大森望編 日本SFアンソロジー『NOVA10』


NOVA 10 ---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)/菅 浩江

¥1,296
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書下ろし日本SFアンソロジー『NOVA』もこの10作目で第一期が一区切り。


とはいえすでに第二期が始まってるわけですが、ようやく『10』を読みましたよと。




収録作は、


菅浩江 「妄想少女」

柴崎友香 「メルボルンの想い出」

北野勇作 「味噌樽の中のカブト虫」

片瀬二郎 「ライフ・オブザリビングデッド」

山野浩一 「地獄八景」

山本弘 「大正船時機綺譚(たいしょうたいむましんきたん)」

伴名練 「かみ☆ふぁみ!~彼女の家族が「お前なんぞにうちの子はやらん」と頑なな件~」

森奈津子 「百合君と百合ちゃん」

倉田タカシ 「トーキョーを食べて育った」

木本雅彦 「ぼくとわらう」

円城塔 「(Atlas)³」

瀬名秀明 「ミシェル」




中でも素晴らしいのが「ミシェル」で、圧倒的すぎて他の短編が霞むほどでした。


小松左京の未完の長編『虚無回廊』公式スピンオフであるこの中編は、『虚無回廊』のみならず『ゴルディアスの結び目』や『果しなき流れの果に』などもちょいちょい混ぜ込みつつ、瀬名流の科学と哲学と文学で彩った傑作。


黎明期から今に至るまで、日本SFのすべてを盛り込んだと言っても過言ではない(かもしれない)。


SFとしてはもちろん、とにかく小説が巧い。


小難しい理論もあるし、決して読みやすい類の文章ではないけど、圧倒的な情感と描写力で、物語の凄みを感じさせる迫力に満ちている。


この1編を読むためだけに本作を買っても損はしないでしょうが、「ミシェル」はすでに著者の『新生』という作品集に収録されてるので、これから読むのならそちらを買うことをおススメします。




もちろんそれ以外にも傑作はありまして、「地獄八景」、「かみ☆ふぁみ!」、「ぼくとわらう」、「トーキョーを食べて育った」、「(Atlas)³」あたりも良い。


特に「かみ☆ふぁみ!」はいかにもラノベ風のふざけたタイトルだけど、これがとっても面白い。タイトルに騙されてはいけません。


伴名練はそろそろ作品集を出してもいいんじゃないかな。
いずれ長編も書いてほしい。いま注目の作家さん。






そんな具合で、『NOVA』第一期を締めくくる本作も素晴らしかった。


第二期もおいおい読んでいこう。(実は『9』だけ読んでないのは内緒)