検察官教員への公開質問状 | 石の上にも3年の未修者

検察官教員への公開質問状

以下が、TKC(ロースクール内の学生向けウェブ)の「授業内ディス カッション」のページにアップロードした文章です。

教授の名前と私の個人情報などはここでは伏字にしておきます。



【以下添付】

714日の授業での●●先生の発言 について

 

本日、714日に行われた授業(検察官倫 理)において、●●先生が発言された内容で気になった点がありますので、問題提起させていただきます。一つは●●先生への質問です。二つ目はこれと関連し て、受講者である学生の皆さんへの問題提起です。長くなるので、章立てて論じます。

 

【●●先生への質問】

1.事実

先生は、ご自身の経歴を紹介される中で、今までの職務経験として、薬物 事犯に関連した外国人犯罪の検察官取調べにおけるエピソードを紹介されました。その中で、中国人とイラン人の被疑者の多さに触れ、取調べの過程での彼らの 対応を真似て紹介されました。

その内容は、「中国人は否認するとき立ち上がって「メイヨー、メイヨー」言うから、頭の中は 寝ても「メイヨー」、起きても「メイヨー」だった」、「イラン人はイラン人で「アッラーの神がどうだこうだ」言ってくる」、ということでした。先生の話し ぶりが面白可笑しく、コミカルだったので、学生の多くは笑っていました。

2.私の感想

しかし、私にはまったく面白くも、可笑しくもありませんでした。むしろ、取調べに対して否認 をする外国人被疑者を真似て笑いをとることが「法曹倫理」を教える授業での内容だということに、非常に残念な気持ちになりました。

先生ご自身が中国人やイラン人 に対してどのような感情をお持ちかは私の関するところではありません。先生は当該ご発言が中国人やイラン人に対する差別感情に基づいたものではないとおっ しゃるでしょう。あるいは、単に彼らの対応を真似しただけで、それが表現の結果として面白可笑しくみえただけ、とおっしゃるのでしょうか。

3.差別表現の「構造」

しかし、私は、先生ご自身の意図はどうあれ、このご発言は差別発言であ り、中国人やイラン人を面白可笑しく取り上げながら、彼らや彼らの発する言葉への無理解と憎悪を煽り立てるヘイトスピーチに他ならないと思います。

このことは、先生の発言が、学 生の「笑い」を持って受け入れられたのはなぜか、を考えれば自明です。なぜ先生の発言は聴衆からの抗議を受けることなく、笑いを持って受け入れられたの か。それは、『日本で罪を犯した(と思われる)外国人が声を裏返しながら「メイヨー」とか「アッラーの神が」とか意味のわからないことを言っている』こと は、滑稽であったり、奇妙であったり、あるいは不気味であったりするという意識を聴衆が共有しているからです。その論拠として、中国人が発する「メイ ヨー」がイギリス人の発する「NO」だったとして、あるいは、イ ラン人が発する「アッラーの神がどうたらこうたら」が日本人の発する「天地天命に誓って」だったとしたら、笑う人はいるのでしょうか。おそらくいないはず です。「メイヨー」とか「アッラー」が面白いのは、そうした言葉や態度が「他者」の発する、理解できないものであり、奇妙で滑稽なものに映るからです。そ して、それを取り上げて、モノマネして、笑えるエピソードとして紹介して、聴衆が笑う。先生のご発言が学生の笑いをもって受け入れられたのは、こうした意 識構造があってこそではないでしょうか。

4.質問

 説明が長くなりましたが、私が●●先生に質問したいのは以下の点です。

(1) 上記ご発言はどのような認識で なされたものか

(2) 授業を履修している学生の中 に、中国籍やイラン国籍保持者、あるいは中国語話者やイスラム教を信仰するものがいたとしたら、当該発言はどのように受け止められたとお考えか

(3) 私の質問を踏まえた上で、今回 のご発言をご自分でどのように認識されるか

 お答えいただきたく思いま す。

5.最後に

 私は、上記質問に対するお答えとともに、当該ご発言が撤回されることを希望しています。そ うでなければ、期末試験では上述した内容と同じことを答案用紙に再び時間いっぱいまで書くのみです。その結果として「法曹倫理」の単位が認められなくても 構いません。中国人・イラン人を差別する「法曹倫理」の授業を履修したと認定されて法曹となることは私の倫理観に反しますし、そのような単位は一生の汚点 となってしまうような気がするからです。

 

 

【授業を履修されていた皆様への問題提起】

TKCの「ディスカッションペー ジ」という、せっかくの「パブリックフォーラム」なので、●●先生への質問として上述した点につき、皆さんの意見もお聞きしたく思います。先生が当該ご発 言をなさった際、教室内の大部分の方は笑っていましたが、私にはあの発言をきいて笑っていられる人の神経は正直理解できません。まぁ、声を裏返して「メイ ヨー!」とか言っちゃってる先生の姿はなんていうか奇妙っちゃ奇妙だったので、笑っていた方もおそらくそういう「面白さ」に笑っていたのでしょうか。でも その「面白さ」が成立するのは対象となっているイラン人や中国人の「奇妙さ」や「滑稽さ」や「不思議さ」があるからではないでしょうか。こうした「前提」 は外国人を馬鹿にする典型的な差別ジョークが受け入れられる土壌と同一のものではないでしょうか。

私自身は中国語話者でもイスラム教徒でもないので、今回の発言で笑いの 対象とされたことによって傷つくということはありませんが、しかしあの発言と皆さんの大部分が笑っているのをみて、非常に残念な気持ちになりました。

 反論も含めて、何かご意見がある方がいらっしゃれば、この場でもいいと思いますし、書き込 みにくければ私宛にメールしてくださってもありがたいです。

 

(私の名前)

(私の学内メールアドレス)

【以上添付】


こんな感じです。

正直いって、検察官教員の発言よりもそれを 笑ってスルーしちゃう学生の意識の方が深刻な問題だと思った。

これが「法曹倫理」で、「ロースクール 教育」なんだけどね。