ニーハオ、アシシです。

ちょっと前の話になりますが、北朝鮮から帰ってきた翌日に中国・丹東で起きた、信じられない「奇蹟」について触れたいと思います。

物語風に書いてみようと思います。写真ゼロの単調な文章ですが、お時間ある時にご覧ください。



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2009年8月27日(木)朝。

前日に平壌から無事生還し、僕は完全に気が緩んでいた。

3泊4日の北朝鮮ツアーを楽しみつつも、常に得体の知れない緊張感をひしひしと感じていたのは確か。そんな極度のプレッシャーから解放された安堵感からか、馴染みのある中国に戻ってきた居心地の良さに埋もれながら、僕は注意力が散漫になっていた。

午前9時30分。ヨモケンと共に丹東のホテルをチェックアウトし、11時丹東発北京行の国内便に乗るべく、タクシーに乗る。

午前9時45分。丹東空港到着。タクシーの運ちゃんに「再見(ザイチェン)!」と声をかけ、タクシーを降りる。

空港内に入り、僕は気付いた。





「あれ?ちょっと待って!ノートパソコンがない!!」





日々ブログを上げまくる「世界一蹴の旅」において、命の次に大事なノートPCを手に持っていないことに気付く。

普段はバックパックにPCを格納してるのだが、チェックアウト直前にロビーでPCを開いていたため、PCケースに入れて、手に持って移動していた記憶を辿る。





「可能性として挙げられるのは、ロビーに忘れたか、もしくはタクシーの座席に忘れたかのどっちかだわ・・・」





中国語が話せるヨモケンにホテルに確認の電話をしてもらってる最中、僕は空港外のタクシー待ちの列に行ってみるも、つい5分前に乗っていたタクシーは見当たらず。。

タクシーのレシートをもらわなかったため、タクシーのナンバーは不明。しかし、車の外観からタクシー会社を特定し、これもまたヨモケンにお願いして、忘れ物が届いたら自分の携帯に連絡をしてほしい旨を電話してもらう。

その後、空港警察の事務所に出向き、調書を取ってもらう。空港入り口に防犯カメラがあったので、録画映像をチェックし、タクシーのナンバー確認を試みるも、画像が荒すぎて確認できず。





万事休す。。





時間は刻々と過ぎ、搭乗時刻の10時30分。





とはいっても、PCを諦めて北京に行くのは有り得ないので、PC発見のわずかな可能性に賭け、アシシは飛行機をキャンセル。

ヨモケンはこのまま丹東に残っても埒があかないので、予定通り北京行きの飛行機に搭乗。

彼氏彼女、もしくは女の子同士での旅であれば、こういう状況で片方が予定通り旅を続け、片方が現場に残るというのは有り得ないかもしれないが、我々の場合は情うんぬんより費用対効果で物事を判断するので、非常に妥当な選択と自負している。





このまま空港にいてもどうしようもないので、アシシは滞在していたホテルにタクシーで移動。

空港警察から連絡を受けた交通警察がホテルに来ており、英語が堪能なホテルマネージャーに通訳をしてもらいながら、別の警察官からまた同じような質問を受ける。

まずは今日の丹東滞在は確定のため、カウンターで延泊申請を済ませ、チェックイン。今日北京で滞在予定だったホテルにもキャンセルの旨を電話。

PCを発見できなかった場合のリカバリプランを整理。兄邸に預けている予備ノートPCの空輸手配、駄目元での海外旅行保険の申請、外付けハードディスクに入っているバックアップ写真データの存在確認など、優先順位を付けながらToDoListを仕上げる。

リカバリプランとは別に、PCを発見するための施策も考えてみるが、記憶にあるタクシードライバーの顔を頼りに、街中の黄色タクシーをしらみつぶしにあたっていく、という現実感のない方法しか思いつかない。。

そうこうしてるうちに時間は14時を回る。

朝から何も食べてないが、全く持って食欲が湧いてこない。

ちなみに今こうやって淡々と文章を書いているが、当時の自分は、自身の愚行を激しく後悔し、これからの旅路を猛烈に不安に思い、心ここにあらずといった感じで、もぬけの殻状態。



とりあえず、街に出てタクシー捜索に乗り出すか・・・と疲労コンパイルエラーを起こしてる重たい身体を起こし部屋を出ると、ロビーにてホテルマネージャーに声をかけられ、交通警察の調査進捗状況を報告してもらった。

空港警察から先程連絡があり、僕が空港を出た1時間後、昼くらいの時間帯に空港の入り口で日本人を探してるタクシードライバーがいたらしい、とのこと。





その日本人って絶対俺じゃん!!!(≧∇≦)





一気にテンションが上がる。





今空港で別の警察が対応してるからちょっと待てと。

まだPCの実物を発見したわけではないので期待するな期待するな、と独り言を呪文のように唱えつつも、妙に心が浮足立ってしまい、待ってる30分の間、ひたすらロビーを行ったり来たり。一般客から見たら、確実に精神異常者と思われていたはず。





そしてとうとう、先程の交通警察の警察官が乗ったパトカーが到着。

それに続く形でタクシーも横付けし、5時間前にタクシー料金精算後、満面の笑みで「再見(ザイチェン)!」と声をかけてくれたあの彼が、その時と全く同じ笑顔で、ノートPCを抱えて登場。





涙が止めどなく流れ、そのおっちゃんと何度ハグしたことか。。





そのドライバーに御礼金を渡し、警察官にも渡そうとしたら断わられた。

その後、ヨモケンにPCが見つかった旨を連絡し、北京行きの飛行機とホテルの再手配を完了。翌日北京に追い付くことで、旅路を無事キャッチアップすることができた。





この自作自演の事件を通して、中国という国に対する僕の印象はガラッと変わった。

去年9月に上海ジョブを去る際に書いた日記。

僕にとっての「中国」 http://atsushi.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-60d0.html



この経験を通して、去年の上記日記で貼り付けた「レッテル」は確実に剥がれた。

空港警察・交通警察の人達、空港のタクシー乗り場の他のドライバーの人達、付きっきりで通訳をしてくれたホテルのマネージャー、そして何よりも、業務中なのに忘れ物を持ち主に返そうと僕を探してくれた運転手、全員がとても親切な人で、中国人に対する固定観念は脆くも崩れ去った。




全ての中国人がこんな親切なわけはないが、上記に挙げた人々のうち、ひとりの協力でも欠けていれば、PC発見には至らなかったと思う。

そういった意味で、僕は丹東という街で、本当の意味での「奇蹟」に巡り合ったと思える。




タクシー内にノートPCを忘れるという、人として終わってる愚行をその日知り合った現地人みんながカバーしてくれたこの奇蹟を僕は一生忘れない。

ありがとう。



ちなみに、世界一蹴の旅の最中、涙を流すのはこれで最初で最後にしたいと思いますw



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