マルコ「実はマイカはね病気なんだよ」
マイカ「・・・」
ナナシ「病気?それはこの病院では治せない病気なのか?」
マルコ「ああ、DNA、つまり血液の病気なのだよ」
マルコ「生まれながらの病気なのさ、今まで見た事も聞いた事もない病気だ」
ナナシ「それは痛いのか?」
マイカ「・・・いいや、痛みは無いし症状も無い」
マルコ「そう、痛みも無い症状も無い、発見もたまたまだった」
ナナシ「たまたま?」
マルコ「そう、ちょうど一年ほど前かな、マイカが突然倒れた」
マルコ「何の前触れも無く、今まで一つも病気をした事がないのにだ」
マルコ「精密検査をしたところ、マイカの細胞の寿命が大変短い事が分かった」
マイカ「・・・そう」
ナナシ「寿命が短いって、あとどのぐらいなの?」
マルコ「あと一年あるかないか・・・」
ナナシ「そうなのか、なのに僕は・・・」
マイカ「まあ、気にするなよ、ナナシのせいじゃないし、それに俺今すっごい楽しいし」
マルコ「そうだ、ナナシは何も気にする事はないさ、むしろこれからもマイカをよろしくたのむ」
ナナシ「はい・・・、でも寂しいね、本当に何とかならないの、なんか悔しいよ」
マイカ「しょうがないさ、だから俺は目一杯今を楽しむ」
ナナシ「しょうがない・・・か」
マルコ「ナナシくん一つお願いがある」
ナナシ「はい、何でしょうか?」
マルコ「この事は内緒にして欲しいんだ」
ナナシ「内緒にですか、分かりました、その方がいいのなら」
マルコ「みんなに変に気を使われたくないだろうから、頼むよ」
ナナシ「分かりました」
マイカ「なんか悪いねナナシ」
ナナシ「何であやまるの?」
マイカ「一緒に親を探し行けなくてさ」
ナナシ「そんな事、謝る必要なんか無いさ、それに僕はここに残る」
マイカ「それはダメだよ、ここに残っても自分のことは何も分からないよ」
ナナシ「大丈夫さ、僕には時間はある、最後までマイカといる」
マイカ「・・・ああ、ありがとう」
マルコ「すまないね、私にもっと知識があれば・・・」
マイカ「父さんは悪くないさ、それに、俺は父さんに感謝してるよ」
マルコ「感謝?私は別に何も・・・」
マイカ「俺は知ってるよ、父さんは必死で治療法を探しているって、ひと時でもあきらめた事がないって知ってるよ」
マルコ「そんな事・・・、そんな事当たり前だろう、お前は私の一番の宝だ、お前は私自身なのだから」
ナナシ「私自身?」
マルコ「そう、昔にな、イエダさんに言われたことだ」
マイカ「イエダさんに?」
マルコ「そう、マイカが生まれてすぐイエダさんが挨拶に来てくれてね、そして言ったんだ」
ナナシ「何て言ったんですか?」
マルコ「この子は特別だって、自分の分身であって、一番愛する人の分身でもあるって、だから自分を好きな分だけそして相手の事が好きな分だけ、この子を愛してる事に気付いて下さいねって」
ナナシ「すごい深い事言いますね」
マイカ「・・・」
マルコ「ああ、あのお婆ちゃんはすごいよ本当に、まるで全てを知ってるかのようだ」
ナナシ「物知りですもんね、きっと色んな経験をしているんですね」
マイカ「父さん・・・」
マルコ「どうしたの、下なんか向いて?」
マイカの目からゆっくりと涙が流れ出て、そのまま床に落ちた。
マイカ「父さんごめんね・・・、俺・・・、何もしてやれない・・・」
マルコ「そんな事・・・、お前は私の自慢の息子だよ、私の誇りだ」
マルコは泣くマイカににそっと近づき、ゆっくりと深々とマイカを抱きしめた。
ナナシは二人を見て初めて寂しさを覚えた、きっと助ける方法はあるはずだと、もと色んな事を覚えないと、自分に言い聞かせ自分に更なる成長を自分に誓う。
そして、すこし開いた扉の向こうに一人涙を流す看護婦。