先日、友人の結婚式で千葉に帰ったときの話。
式の会場は、地元の柏。
昼過ぎに披露宴が終わり、俺は地元の友人たちと、駅前で軽くお茶をした。
その後、その中の友人TとMは、別の店で飲むといって駅の方へ。
俺と、友人Nとその彼女Sの三人は、家に帰ることにした。
柏という街は、千葉県北西部の中心都市。
県外の人には、「Jリーグ柏レイソルの街」といえば、聞き覚えがある人も多いかもしれない。
それなりに栄えている街ではある。
そういうところだから、駅前のロータリーは、バスもタクシーも多い。
どんなときでも客待ちのタクシーは長蛇の列。
荷物の多かった俺たちも、タクシーで帰ることにして、列に並んだ。
やがてやってきたタクシーに乗り込む。
俺は助手席へ、NとSは後部席へ。
道順的には、俺の家が先だ。
「緑台近くの大井にまず行って、それから五条谷まで行って下さい」
「大井は、じゃあ牛乳屋さんの方ですね?」
「はい、そうです」
と、そんなやりとり。
ちなみにこの牛乳屋の息子は俺の友達で中学の同級生なのだが、長年連絡を取っていない・・・まあそれはいいとして。
俺の実家は、今は市町村合併のため「柏市」だが、かつては「沼南町」で、柏駅からはちょっと距離がある。
だから、「緑台・大井」という地名で牛乳屋が出てくるということは、この運転手は沼南方面に詳しい人なのかもしれない・・・と、そのときはぼんやり思った。
さてタクシーが走り出し。
後部座席のNが、
「Tたちはどこまで飲みに行ったんだろね?」
と、俺に会話を振ってきた。
さてね、と、俺が答える前に。
「ああ、アイツなら金町に行くって言ってたよ」
という回答が、俺の横から。
ん?
横?
・・・運転手、さん・・・?
一瞬思考が固まった俺が、運転手さんを見てみると。
知っている。
「・・・Tの・・・お父さん!」
俺もNも、言葉が出ない。
Tのお父さんは楽しそうに笑っている。
「はっはぁ、やっぱり桜井君とN君か。大井と五条谷っていうからそうかなと思ったんだよ。久しぶりだね?」
「ええ、ああ、はい・・・いやぁびっくりしました・・・」
そう。
Tのお父さんは、冗談好きで陽気なタクシードライバー。
何度か、顔を合わせたこともある、のだが。
めったに地元に帰らず、めったにタクシーに乗らず、このタクシーの数とこの客の数がある中で、よくもまあ大当たりを引いたもんだ。
事実は小説より奇なり、とか何とか。
偶然って恐ろしい。