52Kg→68Kg,なんと約15キロの増加です。しかも厄介なことに食事制限や適度な運動をしても現状維持が限界です。
ネットで検索すると「2週間で10Kg増えた」「1月で20Kg増えた」なんてコメントがたくさんあります。副作用率も5%と謳ってますが,実際はもっと多いと思います。
この肥満,運動や食事制限でなんとかなるアモキサンやドグマチールに比べて相当性質が悪いです(笑)
私はリーマスとノリトレンの体重減少の副作用と「防風通聖散」でなんとか57Kgまで戻りましたが,ノリトレンを切られたのでこの先どうなるかわかりません,不安です。

話を元に戻しますが,リフレックスの登場によって,抗うつ剤の選択肢が広がったことは、,大いに評価すべきことです。数年前に我が国でパキシルなどのSSRIと呼ばれる新しい作用機序をもった抗うつ剤は期待されて発売されましたが,副作用が少ないという垂れ込みで医師が安易に処方した結果,実は服用者の奇行を生む(まあ,抗うつ剤が必要でない人にも処方されてしまったのが大きいところでしょう)など,さらに病を悪化させるような結果が実際に発現していまい,全国紙に載り,「抗うつ剤=危険」という図式があからさまのように報じられる事態になってしまったことは,あまりにも有名です。

ですから、革新的と言われた抗うつ剤パキシルなどで失敗してしまった方々に対して,リフレックスのような新しい選択肢が生まれたことは歓迎すべきことだと私は思います。

まとめとして
・即効性であり,効果が実感しやすい
・SSRI,SNRIと併用することで抗うつ作用を増強する
・抗コリン系の副作用がない
・一応全抗うつ薬で薬効が一番強い
・一日一回服用であるため服薬が楽

・服薬者の半数で傾眠の副作用が起きる
・肥満の副作用が発現したら,かなり酷い目に合う(服がワンサイズ変わるかも?)

こんなとこでしょうか?
余談で体重増加について。
副作用にハマったらひどいです,食べなくても太ります,そして餓鬼のように手当たり次第食べ物を食べ尽くします。女性としてはかなり深刻ですよね。
これがストレスとなってウツが悪化した方もいるそうです。
どうやらリフレックスは肥満神経もやや刺激してるらしいのですが,個人差によってかなり違うそうです。
刺激がないヒトは全く太らないですし,刺激があるヒトは…悪夢です。。。

ここで朗報?
日本では困難ですが,諸外国ではリフレックスは痩せ薬として使われているそうです。
これまたリフレックスの不思議なんですが,高用量を用いるとダイエット薬になるそうです。

私が見た資料では60Mg~開始と書いてあったので,残念ながら日本ではムリです,45Mgが最高処方用量なので。
重複多受診を行えば可能なんでしょうけど,リフレックス自体が高いお薬なので,確実に効果を上げたいのなら,美容形成外科でサノレックス(保険適応なし)の処方を受けるのもありかも知れません。

他にもダイエット方法はありますが。
気になったらメールくださいませ。

まとめではあげてませんでしたがリフレックス,結構な確率で腰折れ効果があるそうです。私もノリトレンが効きすぎていたからわかりませんが,ノリトレンなき今リフレックスの抗うつ作用,結構胡散臭いというか効いてない気がします。

最初は勢いよく効いてくれるのですがいきなり効果が実感できなくなる腰折れ効果。
まんざら嘘じゃないんだなと感じています。

あと傾眠がひどいので,完全に休養モードに入ってる方にお勧めの薬ですね,他の抗うつ剤とは違うアプローチで効果を発揮しますし。
逆をいうと忙しい現代社会人には向きません。デパスのように効果がピンポイントならイイのですが,一回飲むとその日から2日はずっと眠い状態が続くのですから。
個人的にはノルアドアンタゴニストのSNRIと併用すれば,少しは眠気が収まるのではないかと思います。

ちょっと今回長すぎましね(笑)