新司法試験短答式の勉強法 | 憲法の流儀~実学としての憲法解釈論~

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憲法解釈論を専門とする弁護士のブログです。

0 はじめに

短答式の成績通知がありました。
これを受けて,ウェブ上では様々な勉強方法の公開,教示がなされています。
そこで,私も便乗して,短答式の勉強方法についてご紹介したいと思います。

なお,私の短答式の点数は,292点/350点,48位/8721人中でした。
内訳は,公法系83点/100点,民事系131点/150点,刑事系78点/100点です。
$司法試験対策講座~予備校と法科大学院の狭間で~-短答式成績通知

1 開始時期(試験前年の9月~)

まず,開始時期ですが,ロー3年生の夏休み後半からでした。
この時期は,辰巳の科目別体系別過去問集を2周しました。
2周目は,間違ったところだけしかしませんでした。

なお,「間違った」とは,単に正解を間違えたものの他,わからない肢があった場合,悩んで答えを出した場合,理由がわからなかった場合を含みます。
私は,次のように記号を使い分けて,メリハリをつけていました。

◎ すべての肢について正確に理解した上で正解を導けた。
○ わからない肢があったが正解を導けた。
△ 正解を導けたが,理由づけが異なった,あるいは,勘で正解した。
× 間違えた。
C 間違えたが,問題の読み違いやケアレスミスに起因した。

これらの認定は,厳格に行いましょう。
自分に甘くすると,後々できなくて後悔しますから。

2回目以降は,○,△,×,Cをやります。

まずは,法律の全体像と問われる知識の位置づけを確認することが肝要です。
この時期は,これ以上のことをする必要はないと思います。

2 肢別

10月頃になると,新年度版の肢別本が発売されます。
そこで,これを即座に買って,とりあえず1周します。

チェック欄は,上記の△,×,Cのみです。
なんとなく正解したもの,自信がなかったものは,すべて△です。
必ず自分に厳しくしましょう。

この時期は,とりあえず回すだけでよいと思います。

1周目では,壊滅的にできない分野が明らかになります。
△,×がページを埋め尽くすことはザラです。
そんなことにめげても仕方ありません。

2周目以降は,正解した場合,△,×,Cの上に○をします。
間違えた場合は,横に△,×,Cを書きます。
そして,△,×,Cがなくなるまで回します。

3 基本書チェック

この場合,当該分野の基本書をざっと読みましょう。
択一用基本書は,薄く,定評あるものにしましょう。

一例として,私が使用した択一用基本書を科目別に掲載します。

憲法

芦部憲法

憲法 第五版/芦部 信喜

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憲法判例(反対意見,補足意見,意見のチェック)

憲法判例 第6版/戸松 秀典

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行政法

サクハシ行政法


行政法/櫻井 敬子

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行政法判例ノート


行政判例ノート/橋本 博之

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民法

入門民法(全)/潮見佳男

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会社法

会社法 第2版 (LEGAL QUEST)/伊藤 靖史

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商法

商法総則・商行為法 (有斐閣法律学叢書)/近藤 光男

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手形小切手法(最初のまとめ部分のみ)

商法 [総則・商行為]・手形法小切手法 (伊藤真試験対策講座 8)/伊藤 真

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民事訴訟法

民事訴訟法講義案(再訂補訂版)司法協会

刑法

刑法/山口 厚

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刑事訴訟法

入門刑事手続法 第5版/三井 誠

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4 判例六法発売

11月になると,判例六法が発売されます。
それに合わせて,間違えたところだけ肢別本の2周目をします。

その際,また間違えたところを判例六法にマーキングします。
3周目にも間違えたところは,赤ペンでサイドラインを引きます。

なお,判例百選は,時間との関係もありますので,次の科目は判例六法の抜粋部分で済ませます。
商法,手形小切手法,民事訴訟法,刑法,刑事訴訟法。

ただし,なんだこれは?という判決があったら,時の判例の解説を読むべきでしょう。

今でも忘れないのは,弁護人の選任の効力の終期に関する,最決平4・12・14です。
なぜその結論になるのか,どういった経緯で論点となったのかを調べることで,確かな知識を身に着けることができます。

最新の「時の判例Ⅵ」のみならず,Ⅰ~Ⅴもそろえておくと論文対策に有用です。
私は,Ⅵを重判の代わりに使っていました。
最高裁 時の判例(平成18年~平成20年)6 (ジュリスト増刊)/著者不明

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5 試験直前期(5月以降)

5月は,本試験過去問の科目別を1日1冊終わらせます。
この時点で△と×ところには付箋を貼っておきましょう。
これで最終チェック用の準備は終了です。

6 中日

司法試験は5日間あり,そのうち3日目は休みです。
この日は,午前から夕方までは短答式対策,夜は刑事系の論証チェックをしました。
また,
4日目の刑事系は早く終わるので,帰宅後に短答式対策が可能です。

ここでは,先ほど用意した,付箋でいっぱいの科目別過去問集を解き,条文を判例六法を読みます。
これだけでかなり違うと思います。

7 予備校教材について

私は,予備校の出版している択一六法,情報シートの類は,ほとんど使いませんでした。
使ったといえば,商法と民法ですが,最終的には開きませんでした。
なぜなら,あんなに分厚いものを7冊も読める自信がなかったからです。
はっきり言って情報過多ですし,基本的な知識を身に着けているならば,その部分は不要です。
よくまとまっているとは思いますが,掘り下げるには浅すぎ,対策としては広すぎる感覚があります。
とりあえず,過去問,百選,条文以外の知識は横においておくのが賢明です。

また,予備校の模試の復習もしませんでした。
予備校問題は,バイトが制作しているものであり,また,制作上の制限があるため,本試験のレベルとは明らかに離れています。
重箱の隅をつつくか,下品なひっかけ問題が多いような気がします。
時間があればよいのですが,あいにく彼らに付き合っている暇はありません。

さらに,タクティクスのような本試験形式とタイプは,間違えた知識のチェックが難しいように思います。
上記の△と○と◎を区別することができれば問題ないのでしょうが,人間そうはいきません。
本試験形式のタイプは,知識の穴ができてしまうように感じるため,お勧めできません。

このように,予備校関連教材は,あまり期待しない方がよいと思います。


以上です。

短答式の結果には運の要素もあります。
足切りを回避するためなら,ここまでする必要はありません。
大切なのは,自分が間違えているところを把握し,繰り返すことで知識を確実にすることです。