スマパンとバックストリート・ボーイズ | ラフラフ日記

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主に音楽について書いてます。

最近じゃ、音楽はどんどんボーダーレスになってきているという。

ジャンルを超えた音楽が増え、こういう系の音楽が好きな人という分け方もできなくなってきた。前だったら、並列で語られることのなかったアーティストも、そのどちらも同じくらい好きという人が当然のようにあふれ、ジャンルやスタイルに対するこだわりが取っ払われてきた。だから、聴く音楽も本当に人それぞれになってきた。

ってなことをよく聞くんですけど、本当にそうだろうか?
ボーダーレスになってきたという一方で、ジャンルとかやたら増えてないですか?

別に私は、「ジャンルなんて取っ払うべきだ! そんなものに縛られるな! もっと自由に音楽を聴こうじゃないか!」な~んて言うつもりはさらさらない。むしろ、そういう言葉を聞くと辟易しちゃうんだよね。

だってさ、誰だって「自分のものさし」を持ってるわけでしょ。
それは人から見たら、ジャンルに凝り固まってるように見えたり、何かの受け売りに見えたり、メディア等の情報を鵜呑みにしてるだけにしか見えなかったりするかも知れないけど、じゃあ、あなたは何ものからも影響されずに固定観念一切なしでただ純粋に音楽だけを聴いていると言い切れるんですか?って聞き返したくなるもん。そんな人いないよ。
ジャンルがあるのにはちゃんとした理由があると思うし、もし仮にジャンルに縛られてるだけであっても、音楽がそれをぶち破れなかっただけだし、もし本当に心を鷲づかみにされる音楽に出会ったなら、あなたに言われなくったって、とっくにそうしてるよって話だ。

だから、別に私は、「ジャンルの壁はどんどん壊されるべきだ」と思っているわけではないし、それ(壁が壊されること)が良いことなのか悪いことなのかも、よく分からない。
かといって、「ジャンルはしっかり分けるべきだ」と思っているわけでも、もちろんないけど。

ただね、なんとなく、“壁” を感じて悲しいなぁって思うことはあるよ。
それは、自分の中にある壁の場合もあるし、人の中に壁を感じてしまう場合もある。
だからやっぱり、「音楽は壁をぶち破るものであって欲しい」という想いが、自分の根底にはあると思う。
それは、ジャンルに限らず、あらゆる壁ね。

そして、冒頭の話に戻るけど、最近では分け隔てなく音楽を聴く人が増えてきてるというのだけれど、確かに、前だったら相容れなかった音楽を同列に聴く人が増えてきてるとは思う。ロックもポップスもヒップホップもテクノもR&Bもジャズもアイドルも、メジャーもマイナーも、何でも聴くという人。
だけど、確かにそれは感じるんだけど、その人の中で分けちゃってる感じがするんだよね。つまり、ロックはロックの、ポップスはポップスの、ヒップホップはヒップホップの、テクノはテクノの、ジャズはジャズの、アイドルはアイドルの、メジャーはメジャー、マイナーはマイナー、それぞれの楽しみ方で楽しんでるっていうかさ。あくまで別物として捉えた上でっていうか。
別にそれが悪いことだと言いたいわけではないんだよ。それだけ「マナーを心得ている」と言えるのかも知れないしさ。

でも、それじゃあ、本当の意味で「分け隔てなく」ではないんじゃないかなぁ?と思って。
本当の意味で「分け隔てなく」は、「え!? ○○と××って別物なの? なんで? どうして? なんで別物なのか私には全然分からなーい! 私には○○も××も同じなのにぃー!」ってのを言うんじゃないかね?

私の思い違いかも知れない。
みんな本当に分け隔てなく音楽を聴いているのかも知れない。
だけど、色んな音楽を聴く割には、それをすごい分けて捉えてるんだなって感じる人もいるからさ。

何度も言うけど、別にそれが悪いことだと思っているわけではない。私だって、意識のうちにも無意識のうちにも分けてるはずだし、無理やりに分け隔てを取っ払おうとしたって失礼になるだけだったりする。
分け隔てなく音楽を聴くことが必ずしも良いことだとは思わないし、壁があるからこそそれがぶち破られる感動もあるのだろうし、壁の中にも感動はあるのだろう。

浜崎あゆみは、自分のパブリックイメージについて「スマパンとバックストリート・ボーイズがあったら、バックストリート・ボーイズを聴いてる人っていう感じ?」と言っていた。
実際はスマパンばっか聴いてたらしいが、「間違いなく結びつかないと思う、ほとんどの人が。『や、あゆそんなの聴かないでしょ』って」と言っていた。
それに対する「今それを結びつけたくてしょうがないんですよね」というインタビュアーの誘導尋問のような問いかけにも、あゆは決して煽られることなく、「うん。でもなんかね、それはそんなにね、野望じゃないんだよね。達成できなくてもいいの。ただそこに向かおうとしてるプロセスを、自分が楽しみたい」と答えていた。

やっぱり私は、心のどこかで待ち望んでいるんだ。
「壁がぶち破られる瞬間」を。
マナーなんか心得るなよって言いたいんだ。

だけどそれは、野望ではない。
あゆが言ってくれた通りだよ。

ただそこに、自分が気持ち良いと思える場所に、向かおうとしてるプロセスを、自分が楽しみたいんだ。