都内のある場所で、☆まこさんを見かけた。
彼女はベンチで本を読んでいた。
「 こんにちは 」
「 ・・・ あ、おじさん、こんにちは! 」
「 なにを読んでるの? 」
「 うふふ、ナイショ 」
「 洋書だね 」
「 ・・・ ねえ、おじさん、若いころFMのエアチェックとか、しました? 」
「 いや、全然 」
「 なあ~んだ、つまんない。名曲喫茶とかは、行きました? 」
「 申しわけないけど、そっちもないな 」
「 ええっ ・・・ つまんないの。咲かないじゃないですか 」
「 咲かない? 」
「 話に花が 」
「 あ、そういうことか。たしかにダメだね、ぼくは 」
ぼくたちは無言のまま散歩を始めた。
「 こういう風景が好きなんですか ・・・ 」
「 ん、まあ、嫌いではない 」
「 この歳になると、落日の光景に惹かれるんだ。なぜだろう 」
「 やばいですね 」
「 やばいか 」
「 そうとう、やばいと思いますよ。音楽に喩えれば ・・・ 」
「 喩えれば? 」
「 プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲、それも2番のほうかも、フフフ 」
「 笑いながら云われると、気持ち悪いな 」
セルゲイ・プロコフィエフ
ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調、作品63
ナタン・ミルシテイン Vn
R.F.デ・ブルゴス / ニュー・フィルハーモニア
録音 : 1966年
「 そういえば ・・・ 」
「 うん? 」
「 デ・ブルゴスさん、お亡くなりになりましたね 」
「 なんか不吉。やめてくれる、そういう話 」
「 おじさん ・・・ 」
「 だから、なに? 」
「 天命を知りましょうね、いい加減 」 (笑)