【お盆特別企画】フェルメール盗難事件③『合奏』 | Lapislazuliのブログ

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お盆の3日間に渡って、フェルメール盗難事件の特集を組んできましたが、
予定通りに書くことが出来まして、3回目の最終回の今夜は
いまだ行方不明のこちらの絵のお話ですきらきら

アメリカボストン イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館 『合奏』 72.5×64.7cm

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こちらが事件の舞台となったイザベラ・スチュワート・ガードナー 美術館

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創設者のイザベラ・スチュワート・ガードナーの名前にちなんで、
イザベラという名前の女性は美術館への入場が無料になるそうでクルミ:にゃもん
また、誕生日に美術館を訪れる来館者は入場料が無料になるのだそうですきらハート
創設者が女性であるだけに、またその遺志をしっかりと受け継いでいるという印象と、
美術館側の思いやりを感じる特典ですねキラキラ☆

ラスボロー・ハウスの『手紙を書く女と召使い』がまだ行方不明だった1990年3月17日の夜、
今度はアメリカ・ボストンのこの美術館に警官に扮装した2人組の強盗が侵入。
警備員を縛り上げ、フェルメールの『合奏』、レンブラント3点のほか、マネ、ドガなどの作品など、
計13点が盗まれる事件が発生します。

盗難に遭った主要作品のほかには、レンブラントの弟子の作品やドガの素描数点、
金メッキの鷹の彫刻、古代中国の大杯など、なんとも奇妙な組み合わせ。
しかも、この美術館の中核をなすイタリア・ルネサンス絵画が盗まれなかったことも不思議なのです。

この盗難事件は当時も、そして今日においても史上最大の絵画盗難事件で、
被害額は2億ドルとも3億ドルとも言われていて、フェルメールが1億ドルだとも言われています。

そしてこちらが盗まれた主要作品のひとつの、
レンブラント・ファン・レイン 『ガラリアの海の嵐』 160×127cm

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この絵はこうして写真を見ることしか出来ないけれど素晴らしい作品ですきら
正直私は、フェルメールの『合奏』よりもこちらの作品に魅力を感じるくらいですえへ♪

この事件では、警備員2人が犯人2人を目撃していたこともあり、
事件は早期に解決するものと思われていたのにも関わらず、
容疑者と目されていた人間が次々に死亡するなど、事件は行き詰まってしまうのです。

窃盗罪についてはすでに時効になっていて、FBIは絵の所有者への追訴免責を表明済み。
また作品につながる有力な情報提供者には500万ドルの懸賞金が支払われるというのに、
一切有力情報はなく、盗まれた絵がどこにあるのか全くわからず
帰ってくる可能性は限りなく低い状況で歳月は流れます。

盗難から15年が経った2005年。
1994年に極めて信憑性の高い情報提供者と美術館との間でやり取りがあったことを
ボストン・グローブ紙が紙上で明らかにします。

その年の4月にガードナー美術館は1通の手紙を受け取ります。
手紙の書き主は盗まれた絵画の特徴のほか、盗難に関する国際的な法律の違いにも精通していました。
彼の要求は、絵の返還仲介の見返りとして現金260万ドルと窃盗犯と絵の持ち主の追訴免責。
取引に興味があるなら、ボストングローブ紙に「あるマーク」を掲載するようにとの脅迫状でした。

翌週、ガードナー美術館は再び手紙を受け取ります。
「取引に興味を持っているのはわかったが、警察やFBIが動いていることを憂慮している。
下っ端の仲介者の逮捕を狙うのなら、絵は帰ることはないだろう」との内容。
更に、「もしもこの交渉が終わったとしても絵の在り処のヒントの情報は提供する」とも書かれていましたが、
その手紙を最後に、彼からの連絡が二度と来ることがなかった。との記事でした。

ガードナー美術館は、この手紙の書き主に再び連絡をくれるようにと嘆願しましたが、
連絡はおろか、なにひとつ進展のないまま現在に至っています。

こちらはガードナー美術館の2階の一室。
創設者イザベラの遺言には「作品の展示場所を一切変えてはならない」との一文がありました。
写真の右手の額には『合奏』があり、奥の壁の額には 『ガラリアの海の嵐』が展示されていました。

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絵のない額の暗闇は、どこかで『合奏』が見ている景色なのかもしれないと思うのと同時に、
どこかの倉庫の暗闇の中でもいいから、どうか無事であって欲しいと願わずにはいられない。。。

世界中に散らばったフェルメールの作品を美術館を訪ねて観ることを
ファンの間では「巡礼」という言葉を遣います。
一生を生まれた町・デルフトで過ごしたフェルメールが知ったらきっと驚くだろうし、
自分の描いた絵が、政治的目的を達成するために人質になることなど全く思いもしなかったでしょう。

美術品を守るために、命が失われたり、テロ行為は決して許すことは出来ない。
美術品が盗まれるようなことのない世の中であって欲しい。
先人が大切に守って来てくれたお蔭で、私たちは350年前に確かにデルフトの町に暮らしていた
フェルメールの珠玉の作品を今でも見ることが出来ることを思うからこそ、
人類の貴重な財産の文化と歴史は今後も大切に守ってゆかねばならないと思うのです。

それらははるか昔に思いを馳せさせてくれて、心を満たし癒してくれる。
展覧会を訪ねることで、絵画の保存や修復、美術館の改築、セキュリティーの強化のために
少しでも役立てていることも、大好きな絵画に出逢えたという嬉しさとともに私の喜びでもあるのです。


最後に、2通目の手紙には盗まれた絵は
「絵が盗品だと知らない買い手が法的な所有権を主張できる国に保管されている」
との一文がありました。

現在は、2002年の文化財の不法輸出出入等禁止条約【ユネスコ条約】批准に伴って、
盗まれた国の返還請求期間は10年と定められていますが、
当時の日本代表日本では、盗難から2年経過すれば、盗品だと知らずに作品を買った善意の所有者は
盗品の正式な所有者になることが出来るという民法がありました。

そのため、『合奏』は日本にあるのではないかという憶測が
ボストンでは未だに後を絶たないことをお話して、
3夜連続のフェルメール盗難事件のお話はこれにておしまいですEND

ご清聴、ありがとうございましたきらハートaya