読了『冒険ダン吉になった男 森小弁』 | 僕のフィリピン  ~その後のフィリピン・ラウンドトリップノート~

読了『冒険ダン吉になった男 森小弁』

“南洋”関連の本のご紹介です。

森小弁という人物をご存じでしょうか?
僕もこの本を読むまで全く知りませんでした。

維新直後の明治初頭に土佐で生まれた森小弁は、少年期より板垣退助を中心とした自由民権運動に身を投じますが、逮捕をきっかけにその運動に疑問を持ち決別するに至ります。

その後“南洋雄飛”の夢を実現するべく南の島へ向け日本を発つのです。
まだ太平洋の島々が欧米列強による植民地支配を受けている時期でした。

小弁は、当時住人が獰猛で勇敢と評されていたトラック島(現・ミクロネシア連邦チューク)に単身で上陸し、時間をかけながら生活の根を下ろしていきます。

そして島民から尊敬と信頼を集めた彼は日本人でありながらついに島の大酋長になるのでした・・・

これ、実話なんです。

凄いですね、こんな人が居たんですね。


エピローグに僕の心を刺激した一文があります。

「平成20年、11月8日、高知龍馬空港に恰幅のいい一人の男が降り立った。ミクロネシア連邦第七代大統領のエマニュエル・モリ。森小弁の長男である太郎の孫、小弁の曾孫に当たる。」

僕が大きく惹かれたのは、伝記の主役の血が、南洋に浮かぶ小さな島嶼国家で、脈々と引き継がれていたという事実です。

国家として国益を最優先させる事は大前提ですが、それとは別に、僕たちにはあまり知らされていない太平洋に点在する親日国家とより深い交流を持つべきだ、と思います。

そしてぜひこういうエピソードも教育の現場で取り上げて欲しいものです。

動画は、来日したエマニュエル・モリ氏と麻生太郎氏の会談の模様。





トラック島(チューク)には全体の3割にあたる約16,000人の日系人がいるそうですが、いわゆる日系人社会というものは無いそうです。

著者は、森小弁をはじめとする日本人の開拓者の血が、混血でも純血でも構わない大らかな母系社会に組み込まれ土着した、と結びます。

島民が明日の食事を気にすることなく、また葬式の心配をせずに暮らせるよう、と南の島で王道の政治を実践した森小弁に拍手!


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*「冒険ダン吉」は森小弁をモデルにしたとされる昭和初期の少年倶楽部に連載されたお話だそうです。