都内の沿線で



素敵な方を見掛ける率No.1


を誇る銀座線。(※吉田調べ)





その銀座線で偶然見掛けた


長澤まさみ瓜二つの女性。(以下 長澤)



イチゴな日々


長澤を見掛けた瞬間



余りにも本人とそっくりだった為



一気に胸の高鳴りを覚えたものの・・・





私の目的地は


長澤が向かう方向と全く別だった為



すぐに、その胸の高鳴りを忘れ・・・



長い長い帰り道⇒小旅行をしなければならない


と言う、現実に引き戻された。




はずだったのだが




小旅行、最後の難関の小田急線


長澤と奇跡の再会(一方的な)を果たす。





そして、普段は全く座れない小田急線にて



長澤の隣に座れると言う



新たな奇跡を迎えたのだが・・・






***********



長澤の隣の席が空き


意気揚々と、その席に座るも



目の前に立っていたおばあちゃん


気が付き・・・





迷って迷って迷って迷った挙句




断腸の思いでおばあちゃんに席を譲り・・・




その悔しそうな顔を、誰にも悟られない様


長澤(と、隣に座るおばあちゃん)に背を向けて



長い帰り道、小田急線小旅行の続きが再開した。






これで・・・



良かったんだよ、これで・・・





心底、残念がっている私を待っていたものは




次の停車駅と・・・




良い事をすれば良い事が返ってくる



と言う因果応報の教え、そのものだった。







次の駅に電車が停車して




ここで、どれだけの人が降りるんだろう?




と、開く扉を見る為に


振り返った時だった。











長澤の隣が空いてる!!





私がおばあちゃんに譲った席とは


反対側の席が空いたのだ。



≪解説図≫



 ●  長澤  おばあちゃん



 ● ⇒ 空いた席







前述の通り



帰宅ラッシュ、都内を走る小田急線


座れる事は滅多に無い。





その滅多に無い奇跡が


一度ならず二度も起こるなんて・・。




しかも、その二度ともが・・・





長澤の隣



と言う、まるで




奇跡のバーゲンセールの様な


状態だったのだ。





良い事をすれば



良い事が返ってくるって言うけれど・・・






返ってくるの早くね?






因果応報律



余りのレスの良さ


若干驚きはしたものの





空いた長澤の席を


電車に乗り込む乗客より


いち早くゲットした私






・・・今度は



・・・周りに席を譲る様な人は





居ないよな・・・?







願う様な気持ちで


辺りを見回す。




今度は大丈夫だった。




ようやく巡り廻った


奇跡の恩恵を受ける事が出来る。




後は、限りのある残された時間



長澤の隣と言う奇跡を


ただただ静かに・・・



喜びを噛み締めながら・・・




味わう・・・だけ・・・・








味わ・・・・







・・・・?






はっ・・!?






俺、・・・






寝てた?





ようやく廻った奇跡



連日の小旅行を経た私の身体は



それすらを味わう事を許さなかった。





なんて勿体無い!!



せっかくの貴重な時間なのに・・・





・・・長澤は!?





そう思うと同時に


左半身に若干感じる違和感。




違和感の先に目をやると・・・




私の左肩に触れるか触れないかの距離に


頭を預けて眠る長澤の姿が、あった。





私の嗅覚を優しく包み込む


長澤のシャンプーの香り・・・







何、このシチュエーション?





めちゃめちゃ


オイシイ展開になってるやんけ!!






いつまでも


この時間が続けば良いのに・・・





そう願う、私の気持ちを


知ってか知らずか



奇跡の小旅行には、更なる展開が待っていた。






我々が乗っていた小田急線は急行だったのだが



その急行列車が


通常止まる事の無い駅で停車をしたのだ。





暫く停車をしたままの状態



その異変に気が付き、ざわつき始める車内。





その状態に気が付いたのか



私の左肩に預けかけていた


長澤が目を覚ました。





そして車内には


事態を告げるアナウンスが響いた。




~現在、○○ ~ ○○間で


 列車と車との接触事故が発生した為


 運転を見合わせております~







そのアナウンスを聞き


更にざわつき始める車内。






長澤


より長く一緒の空間に居られる






ざわつく車内とは対照的に


この非常事態を喜ぶ私が居た。





そして、次のアナウンスで


事態は更に急変する事になる。






~○○~○○間で起きた列車と車との接触事故の影響により


 この電車、終点を秦野止まりに変更をして


 運転を再開致します



 尚、秦野より先の運転は再開を見合わせて・・・~






そのアナウンスを聞き


更にざわつき始める車内。





ざわついた人の殆どが


秦野より先、運転の再開を見合わせられてる所が


目的地なんだろう。





生憎、私の目的地は


その秦野だ。



申し訳ないぐらい


この事故による影響が私には無い。





長澤は・・・


影響があるのかな・・・?)







銀座線から一緒の長澤



毎日の小旅行を送ってる私より


目的地が遠いなんて・・・


まず、有り得ない。





そう思った


矢先の出来事だった。










つづく



(※過去記事再掲載)


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東京に戻ってきてから



早いもので


1ヶ月が経とうとしている。





1日でも早く


東京の環境に慣れようと思いながらも

まだ、心のどこかで


長い東京出張の様な感覚に陥っているのは



大阪を離れた寂しさから


来るのかも知れない。





大阪を離れる際

慌ただしい最後を迎えた為


東京での新居の準備が間に合わず



関東に戻ってきてからは


仕方なく実家の神奈川(奥地)から


片道3時間を掛けて通勤している。




毎朝、6時40分には


最寄駅に向かうバスに乗り込む。







旅だ。

毎日が軽い小旅行。



下手すりゃ大阪まで通える範囲。







しかし、この小旅行



なにも悪い事ばかりではない。





携帯音楽プレーヤーから流れる音楽



新旧、ジャンルを問わず


耳に入ってくる音楽達は


その曲、一つ一つに大なり小なり


思い出が詰まっており


車窓から流れて見える風景や


車内でひしめき合う人達を眺めながら


その思い出に浸っていると・・・





長い小旅行に伴う苦痛は


不思議と気にならなくなる。




(よし、今日も頑張るぞ)



長い通勤時間は


私のやる気スイッチになっていた。






そして、時には


その小旅行で



思いがけないドラマが生まれる事だってある。








*************


今から、4年前。



今の仕事に転職したばかりの私は


今と同じ様に、長い時間を掛けて通勤をしていた。





小田急線を約1時間


その後、千代田線銀座線と乗り継ぐ


毎朝の小旅行は




決して楽ではなかった。




こりゃぁ


早いとこ都内に引っ越さないとな・・・





どんなに、小旅行の快適な過ごし方を見つけても


それをずっと続けていくのには、流石に無理がある。




引っ越しを決めてから


私は、あっという間に準備を整えた。




そして


片道3時間の小旅行通勤が


残り僅かになったある日の帰り道





ドラマは生まれた。






いつもと変わらぬ帰り道。



銀座線を降り


千代田線に乗り換えようとした時だった。





素敵な人を見掛ける率 不動のNo.1


を誇る銀座線 (※2008年 吉田調べ)





その銀座線を降りる時に


いつもと変わらない帰り道が



特別な日に変わった瞬間だった。















長澤まさみ?


イチゴな日々




勿論、誰もが知ってる


あの、長澤まさみではない。




しかし、この時見た彼女は




背丈


顔の雰囲気


髪の色


髪の長さ



その、全てが写真の長澤まさみ本人に


瓜二つだったのだ。





さすが、銀座線


相変わらず不動の1位の座を誇るだけはある。


(※あくまで吉田調べ)





ただ、そんな衝撃を受けたとしても


ここは華の都、大東京。






1日で何十人


下手すりゃ、何百人も擦れ違うこの街で


そんな特別な出会いを気に留めていられる様な


ゆっくりとした時間は、ここには流れていない。





銀座線を同時に降りる


長澤まさみを、少し目で追ったものの


私とは別の方向へ向かう彼女への興味が


そのまま続く訳でも・・・無く


私は千代田線へと向かった。




閑散とした千代田線を乗り継ぎ


小田急線へと乗り換える。





小旅行


最後の難関でもある小田急線




最後の難関たる由縁



それは・・・



帰宅ラッシュを過ぎても混雑した車内


かつ、郊外から都内に通う人間が多いこの路線


1時間以上掛かる私の目的地へ到着するまでに


座れないなんて事は、ざらにある。




文字通り


小旅行、最後の難関なのだ。





小田急線に乗り込み


相変わらず、ぎゅうぎゅう詰になった電車が発車をする。





その後



駅に到着をする度に


人の流れに巻き込まれながら下車をし


人の流れに巻き込まれながら乗車を繰り返しながら



小旅行の目的地へと近付いていた。





相変わらず人が減らない車内・・・



いつしか私は、車両の端へと追いやられていた。





こんなに混んでたら


携帯音楽プレーヤーを鞄から出すのが


難しいな・・・




そんな事を思いながら


ふと、視線を


目の前に向けた。













長澤まさみ・・・!?





そこには先ほど銀座線を降りる時に見掛けた


長澤まさみ似の、あの女性が立っていたのだ。





(まさか、また巡り合える事なんて・・・)




そんな事を想像すらしていなかった私は


一気に胸の鼓動が高まるのを感じた。





長澤まさみ(以下 長澤)がどの駅で降りるか分からない。




(でも・・・



さすがに1時間以上掛かる俺よりは


先に降りちゃうよな・・・)




それを考えると、少し残念ではあるが


今回の小旅行での楽しみが増えた瞬間だった。






程なくして・・・




長澤の前の席が空き


空いた席に長澤が座った。




その前に立つ私・・・。








そりゃ、見ちゃうよね?




見てるのがばれたら


迷惑を掛けてしまうのは充分に自覚をしていたので


私は、長澤にばれない様にチラ見を繰り返した。







見れば見るほど長澤まさみにそっくりな彼女。





そして、思いもよらない奇跡が


私の元へと舞い降りた。






次の停車駅で


長澤の左隣の席が空いたのだ。





まだ都内を走る小田急線


座れる事すら奇跡なのに・・・






まさか・・・



こんな特等席に座れるなんて!!





私は、その嬉しさを極力表に出さない様に


長澤の隣に座った




瞬間だった。






座った私の目の前に


今までは背中越しで気付かなかったが





おばあちゃんが立っていた。






周りを見渡すも



座席は全て埋まっている。






ようやく手に入れた


奇跡の特等席から


立っているおばあちゃんを見つめる私。






通常だったら

我先に、おばあちゃんに対して席を譲るところだが



今日の状況は、いつものソレとは違う。





今、私が座っているのは


奇跡が奇跡を呼んで生まれた


特別な席なのだ。







・・・おばあちゃん




・・・ごめん。。。





そう思い込んだ








はずだった




『・・・おばあちゃん





良かったらどうぞ





不意に声を掛けられ


ビックリした様に振り返るおばあちゃん




『・・・いやいや


良いんですよ、お気遣いなく・・・』




特等席を立ち上がり


空いた席を指さす私に


遠慮がちに答えるおばあちゃん




『いや、大丈夫ですから・・・



是非、どうぞ!!』







長澤の隣は


確かに惜しかった。




でも、ここで


おばあちゃんに気付かないフリをして


奇跡の特等席に座っているのは





もっと・・・


後悔をしてしまいそうだった




そんな事を思ってからの行動だった。






『良いのかい・・?


悪いねぇ・・・』





そう、頭を下げて


長澤の隣に座るおばあちゃん






(良いんだ



・・・これで、良いんだ)






私の年でも堪える小田急線の長旅。



御老体ならば尚更の事だろう。






私は、強引にそう思い込み



残念そうな顔を隠すよ様に


長澤おばあちゃんに背を向ける様に立った。





因果応報




良い事をすれば良い事が返ってくる


悪い事をすれば悪い事が返ってくる






誰もが一度は聞いた事がある


古くから伝わるこの言葉の意味を





電車が次の停車駅に到着した瞬間




私は実感する事になる。









つづく



(※過去記事再掲載)


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終電をとうに過ぎた深夜の新橋



最近は専ら


この街で夜を過ごす事が多くなった。




サラリーマンの街として代表される事が多いこの街は


どの店を覗いてもスーツ姿のサラリーマンで溢れている。




今では私も


すっかりその一員だ。





先日、その新橋で


私は行きつけのBARに行った。





カラオケ、ダーツ、そしてお酒・・・




その全てが揃っているこのお店は


他で来ているお客さんと交流が生まれる事は


珍しい話ではない。






『オニイサーン


歌ジョーズデスネ!!』





カラオケが歌い終わった私は


不意に声を掛けられた。





掛けられた声の方を向くと




そこには大柄な白人男性が立っていた。






『モイチド聴カセテクダサイ!!』





こうして交流が突然に生まれる事は


このお店では日常茶飯事だ。




『オー!イエスイエス!


何か好きな歌はアリマスカ!?』






お酒と音楽



この2つが揃えば


初対面の壁なんてあっという間に無くなる





『オニイサン、名前ナンテ言ウンデスカ?』




『私の名前は吉田と言イマス!



ナオって呼んでクダサイ!』






伝染率の高い、片言の日本での会話は



深夜の新橋を、より賑やかにさせていた。








『トコロデ、ナオサン』





『ん?』





『英語ハ喋レマスカ?』






私に声を掛けてきた白人男性



名前をジョージ(仮称)と言い


どうやら、あまり日本語が得意ではない様だった。




そんなジョージ


私は申し訳なさそうに答えた。





『オー、ソーリー ジョージ


アイキャン ノット スピーク イングリッシュ!』





その発言を受けて


少し困った様な表情でジョージは答えた。







その顔で?









え?






『ソノ顔デ英語喋レナインテ


残念デスネ~』






『・・・え、・・あ・・



・・ごめんなさい』







*****************


ジョージとの時のみならず



私は、このオリエンタルな顔つきのせいで


良く、海外の方から声を掛けられる。




そして、その声を掛けてくる殆どの方が


私の事を英語が出来る人間だと思って


話し掛けてくれる。





しかし、前述の通り


私は、全くと言って良い程に英語が喋れない。







英語が喋れるのかな?



と言う淡い期待を


見事に裏切ってきているのが現状だ。






『せっかく見た目が喋れそうなんだから


英語、勉強すれば良いのに』




そんな言葉を掛けられる事は


少なくない。






しかし、それでも


未だに英語が喋れないのには




ちょっとした理由がある。









*****************


今から10数年前


私が、中学校に入学した頃まで


話は遡る。





私が通っていた中学校は


1学年が約300名強



それが3学年とあるので



全校生徒が約1000人近くと


いわゆるマンモス校だった。




マンモス校で迎えた新学期



見慣れない校舎


慣れない学ラン


新しい出会い・・・





私の中学生活のスタートは


希望に満ち溢れていた。







中学生になると環境が変わる他に


勉強する教科が変わる。




算数 ⇒ 数学 


と、呼び名が変わる他に


新たな教科を勉強する様になる。





その一つが英語だ。




それまで、英語に触れる機会が


全く無かった私が



eggapple



聞いた事はあるけど書く機会の無かった


英単語達に触れられる英語の授業は、楽しみでもあった。






そして迎えた


中学生になって初めてのテスト。




国語、数学、理科、社会・・・


どの科目も、そつなくこなしていき




初めて体験をする



英語のテストの日を迎えた。






英語のテストの最初の問題。




======================


問1



アルファベットを順番通りに


全て書きなさい。


======================





楽しんでいた英語の授業だったが・・・



実際は、文法が絡んできた辺りから


ついて行けなくなっていた。




そんな私でも、流石に楽勝と


言わざるを得ないぐらい簡単な問題だった。






その後の問題も、とりあえず記入をして



中学に入って初めてのテストを何とか終えた。







数日後。




各教科の授業毎に


それぞれのテストが返された。





・・・どの教科、可もなく不可もなくな点数。




『まぁ、こんなもんだろ』

そんな思いの中


英語の授業を迎えた。





教壇に居る先生に呼ばれ


出席番号順に呼ばれた生徒


それぞれが答案用紙を取りに行く。






『次、吉田ー』




出席番号が後ろの私がようやく呼ばれ


先生のところへ、答案用紙を取りに行った時だった。





『お前は、基礎をもっとしっかり勉強しろ』





そう、先生に言われて




(・・・基礎?



・・・何の事言ってるんだろう?)





私はそう、疑問に思いながら


自分の答案用紙を見た。





======================


問1


アルファベットを順番通りに全て書きなさい。


======================





この、簡単だと思っていた問題に


ペケがついていたのだ。








え?





ちょっと待ってちょっと待って




流石にこの問題を


間違えるなんてあり得ないだろ!?







しかし、幾ら答案用紙を見返してみても


自分ではミスに気が付けず


隣の子と、一緒になって答案用紙を見た。




そして、すぐに


隣の子は異変に気が付いた。





『ちょっと・・・ここ・・・』




『え、え?どこ?』






======================


問1



アルファベットを順番通りに全て書きなさい。




A B C D F G H I J K ・・・


======================






『これさ・・・





」じゃなくて


カタカナの「」だよね?

















『流石に・・・


この間違いは無いと思う・・・』





『・・・うん・・・無いと思う・・・』









これが、全ての始まりだった。









その後、迎えた理科の授業。





返された答案用紙を見て



私は更に驚愕をした。






======================


問1



次のタンポポの種類を答えなさい。


イチゴな日々


======================





タンポポの在来種外来種を見分ける問題。



矢印が指している、総苞片(そうほうへん)と呼ばれる


部分が写真の様に、ヒラヒラしているのが外来種となる。


在来種はヒラヒラしていない)





こんな簡単な問題


言わばサービスに近いこの問題




返ってきた私の答案用紙には




ペケがついていた。








なぜ?






そう思い


答案用紙を良く見直した。







======================


問1



次のタンポポの種類を答えなさい。




イチゴな日々




セイEウタンポポ


======================






どこがおかしいんだ・・?



セイ・・・E・・





・・・









それ「ヨ」じゃなくて



「E」だよね?






まじか!まじか!!


幾らなんでも、その流れでの間違いはないだろ!!




『さすがにそれは


あり得ないんだけど』




そうクラスメイトから


失笑気味に言われたけど





間違ってる本人が


一番そう思ってるから








あり得ねぇ・・・』







こうして、私は「E」の呪縛に


付き纏われる事になった。








*****************


色々な事があったが


中学時代のスタートは


悪い事ばかりでは無かった。




同じクラス、違う小学校から来た


さとみ(仮称)との出会いだった。




当時、大人気を誇っていた


デビュー当時の内田有紀を彷彿とさせる様なショートカット



それが良く似合っていたさとみ



私は恋をした。





恋をしたと言っても、所詮、中学生。



何をする訳でもなく


ただひたすら片思いの


恋に恋をしている状況が続いた。





しかし、ある日




『このままじゃダメだ!』



そう、思い


とある日の、放課後



私はさとみを教室に呼び出して



告白をした。









結果は惨敗。





そりゃそうだ。




一方的な片思いだけで


さとみは私の事など何も知らないのだから。





今になってみれば簡単に分かる事だが


その当時には、何故振られたのかすらも分からず


私は、諦めきれないさとみへの気持ちを抱き続けていた。






諦めきれない想い



どうしてもその想いを捨てきれない私は



更なる行動に出た。






当時、私の周りでは


好きな人へ、自分の好きな曲をダビングした


カセットテープをプレゼントをする事が流行っていた。




その想いが詰まったカセットテープを


さとみへプレゼントする事にした。




当時、良く聞いていた好きな歌を


思い思いに選曲をして


オリジナルテープを完成させた。





カセットテープのラベルには


収録されている曲名



それと・・・



さとみへの思いを


ラベルの一番目立つ場所に綴った。






アイラブ サトミ






既に英語に苦手意識を持っていた私でも分かる



単純かつ明快なフレーズ。






そして、私はそれを


私とさとみの共通の友達へ


さとみへと渡す様にお願いをした。







一度、振られてからは


直接、声を掛ける勇気すらない。




そんなさとみに対して


いきなり「アイラブ サトミ」なんて書かれている


カセットテープを渡しても


さとみの気持ちがなびくなんて考えてもいなかった。





ただ、諦めきれない自分の気持ちをどうにかするには



当時はこの行動しか思い浮かばなかった。







そして、カセットテープを渡してもらった


翌日






いつもの教室に


異変が起きた。






私はその異変に特に気が付かないまま


カセットテープを渡してくれた共通の友達を


呼び出した。






『さとみにカセットテープ


渡してくれた?』





『ちゃんと渡したよ』






『・・・で



さとみの反応はどうだった?』





『反応も何も・・・








さとみ、めっちゃ笑ってたよ』






『・・・え?



・・・笑ってた?





・・・笑ってたって、どうゆう事?』






『私も何がおかしいのか分からなくて


さとみが持ってるカセットテープを


見せて貰ったけどさ







あれさ・・・




I LOVE SATOMI



じゃなくて



I LOVE SATOME



ってなってたから』









え?








さとめ、って誰?


って、めっちゃ笑ってたよ







『・・・え、え?嘘??



だって「ミ」って「ME」じゃないの!?




I My Me Mine



って、この前習ったじゃん!?』






『あのさ、ローマ字だったら



「ミ」「ME」じゃなくて「MI」だから






『・・・あ、そうなの・・・』







そうか、そういう事か。





いつもだったら「さとっぺ」って


呼ばれてるさとみ




今朝に限って






さとめ


って、呼ばれてるのは


これが原因だったのか。







「I」だが


「My」だが


「Me」だが知らないけど・・・






英語なんて


大ッキライ!!






*****************


あれから、10数年経った今


私は、未だに英語に対して


苦手意識を持ったままだ。




そして、奇しくも


今では英語を求められる様な


機会に恵まれている。





苦手な部分を



今まで曖昧にしてきた私。




そろそろ少しぐらいは



苦手意識を克服した方が良いのかも知れない



そう、思うようになってきたこの頃。



イチゴな日々


当時悩まされた「E」の呪縛は


今でも、突如としてやってきます。




でも、その出来事で


少しでもE笑顔が増えてくれるのならば


幾らでも綴っていこうと思ってますイチゴ


(※過去記事再掲載)


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突然だが、皆さんは




接待


と、言う言葉を聞いて


どんな世界を想像するだろうか??






クライアントを歓ばせる為に


会社のお金を遣い




高級なお食事を食べて~



お姉チャンが居るお店に行って~



最大限のお持て成しをもって




今後のお付き合いも何卒と・・・




的な、世界を想像される方が


ほとんどでは無いだろうか?





実際


そのイメージにほとんど間違いは無い。





ただ、世の中の接待の数だけ


それぞれの接待の形がある様に



上記の様な分かり易い接待ばかりでは無い。




最大限のお持て成しをして


相手に歓んで頂く




それこそが接待をする目的なのだから


そこに決められた形など存在はしないのだ。







今となっては、数多くの接待を


経験する様になった私だが



そんな私が、接待と言う世界に



ようやく触れ始める様になった頃





そんな頃のお話・・・。





****************


今から数年前の出来事。


新年度に入り


私の会社は新体制に入った。






やる事も責任も増えた新体制


私にしてみれば


更なるヤル気を産む以外の要素は無かった。







年度が変わり、体制が変わるのは


勿論、私の会社だけではない。





世の中に存在する


大中小、様々な企業でも当然の様にして


それは行われる。







とある月の半ばに


現場のスタッフさんから、私に連絡が入った。




梅田さん(仮名)


どうやら昇進されたみたいですよ』






梅田さんとは、昨年から取引を始めさせて頂いた


業界では最大手企業になる担当の方だ。





梅田さんの会社とは


以前は、一切取り引きが出来ない程


取り付く島もなかった。





だが私が大阪に来た年に


様々な要素が絡まり



光栄にも、仕事を御一緒させて頂く様になったのだ。






担当の梅田さんからは


常に高いレベルの内容を求められらる。




正直、その要求が高過ぎて


何度も挫けそうになる事もあった。




それでも、夜中の2時頃に業務内容を相談してきたり、と


常にハイレベルな仕事を求める梅田さんの姿に感化されて


少しでも、その梅田さんの要求に応えたい!



と、思わせてくれる気持ちが


挫けそうになった気持ちを支えてくれた。





その気持ちが功を奏したかどうかは分からないが



梅田さんは、私の事を弟の様な存在で可愛がってくれた。









****************


梅田さんの昇進話を聞いた翌週



私は、梅田さんのところに足を運んでいた。






アポイントは、取っていない。





いつも忙しくされている梅田さん


幸いにも、その時は体が空いていて


すぐにお会いする事が出来た。





『どうしたの、吉田さん、急に来るなんて』




『突然すみません。


おめでたい噂を聞き付けまして』




『ん?おめでたい話?



何の話??』





『梅田さん・・・


昇進おめでとうございます!





そして、私は梅田さんが好きだと聞いていたお店のお菓子を


手土産としてお渡しした。





『ちょっと、やめようよーこういうの』




いえ、気持ちですので。


是非皆さんで召し上がって下さい』





その言葉が本心なのは


手土産を経費ではなく自腹で購入したところだが



さすがに露骨過ぎてそれは言えない。





『そんな事よりさ、吉田さん


今度飲みに行こうよ?』





『え?良いんですか?



私なんかで良ければ、是非ご一緒させて下さい!』




前から梅田さんにはお誘いを受けていたが


なかなかタイミングが合わなかった。




『そしたら、いつが良い?』




『梅田さんが大丈夫な時でしたらいつでも!』




『じゃあ・・・



明日は?








え?






『明日は俺、空いてるけど、吉田さんはどう?』




『あ、はい、明日ですね



も、もちろん、大丈夫ですよ!』







幾らなんでも


急過ぎじゃね?






と、内心思ってはいたが


それよりも梅田さん


この即断で数々の大きな仕事をこなしてきた結果が


今日に至るのだろう


そんな事を思った。




そして、それまでの会話を


どこか、社交辞令風にこなしていた自分が


とても恥ずかしくなった瞬間でもあった。







****************


『今日、19時30分に○○○という店を


私の名前で予約してます。



お店で待ち合わせしましょう』






梅田さんとの約束の当日。



お昼過ぎに私宛にメールが入った。





梅田さんの希望で


今回は神戸方面で席を設ける、との事だったが


残念ながら、私には神戸方面の土地勘が全く無い。





そこで、梅田さん


行きつけのお店を手配してくれたのだ。








pm19:00



約束された時間より


少し早い時間だったが


私は神戸に居た。





梅田さんから貰った情報を頼りに


お店を探す。







・・・歩き続ける事10分弱



ようやく見つけた。



イチゴな日々




お店の佇まいを見て一目で分かった。




『この店は




高級なお店だと』







『ふぐ』なんて、ちゃんとしたお店で食べた事ないよ?



ってか、『くえ』って何?




魚・・・なの?





極度のグルメ音痴の私でも


このお店が通常のお店と違う、と


気が付かせるのには十分過ぎる佇まいだった。





テーブルマナーに一抹の不安を抱えながら


お店に入る。





『いらっしゃいませ』




立派な旅館を思わせる様なお店の入口で


上品さを絵に描いた様な女将さんが出迎えてくれた。





梅田で予約をとっている者ですが・・・』




『あー梅田さんのお客様ですか!


お待ちしておりました、どうぞ上がって下さい』






未だ、梅田さんは来てない様だ。






案内されるがままに


お部屋に通される。



イチゴな日々




和室なのに


このテーブルと椅子・・・。







仕事上、何度もこの様な席を経験してきてはいるが



今日の席は



特段に格が上


だと言う事を、この部屋を見て再認識した。








時計は19:15分を指していた。





梅田さんが来る迄


まだ時間がある。





主賓が到着をする前に


今日の席をスマートに進める為に


私は店長の元へと向かった。









今回の席。




通常だったら




梅田さんの昇進祝い


会社的なお付き合い




以上の要素から


私が、と言うより私の会社が


お支払をするのが普通だろう。





しかし、梅田さんの事を考えると


(私より年上の梅田さん・会社的なポジション


私の事を弟の様に扱ってくれている)



梅田さんがお支払いをする可能性がゼロでは無い。





そこに甘えても良いのかも知れないのだが


流石に、そういう訳にも行かない。




だから、ここは敢えての



折半


と、言う選択肢を私は選んだ。





この後、もし2件目に移動した場合は


私(会社経費)が全て負担をすれば良いのだ。






そんな流れになった際に


経費で落とす際に必須になってくる領収書のやり取りを


スムーズに行う為に、事前に店長に事情を


伝えておく必要があったのだ。




全部、こちらが負担するのなら


通常の領収書



もし、折半と言う流れになったら


半額分の領収書をスムーズに貰える様に。





そこで私は店長に、こう告げた。




『今日のお支払いですが


もしかしたら折半になるかも知れませんので



その場合は、合計金額の


半額分の領収書を頂けますか?』




私の質問に対して店長が答える。




『それは大丈夫ですけど・・・


今日は梅田さんが出されると思いますよ?』



梅田さんの行きつけのお店の店長だけあって


梅田さんと言う人物を理解したであろう答えが返ってくる。



『そうなった場合は、なるべく折半


お支払いをする方向に持っていきますので・・・



状況が変わったら都度お伝えに来ます』




『かしこまりました。


それで・・・領収書はいつお渡ししましょうか?』




『後でコッソリ受け取りに行きますので』





会社の経費は湯水の様にある訳ではない。




少ない支出で、大きな利益を産む事に


悪い事はない



そんな打算的な考えが厭らしく映るかも知れないが



これも、立派な仕事の内だ。







準備を整えた私は


先程、通された部屋に戻った。



イチゴな日々


相変わらず


見事なお部屋だ。






改めてそう思った私は


時計を見て未だ時間に余裕がある事を確認した。




(梅田さんが来るまで、未だ時間ありそうだな・・・



せっかくだからお部屋の写真撮っておこうかな・・・)




そう思い私は、写真を撮り始めた。





(上手く撮れないなぁ・・・



もうちょっと遠巻きで撮るか・・・)




そう思い、私は一旦部屋を出て


廊下からパシャパシャと写真を撮った。







そんなに珍しいですか?(笑)




偶然通りかかった女将さん


突然、私に喋りかけてくれた。





・・え!?


あ、あの余りにも素敵なお部屋だったので、つ、つい』




突然の事で私は慌てふためいていたが


そんな私に女将さんは優しく




『隅々まで撮って頂いて構わないですからね!』


と、笑顔で答えてくれた。






そんなやり取りの後に



梅田さんがお店に到着した。




『ごめんごめん、待った?』



『いえ!さっき着いたばっかりです』






こうして


この日の会はスタートした。








運び込まれる料理は


どれもが『美味しい』と言う言葉だけで片付けるには


申し訳のない程、素晴らしい物ばかりだった。








素敵な空間


上等な料理にお酒




箸は止まる事を知らずに


次々とグラスは空いていった。




こんな状態で

会話が弾まない訳がない。





程なくして


先程の女将さんが挨拶に来た。




『梅田さん、今日は随分とお若い方を連れて来て~』





(言われる程、若くないんだけどな)





そう思う私を尻目に梅田さん


女将さんに私の事を紹介してくれた。




『今、一緒に仕事している吉田さん。


どう、女将さん、良い男でしょ?』





その言葉を本気で捉える程に、未だ酔ってはいなかったが


饒舌ぶりを見る限り、梅田さんの機嫌は上々の様だ。






女将さんが、退室した後に


梅田さんに、質問をしてみた。




『このお店、行きつけって言ってましたが


どのぐらいの頻度で来られるんですか?』




梅田さんからの、行きつけと言う情報



私も感じた店長女将さんの梅田さんへの態度を見てたら


このお店の常連の中でも特別な待遇を受けているのは


一目瞭然だった。






会話の流れでぶつけた質問に対して


梅田さんが答えてくれた。






『ここね、俺の付き合いの長い




同級生がやってる店


でさ』











え?








店長にはもう会った?


あれが中学からの同級生なんだよね』











店長に会ったも何も・・・






折半にするから半額分の領収書


後でコッソリ渡して下さい』って






すげー恥ずかしい


交渉してましたけど?







え?



あれ!?




あの店長さん・・・



梅田さん


同級生だったの!?








しかも中学の頃からの同級生って


すごい仲良しって事だよね?







それって・・・


さっきまで私がコソコソしてた内容・・・





きっと、筒抜けるよね?






ダメだって!


そんなん恥ずかし過ぎるって!!





そんな事があったとは露知らずに



梅田さんは続ける。





『このお店は、ずっと家族でやってるお店でね~


あ、さっきの女将さん



同級生お母さん


なんだけどね』







その女将さんって・・・




あまりにも素敵だった、この部屋を


物珍しく携帯で写メってる私の事を







物珍しく


見てた方ですよね?









あかん!



あかんって!






梅田さんの連れとして


恥ずかしい思いをされない様に


充分に準備してきた筈なのに・・・







ビックリするほど



恥ずかしい連れに


なってるよね?







その後の料理の味は


記憶の片隅に残る事は無かった・・・。




その後


終電ギリギリまで


神戸で過ごした梅田さんとの時間。





梅田さんとの更なるお付き合いの


始まりとなるに相応しい



そんな貴重な時間を過ごす事が出来た。







・・・え?


お会計?






予想通り、ご馳走されそうになったから


むりやり折半にして貰って


領収書も頂きましたよ?







半額分の


領収書をね








しかもコッソリとね。


イチゴな日々

たかが接待


されど接待



最高のお持て成しの道程は


果てしなく険しいことイチゴ





(※過去記事再掲載)




『ねえねえ

 

今、知り合いがモデルを探してるんだけど・・・

 

 

 

 

直さん、良かったらやってみない??』

 

 

 

 

 

 

久しぶりの友人からの

 

 

 

 

 

 

 

不意な連絡だった。

 

 

 

 

 

 

『・・・え?

 

 

 

 

 

 

 

モデル・・・?

 

 

何の??』

 

 

 

 

久しぶりの挨拶も早々に

 

 

 

 

 

突然の内容を理解するのに

 

 

私は一瞬戸惑った。

 

 

 

 

 

 

『まだ、ブランドは明かせないんだけど・・・

 

 

 

 

 

 

 

某アパレルブランドの新商品のCMで

 

30代のサラリーマンをモデルに使いたいんだって

 

 

 

 

直さん、ぴったりかなと思って』

 

 

 

 

某アパレルブランドの・・・CMの・・・モデル・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何、その・・・

 

 

 

 

 

 

面白そうなお話は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろん、広く募って

 

その中からのオーディションになるみたいだけど・・・』

 

 

 

そんな説明をする友人のからの誘いに

 

 

 

 

私は二つ返事で快諾をした。

 

 

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

 

 

 

『一週間以内に中山さん(仮称)って方から連絡がなかったら

 

 

選考から漏れたって事になるから』

 

 

 

CMのモデルのオーディションと言う

 

 

 

 

非日常的なイベントの話を持ってきてくれた友人

 

 

 

私の顔写真と連絡先を

 

 

 

今回のCMを制作する製作会社の担当へと連絡してくれた。

 

 

 

 

 

後は、その製作会社の担当である

 

 

 

 

 

中山さんと言う方からの連絡を待つ、と言う事だが・・・

 

 

 

1週間以内に連絡が無かったら

 

 

 

残念ながら選考漏れ、と言う流れになっていた。

 

 

 

 

 

『・・・確かに面白そうな話だけど

 

 

 

 

 

・・・そう簡単にはいかないよな』

 

 

 

 

 

 

 

未だ、私が20代前半の頃

 

 

 

 

 

 

 

 

都内で声を掛けられたのを切っ掛けに

 

 

 

私は某サーフ系雑誌の

 

 

 

読者モデルをする事になった。

 

 

 

 

 

初めての事だらけの連続で

 

 

 

 

 

毎回、戸惑いながらの撮影ではあったが・・・

 

 

 

その雑誌に出る様になった影響力は

 

 

 

私の生活をガラリと変える事となった。

 

 

 

 

 

『この前、雑誌見たよ!』

 

 

 

 

 

 

『すごい!直君、モデルさんみたいだね!』

 

 

 

 

そんな言葉を掛けられる事は

 

 

 

 

 

少なくなかった。

 

 

 

 

 

しかし、どんなにもてはやされようと

 

 

 

 

 

 

所詮は読者モデル。

 

 

 

 

 

紙面に掲載される事はあっても

 

 

 

 

掃いて捨てるほど替えが居るポジションで得た私の栄光は

 

 

 

あっという間に忘れ去られる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

ふと、そんな昔の事を思い出しながら

 

 

 

 

 

 

 

私は友人からのメールに返信をした。

 

 

 

 

 

『大丈夫

 

 

 

 

期待しないで待ってるから』

 

 

 

 

華やかな世界の反面

 

 

 

 

 

幾らでも替えが効く世界

 

 

 

少ない経験ながら

 

 

 

私が感じた正直な意見だった。

 

 

 

 

 

 

友人への返信の後

 

 

 

 

 

 

 

中山さんからの連絡が入ったのは

 

 

 

 

その2時間後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『吉田さん、初めまして

 

 

 

○○(製作会社名)の中山と申します

 

 

 

 

見慣れない番号からの着信

 

 

 

 

 

 

出てみると、少し前に噂をしていた

 

 

 

中山さんと言う方からの連絡だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『この度、一次選考が通りましたので

 

つきましては二次選考に入らせて頂きたいのですが

 

その前に、今回の詳細を説明させて頂きます・・・』

 

 

 

 

中山さんからの問に対して

 

 

 

 

 

頷くだけの対応しか出来なかった私だったが

 

 

今回の詳細を把握する事は出来た。

 

 

 

 

 

・選考は三次選考まであると言う事

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・何人かいる中の一人ではなく

 

一人にスポットが当たると言うかなり大々的なものと言う事

 

 

 

・今回のCMは、誰もが知ってる大手ブランドだと言う事・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのブランドのCMに

 

 

 

吉田が出るかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

不意に受けた友人からの誘いの話が

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか、こんな大事になるなんて思ってもみなかった私は

 

 

 

中山さんからの説明にびっくりするばかりだった。

 

 

 

 

 

 

『・・もちろん、この後の

 

 

 

 

 

二次選考で落ちる可能性もありますので』

 

 

 

 

そう、こんな大きな話になるかどうかも

 

 

 

 

 

 

全てはオーディションに受かってからの話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

 

 

2月中旬のとある昼下がり

 

 

 

陽気な天候とは裏腹に

 

 

 

高層ビルの陰で冷え切った

 

 

六本木の道を歩く、私が居た。

 

 

 

 

 

指定された時間と場所についた私は

 

 

 

 

 

電話を掛けた。

 

 

 

 

 

『・・・お世話になっております、吉田と申します

 

 

 

 

 

 

あ・・・中山さんですか?

 

 

 

 

今、建物の前に着きました』

 

 

 

 

その電話のすぐ後に

 

 

 

 

 

中山さんらしき人物が建物の外まで

 

 

出迎えてくれた。

 

 

 

 

『あ、中山さん

 

 

 

 

 

初めまして吉田です』

 

 

 

 

『どうも

 

 

中山は下でお待ちしてますので』

 

 

 

 

 

 

 

 

中山さんじゃなかった。

 

 

 

 

 

 

初っ端に軽く恥はかいたものの

 

 

 

 

 

 

 

下に通された私は中山さん

 

 

無事、対面を果たす事になった。

 

 

 

 

 

『どうもすみません

 

 

 

 

 

本日はわざわざお越し頂いちゃいまして』

 

 

 

 

『いえいえ、とんでもないです

 

近くまで、来る用事がありましたので』

 

 

 

 

『それでは二次選考の撮影に入る前に

 

今回のCMのコンセプトを改めて説明をさせて頂きますね』

 

 

 

 

 

 

二次選考の撮影の為に

 

 

 

 

 

 

 

私は中山さんの製作会社に訪れていた。

 

 

 

 

 

『今回、この春に新発売をする○○と言う商品でして

 

 

 

 

 

 

○○な特徴から、モデルとしては

 

日本のサラリーマンをイメージして作りますので・・・』

 

 

 

 

そんな様な説明を受け

 

 

 

 

 

誓約書にサインをした後

 

 

 

二次選考の撮影がスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしい雰囲気を感じたスタジオ

 

 

 

 

 

 

 

 

20代前半の頃

 

 

 

良く味わっていた、あの感覚だった。

 

 

 

 

 

今は普通に仕事をして

 

 

 

 

 

普通に生活をして

 

 

 

こうして他人に評価をされる為に見られる事なんて

 

 

 

もちろん、無縁の生活

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(たまには、こうして評価の眼差しで見られるのも

 

悪くないかもな・・・)

 

 

 

 

 

 

その全てが、どこか懐かしく感じ

 

 

 

 

 

 

 

そして程よく緊張をした撮影は

 

 

 

 

写真と動画、質疑応答と

 

 

 

 

約20分ぐらいで全てを終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『では、遅くても3月の頭頃には

 

結果を連絡出来るかと思いますので

 

 

今日はありがとうございました』

 

 

 

 

笑顔で中山さんと挨拶を交わし

 

 

 

 

 

撮影スタジオを後にした。

 



 

冷え切った六本木の道を

 

駅へと向かい歩きながら

 

 

私は携帯を取り出した。


 

 

 

 

『あ、もしもし

 

今、二次選考の撮影が終わったよ

 

 

 

・・手応え?

 

 

正直言うと、手応えはねぇ・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『吉田さん

 

 

 

 

連絡が遅くなりまして申し訳ないです』

 

 

 


3月上旬

 

打ち合わせで埼玉に居た私は

 


中山さんからの結果連絡を


人気のない駅前で受けた。

 

 


 

 

 

『いえいえ・・・

 

 

 

あ、はい

 

 

 

 

あ、そうなんですね、分かりました・・・

 

 

 

 

いえいえ、とんでもないです

 

 

 

 

また・・・

 

何かの機会があった時は

 

宜しくお願い致します』

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

結果は

 

 

三次選考落選

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残念ながらCM出演は

 

 

 

 

 

 

 

 

夢の泡と消える事になった。

 

 

 

 

ショックは無かった

 

 

 

 

と、言えば嘘にはなるが

 

 

 

私はこの結果を想像をしていた。




 

 

 

何故、そう思ったか?

 

 

 

 

 

それは

 

 

 

 

 

 

 

二次選考の時まで話は遡る事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今回のCMですが、あの大手ブランド(以下、Aさん)さんの

 

 

 

CMになります

 

 

 

これが、今までのシリーズなのですが・・・』

 

 

 

 

そう言うと中山さん

 

 

 

 

 

今までのCMの資料を見せてくれた。

 

 

 

 

そこには様々な方が載っていた。

 

 

 

 

 

 

 

フランスのシェフ

 

 

 

 

 

 

イギリスの経済アナリスト

 

 

 

 

日本の茶道家...etc

 

 

 

 

 

 

それを見ながら

 

 

 

 

 

中山さんは続けた。

 

 

 

 

 

Aさんですが、非常にリアリティを追及したCMを望まれてまして

 

 

 

 

 

今、お見せしてる方達を起用する際には

 

 

モデル役者の方を起用するのではなく

 

 

実際のリアルな方達を起用しています』

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・実際の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・リアルな方??

 

 





 

 

 

『例えば、そこのフランスのシェフの方

 

 

この方は、実際にフランスに行って

 

実際にシェフの方にご出演を頂いています

 

 

 

そして、このイギリスの経済アナリストの方は・・・』

 

 

 

 

その中山さんの説明を聞きながら

 

 

 

 

 

私は、瞬時に違和感を覚えた。

 


 


 

『・・・と、言う訳で今回は

 

 

日本の働き盛りの30代男性サラリーマン

 

コンセプトになっていますので

 

今回は吉田さんを含め様々な方に

 

お声掛けをさせて頂きました』

 

 

 

 

 

 

 

 

私が感じた違和感の正体は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すぐ目の前にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

日本の働き盛りの30代男性サラリーマン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このコンセプトって・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺ダメじゃね?

 

 

 

 

 

 

 

 

ねえねえ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本の30代男性サラリーマンがコンセプトでしょ!?

 

 

 

 

 

 

俺さ、どの年代を切りとって見てもさ・・・

 

 

 

 

 

 

 



イチゴな日々

 

 

 

 

 

日本人に見られた事無いぜ?

 

 

 

 

 

 

 

限りなく、東南アジアだぜ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな俺が・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

日本の30代男性サラリーマンって・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンセプト

 

ずれ過ぎじゃね??

 

 

 

 

 

 

無理だって!

 

 

 

 

 

 

 

さすがに無理があるって!今回のお話!!

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の二次選考の質疑応答の際に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『吉田さん・・・ご出身は??』

 

 

 

 

 

 

と聞かれて

 

 

 

 

 

 

 

『神奈川県です

 

 

 

 

 

 

 

・・・こう見えても

 

 

 

 

と、答えた後の

 

 

 

 

 

あの、疑いの眼差し

 

 

 

 

 

なに、この

 

 

 

 

 

 

物凄く申し訳ない感じは!?

 

 

 

 

居た堪れないから

 

 

 

 

早いとこ帰してちょうだい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ 撮影後 ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ、もしもし

 

 

 

 

 

 

 

 

今、二次選考の撮影が終わったよ

 

 

 

 

 

・・手応え?

 

 

 

正直言うと、手応えはねぇ・・・って言うより

 

 

 

 

コンセプトが合ってないから

 

 

 

 

 

無理だと思う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************

 

残念ながら

 

 

 

いきなり全国区で

 

 

 

皆さんの前に飛び出してやろうとした私のもくろみは

 

 

露と消えました。

 

 

 

 

 

出来たら色々と楽しかったのにな・・・

 

 

 

 

 

 

 

そう、考えると残念ですが

 

 

 

 

仕方がありません

 

 

 

 

今回の求める人材は

 

 

 

 

私では不適任ですからね!

 

 

 

 

 

 

 

私が羽ばたける様なところ

 

 

 

 

 

 

 


イチゴな日々

 

どっかに無いかな~イチゴ

 

 

 

 

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