「もどかしい自分」自分が無限の青空に吸い取られて からっぽになっていく 何かに誰かにしがみつきたいのだけれど 分からない どこに手をかければいいのか 子どものころとは違うさびしさ 置いてけぼりの頼りなさ でもかすかな楽しさもひそんでいる これは新しい自分かもしれない 夏みかんが酸っぱい 汗が風に乾いていく 少女たちの髪の匂いと 明るい笑い声 生きているってこういうことなんだ さびしい自分 不安な自分 でも何かを持っている自分 もどかしい自分 そういう自分を見つめている自分 「もどかしい自分」谷川俊太郎