ロバート・チャールズ・ウィルスン 『無限記憶』



無限記憶 (創元SF文庫)/ロバート・チャールズ・ウィルスン
¥1,302
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『時間封鎖』に続く、三部作の第二部。




前作で地球を包んだ「スピン膜」。これは、膜の内と外とで時間の流れを大幅に変える代物だった。

つまり、膜に包まれた地球で1年を過ごす間に、膜の外の宇宙では1億年近い時間が経過してしまうということ。



そんな「スピン膜」で地球を包んだ存在が「仮定体」と呼ばれるもの。



前作で判明したことは、そこまでだった。



今作では、その「仮定体」とはなんなのかについての物語。




生命なのか、機械なのか、ネットーワークの集合体なのか。



人類にとって最も大きな謎である「仮定体」の正体。



ある意味では「神」であり、「支配者」でもあるけど、それにしてはあまりに茫洋としている。



正体はおろか、地球をスピン膜で包んだ挙句、余所の惑星と「ゲート」で繋げてしまった目的もまったくわからない。



ちっぽけな人間が挑むには、大きすぎる謎と言える。




ぶっちゃけてしまうと、この巻でも仮定体の正体ははっきりと判明しないw



でももちろん新たにわかったことも多々ある。

知れば知るほど、人類の手には負えない存在である気がしてならないが。



これはもはやクラークの『幼年期の終り』級のスケールで、仮定体は『幼年期』でいうところの「オーバーマインド」なんじゃないだろうか。

地球を統治した「オーバーロード」のさらに上の存在、「オーバーマインド」。




作者のウィルスンは、こういったSF的ビジョンに、リアルな人間ドラマを当てはめて物語を進めていくのが得意な作家。

それ故に、尚更この壮大なビジョンに於ける人類の役割なんて何もないんじゃないかと心配になってしまうw



まぁそこのところは、つい最近出た(そして買った)三部作の完結編、『連環宇宙』で明かされると思うので、楽しみにしておこう。




興味が湧いた方は、まず『時間封鎖』からどうぞ。