「もがく」 | ラフラフ日記

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主に音楽について書いてます。

15日、フジテレビ『どーも☆キニナル』に落語家の桂米朝さんが出ていらして、ただ何となく見ていたら、司会の林家正蔵さんが「どうすれば落語はうまくなりますか?」と聞いた。そしたら、桂米朝さんはこう答えた。

「もがく」

桂米朝――。恥ずかしながら私は無知なので調べてみたところ、上方落語の芸歴63年、昨年、落語家として初の文化勲章を受賞し、人間国宝にも認定されている方だった。

そんな方が今ももがいているという。
もがく、それしかないと仰っている。

「落語とは何ですか?」という問いには、「わからない」と答えていた。

芸歴63年の大ベテランからどんな言葉が聞けるのかと思ったら、「もがく」。肩透かしを食らうような、でも安堵するような、そして、身が引き締まる言葉だった。

そっか、もがいていいんだ。
いや、もがかなくちゃダメなんだ。

エレカシもあゆも、「もがいている」じゃないか。
前に、どういう音楽が好きかと聞かれたときに、友達が私の代わりに答えたことがあって、「まず、エレカシ」と言ったあとに、「あと、あゆも」って言ったら、ブッと吹き出されたことがあった。「全然違うから」面白かったらしい。おそらく深い意味はなくて、イメージ的にもビジュアル的にも全然違うからなんだろうけど、私にとっては、誰が何と言おうと、エレカシもあゆも「もがいている」には違いない!

もがいている限り、エレカシはエレカシであり続け、あゆはあゆであり続ける。

前回の記事で、あゆは「これからの浜崎あゆみ」をまだ提示できていないと書いた。だけどね、そんなもん提示できてなくったっていいんだよ。
私は単なるファンだから、ゴチャゴチャ言っちゃうの。「声が追いついてない」とか色々さ。本人からしたら、「知るか!お前に何がわかる!ああ、うるせぇー!」ってな感じだよね。だけど、大げさかも知れないけど、これはこれで私の存在証明であり表現方法なんだよ。だから、あゆはあゆで、こんな私の戯言なんて気にしないでバンバンやっちゃっていいからねー! ま、私に言われなくてもそうするだろうけどさ。

エレカシがエレカシであり続けていれば、あゆがあゆであり続けていれば、それで良い。

でも一体それってどういうことか。「あり続ける」ってどういうことなのか。

昨年、マイケル・ジャクソンさん、忌野清志郎さん、加藤和彦さん、三遊亭圓楽さん、アベフトシさん(ミッシェル・ガン・エレファント)、志村正彦さん(フジファブリック)など、たくさんの方が亡くなられた。

それで身に沁みた。どんなにダメな作品を作ろうとも、どんなにダメダメなライヴをしようとも、それどころか活動していなくても、生きてくれている、ただそれだけでどんなに嬉しいことか。

くるりの岸田くんは、矢野顕子さんのこんな話を聞いて、衝撃を受けながらも凄く嬉しい気持ちになったそうだ。

「わたしはニール・ヤングの大ファンで、昔っからずっと好きなのよ。もちろん、自分の青春時代に聴いたアルバムが一番好きなんだけど、私は本当に彼のファンだから、もし自分の好みじゃないアルバムを作ったとしても、彼の新作が出たっていうだけでもう嬉しくて仕方がないの。それを伝えるのがファンの役目だと思うわ。彼が生きてるだけでいい、みたいな。」

エレカシなら何でも良いみたいな、恋は盲目的なものに対して、私にはずっと抵抗があった。どんなに好きでも、そうならないように意識しているつもりでいた。今もそうかも知れない。
エレカシの作る音楽が良いから好きなのであって、エレカシなら何でも良いわけじゃないと。だけど、「音楽が良いから好き」とかいう気持ちよりももっと上の位置にあるのが、「いてくれるだけで良い」とかそういうものなんじゃないかと思えてきた。実は、つい最近の「エレカシ新春ライヴ」でそんなことを感じたんだ。

この前のあゆのカウントダウンライヴの映像を見ていて、単純に、前から後ろまであるそれはそれは長ーーーい花道を走り、右に左に、踊り、振り絞り、歌う姿に感動してしまった。この人、倒れちゃうんじゃないかってくらいに動いていた。

以前、椎名林檎のライヴで、彼女がずっと肩にバッグをかけたまま歌っている姿に違和感を覚えたことがあった。内本順一さん(ライター)が彼女のライヴについて、「いろんな仕掛けを見せてはいるものの(ステージが回転したりもするものの)、椎名林檎自身が動くことはほとんどない。つまり音楽が躍動しようとしても、それに対して彼女は自然な肉体表現をせず……というかあえて拒否しているようにも見えて、それがなんか観ていて生理的に気持ちよくない」と書いていて、私の違和感を言い当ててくれたと思った。小物であり演出でありファッションなんだろうけど、そのバッグが妙に気になってしまい、どうしてバッグなんか持っているんだろう、「歌いづらそうだな」って思ったのだった。

比べる必要はないけれども、あゆなら、バッグをかけてたって、途中で放り投げちゃいそうだもんね(笑)。

芸歴63年に比べれば、あゆなんてまだまだまだまだだけど、そんな彼女の「全身で表現する姿」に素直に感動した。ものすごく基本的なことかも知れないけど。

あゆも一応11年くらいやってるのに、そこらの新人より動いてる。
音楽番組で、あゆが一番ノリノリ(本気)じゃん!みたいなね(笑)。

生きているだけで良い。

それは、怠惰か盲目か。

エレカシ新春ライヴで感じたもの。「音楽が良いから好き」を超えた感情。それは、今までの私には見えなかった景色だったような気がした。単に私が歳を取っただけか。

エレカシがエレカシで居続けてくれれば、あゆがあゆで居続けてくれれば、なんて、他力本願だよね。

エレカシは、あゆは、懸命に「もがき」なら、自分自身であり続けようとしている。

本当は、「生きているだけで良い」のにね。

私も「わからない」よ。
この文章に答えはないよ。

カウントダウンライヴのMCであゆはこう言ったんだ。

「2010年も、変わらずに私であり続けたいと思っていますので、みんなもみんなでいて下さい。
そして、一緒に歩いていきましょう。」


BGM: やさしさ / チャットモンチー